
※本文にはネタバレがあります
東大専科が5人に『ドラゴン桜』第5話
日曜劇場『ドラゴン桜』(TBS / 日曜よる9時〜)第5話はこれまでちょっとずつ出て来て気になっていた虫を追いかける少年・健太(細田佳央太)が大活躍。発達障害のある者は突出した才能を見せることがある。健太はそれを見せつけた。【前話レビュー】『ドラゴン桜』高橋海人はやっぱり善人がいい 桜木に助けられ、大きな瞳から涙する姿にもらい泣き

東大専科<岩崎楓(平手友梨奈)、瀬戸輝(高橋海人)、早瀬菜緒(南沙良)、天野晃一郎(加藤清史郎)>との勉強対決に負けた藤井(鈴鹿央士)は苛立ち、再度、専科に勝負を挑む。
今度は大学共通入試テスト。国語、英語、数学の3教科で最高点をとったほうが勝ちというルールで、東大専科の誰かが突出して藤井の点数を超えればいい。負けたら専科は即廃止になるが、勝負は2週間後と早いし、実力に差がありすぎなのでハンデを求める水野(長澤まさみ)に、桜木(阿部寛)はハンデ不要と自信満々。


彼の言う「秘密兵器」とは健太だった。だが健太は学年ダントツでビリ。おまけに言動も独特で、扱いが難しい。藤井はあからさまに健太をバカにして、虫けら呼ばわりし、健太が大事にしている虫まで乱暴に扱う。
思わず、藤井に襲いかかる健太。暴力はどんな事情があるにせよふるったほうが悪くなる。だから嫌なやつをねじ伏せる方法は勉強で勝つことだと桜木は健太を諭すのだった。

「マジカルバナナ」勉強法
こうして2週間後の勝負に向けて勉強がはじまる。このドラマの毎回の楽しみは目からウロコの桜木メソッド。だが、その勉強になぜか健太は参加しないで、相変わらずドラゴン桜の根本でうろうろしている。心配する専科の面々に桜木は知らん顔。楓は健太もチームの仲間だから……と呼びに向かう。
楓はバドミントン部にいたから考え方が体育会系なのだろう。彼女の体育会系能は第4話でも見受けられた。「バカ」のはちまきも真っ先に迷いなく締める潔さを見せたことである。目的達成のためにまっすぐ熱く取り組む楓というキャラクター性がよく出ている。
彼女に比べると、ほかの3人はまだ明確なキャラが描けていないように感じるが、今後に期待したい。



個性様々、相手の特性を知ることの大切さ
楓たちの心配は杞憂で、健太は独自の勉強をしていて、急速に学力が上がっていた。試しに試験をしてみると全部正解で、担任の田村(山田キヌヲ)は驚きのあまりその場に崩れ落ちる。
健太は、大好きな虫のことを知りたいがために、英語の論文を辞書で調べながら読破して、著者に英語で手紙を書くくらいに英語力が伸びていた。辞書一冊分が頭に入っているほどの知識量。そんな人物がなぜ今まで学年ビリだったのか。桜木は、健太が聴覚を使うことは苦手だが、視覚が発達していることを見抜いていた。聴覚を重視した授業だと学べなかったのだ。
健太の場合はかなり特殊なケースであるが、聴覚タイプと視覚タイプと個性が様々であることはなんとなくわかる。話し言葉を把握するよりも、文字で読んだほうが入ってくる人もいるし、読解は苦手だが耳はいい人もいる。
誰かと連絡をとろうとし、電話とメールのどちらがいいかと思った時、話を聞くのが苦手な人には電話をかけるよりメールのほうがいいし、メールの読解力のよくない人には懇懇と話をしたほうが伝わるだろう。相手の特性を知ることがコミュニケーションには大切だと感じた。受験と関係ない日常生活にも『ドラゴン桜』は役に立つ。

桜木、仲間推し
だがここでは終わらない。健太の虫好きを利用した藤井が、東大では虫を解剖して殺すと教えたため、健太が東大を受けないと言い出す。桜木は「虫と共生する社会を作れ」「研究者になれ」と極端な言葉で健太を強引に説得する。このへん、ちょっと無理があるような気もしないではないが、阿部寛の問答無用の説得力でねじ伏せていく。ものすごくシンプルな内容のドラマを速度とパワーでゴリ押ししていくこのムードはどこか体育会系の匂いがする。野球やサッカー、相撲などの競技はもちろん作戦という理論で動いているところもあるわけだけれど、主としたら速度や力の勢いが視聴者を興奮させるわけで、そういう原始的なところに特化した、早くかきこめてガッツリお腹にたまる満足感のある餃子とラーメンとビールのようなドラマ、それが『ドラゴン桜』である。とくに2021年度版は。



紆余曲折というほどのこともなく単純な流れで健太は勝負に参加し、彼を心配して寄り添ってきた小杉(志田彩良)も参加。国語と英語は小杉がトップで、数学は健太――それも198点という快挙で、専科大勝利。藤井はまた悔しさに震えるのであった。
こうして東大専科が5人となった。東大受験はチームで乗り切ることが効率的と、仲間推し。
東大専科を目の敵にしている理事(江口のりこ)も健太を入学させてのびのびやらせていたことから、意外といいところもあるように描かれたところには若干、拍子抜けした。


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番組情報
TBS日曜劇場『ドラゴン桜』
毎週日曜よる9時〜
出演:出演:阿部寛 長澤まさみ 高橋海人(King & Prince) 南 沙良 平手友梨奈 加藤清史郎 鈴鹿央士 志田彩良 細田佳央太 西山 潤 西垣 匠 吉田美月喜 齋藤瑠希 内村 遥 山田キヌヲ ケン(水玉れっぷう隊) 鶴ヶ崎好昭 駿河太郎 馬渕英里何 大幡しえり 深田竜生(少年忍者/ジャニーズJr.) 林 遣都 佐野勇斗 早霧せいな 山崎銀之丞 木場勝己 江口のりこ 及川光博
原作:三田紀房『ドラゴン桜2』(コルク)
脚本:オークラ 李 正美 小山正太
音楽:木村秀彬
プロデューサー:飯田和孝 黎 景怡
演出:福澤克雄 石井康晴 青山貴洋
制作著作:TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/dragonzakura/
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木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami
ゆいざえもん
フリーで活動するグラフィックデザイナー・イラストレーター。得意としているファンアートは、透明水彩画や似顔絵で役者さん・舞台の魅力にアイデアを加えながら描いています。他にブランディングデザインやパッケージ・ウェブデザインなどを行う。宝塚歌劇が大好き。愛知県在住。
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