金ロー「春の2週連続!スタジオジブリ」一週目は『ハウルの動く城』
今週・来週と、日本テレビ『金曜ロードSHOW!』が「春の2週連続!スタジオジブリ」をお届けする。今夜放送するのは宮崎駿監督による『ハウルの動く城』。過去に『ハウルの動く城』について執筆した、ライターたまごまご氏のレビューを改めてお届けする(2015年10月掲載時のまま再掲)。【関連記事】『崖の上のポニョ』宮崎駿は何をやりたかったのか

『ハウルの動く城』ハウルが木村拓哉の声でなければならない理由
『ハウルの動く城』は、「わかりづらい」と言われることの多い作品。これについて、「荒地の魔女」役の美輪明宏は、ロマンアルバムのインタビューで述べています。「ひとつひとつ『あれはおかしい』とかいう人もいらっしゃると思いますが、ジャン・コクトーが『この作品はただ感じてもらえればいい』と申しましたように、見る人のボキャブラリーや許容力に預けてある作品なんです」
以後、『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』と、観た人の感覚に委ねられる作品を、宮崎駿は作ります。
この映画で、特に見る人の解釈に委ねられているのは、ソフィーが年をとったり若返ったりするシーン。本来は荒地の魔女に呪いをかけられているので、若い姿に戻るわけがない。じゃあなんで随所で戻るの?

ヒントになるのは、ソフィーのセリフ。
「あたしなんか、美しかったことなんか一度もないわ!」
「わたしきれいでもないし、掃除くらいしかできないから」
若返った状態から、スゥッと老婆の姿に戻ります。
年齢がころころ変わるソフィー。若い姿、老婆の姿。どちらも演じるのは、当時63歳の倍賞千恵子。
ソフィーはとにかく容姿に自信がない。けれども映画の中の老婆姿のソフィーに対し、ハウルもマルクルも、魅力を感じています。

ハウルを演じるのは木村拓哉。木村拓哉が演じたキャラクターはみんな「キムタク」になる、と言われることがあります。2014年の27時間テレビ内、SMAP解散ネタのドラマで、彼は常に「キムタク」であり続けました。
賛否両論「27時間テレビ」SMAPドラマを振り返る。中居と木村のここが怖かった - エキレビ!
また『HERO』制作発表では濱田岳が「とにかくめちゃめちゃカッコいいんですよ。常にずっとカッコいい」と述べました。


めちゃくちゃカッコいい。ここはわかる。
「常にずっと」というのはちょっと怖い。
ハウルは宮崎駿アニメでも屈指のイケメンキャラです。
「木村拓哉」を内包したハウルは、作中で様々に形を変えます。最初は金髪に。途中で闇の精霊とともにドロドロになり、黒髪に。戦いに行って鳥のバケモノに。どれを見ても、画面ではっきりと目立っており、カッコいい。絵の凛々しさにあわせ、木村拓哉の声が持つ「常にずっとカッコいい」力が、ハウルの心臓になりました。
その他のキャラも、声とキャラクターのシンクロは重視されています。美輪明宏の声ひとつで「荒地の魔女」は完成しています。

声を演じた俳優陣の生き方が、そのまま反映されているアニメ。2004年公開から11年。ぼくも年をとったことで、やっと感覚的にこの映画が理解できてきました。
(たまごまご)
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