『おかえりモネ』第5週「勉強はじめました」

第21回〈6月14日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

朝ドラ『おかえりモネ』第21回 永瀬廉によって「及川亮」が輝く理由
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

ナレーション:「いい顔して戻ってこれてよかった」(雅代 / 竹下景子)

【関連レビュー】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第21回掲載中)

久しぶりに実家で過ごし、いろいろな気づきを得て登米に帰る百音(清原果耶)。気仙沼の本土で亮(永瀬廉)に会う。何か悩んでいそうな彼に話を聞こうとするがm「そういうのは俺やっぱいいわ」と交わされてしまった。


帰りのバスには菅波(坂口健太郎)が乗っていて、気象予報士になるならもっと別の本をまず読んだほうがいいとアドバイスされる。

亮に見送られてバスに乗ると菅波。窓の外を気にする菅波に「幼馴染です」と言って「何も聞いていませんが」と返される。亮と百音、菅波と百音。あるあるとはいえドキドキ。第5週のサブタイトルは「勉強はじめました」で、百音がようやく進路を見つけて頑張っていく流れだが、それと同時に恋もはじまった予感がする。

『あさイチ』では鈴木アナが、亮、菅波、中村先生(平山祐介)……とイケメンリレーで目が潤ったと語り、SNSで話題になった。

及川亮が永瀬廉によって輝く理由

眩しいほど明るく見えて、どこか影のある及川亮。本人にはポテンシャルしかないが、父・新次(浅野忠信)が飲んだくれていることが亮に暗い影を落としている。

アイドルとしての曇りのない明るさを放ちつつ、トップアイドルとして立ち続けるには気力体力を相当使っているであろうジャニーズの人気グループ“King & Prince”のメンバーである永瀬廉が、深い悩みを抱えながらニコニコ笑ってスマートに振る舞っている亮を見事に体現している。キラキラが天然ではなく負荷がかかっている感じが亮の役にちょうどいい。

カキの箱を抱えてふっと俯いて「ごめん。なんか言ってもらうの待ってるみたいだな」と立ち上がるところとか、「そういうの俺やっぱいいわ」と強がり言って笑う顔とか、輝きと曇りの絶妙な交差は風が吹くような効力がある。


ジャニーズの良いところは、王子様なんだけど庶民感覚を失っていないところ。金髪で派手な服装にサンダルが自然な感じもハマっている。バスの外から手を振るカメラ目線も決まった。

ツンデレ菅波

亮は荷物を持ってあげるのに、菅波は持たない。百音に「先生のほうがひ弱そうだし」と言われてしまうほど。

その後、ムッキムキの中村先生がドアをガンッと開けて出てきて、菅波の弱々しさがさらに際立つ。演じている坂口健太郎は学生時代バレー部で、背中や腕まわりなどしなやかで大きく良さそうな筋肉を持っているはずだが、そう見せないことがすごい。

バスに乗って来た百音に気づきつつ知らん顔したり、亮をさりげなく気にしたり、医者になろうと思ったとき最初に読んだ本は「ブラックジャックです」と言ったそばから「嘘です」と切り返す。漫画や絵本から勉強をはじめたほうがいいんじゃないかと若干嫌味なところ、カキに3回もあたっているのでリスク回避のために食べないことにしていること、……ツッコミどころ満載のキャラである。そんな彼にも何かがありそうで……。瞳の中に虚無がある感じがするが、好きな鮫の話をすると楽しそう。

朝ドラ『おかえりモネ』第21回 永瀬廉によって「及川亮」が輝く理由
写真提供/NHK


朝ドラ『おかえりモネ』第21回 永瀬廉によって「及川亮」が輝く理由
写真提供/NHK

菅波はツンデレだが、百音も、なんか興味なさそうに振る舞いつつ、菅波のいる後部席に座るし、あとから乗って来た学生たちに詰めてと言われて菅波の隣に詰めたりまんざらではなさそう。

今はやや暗い雰囲気があるが、もともとは素直で人との間合いを詰められる(人懐っこい)タイプなのだろう。
人づきあいが苦手だったら、長い距離、バスに乗るのがわかっていたら、挨拶だけして後部席ではなく別の席に座ってしゃべらないで済むようにするし、ほかの乗客が来たら菅波と反対の端に寄ると思う。また、彼女が屈折した態度をとらないのは、やりたいことが見つかったからともいえるだろう。

劇伴が印象的

第21回はかかっている劇伴が印象的だった。バスの後部座席に並んで座る百音と菅波の間のもたない感じにかかるピアノ曲や、菅波が難しそうな本を読み始め、百音も負けじと気象予報士試験の本を読み出すところにかかる森の妖精を想像してしまう少年のボーカル曲など。『モネ』では女性のハミングのような楽曲もある。

なんかふと気づいたのだが、大自然とハミングといえば壮大な北海道を舞台にしたドラマ『北の国から』のさだまさしがララ〜ンン〜とハミングする曲。そういえば北海道を舞台にした『なつぞら』にもハミング曲があった。自然を題材にした曲には生き物感のある人間の声を入れるというイメージの定着は、都会暮らしへのアンチテーゼとして自然と人間の共生を描いたドラマの代表作『北の国から』が作り出したのではないか。知らんけど。
(木俣冬)



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番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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