『ゴジラ vs コング』どっちが強いか決めたらええんや!怪獣界の二大スター直接対決はわんぱくの極み
(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

怪獣界の二大スター直接対決『ゴジラ vs コング』

ゴジラとコング、戦ったらどっちが強いのか……。人類永遠の疑問に対する最新の回答が『ゴジラ vs コング』である。しかしながら、おれの印象に強く残ったのは、前作のラスボスであるエマ博士の血筋の濃さだった……。


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どっちが強いか決めたらええんや! わんぱく怪獣バトル、開幕!!

この映画、オープニングで「今回はこういうテイストです」と観客に知らせてくれる親切設計だ。タイトルが出る前に流れるのは、2014年の『GODZILLA ゴジラ』みたいな感じの黒塗りの文章や目線が入った人物が話すモノクロの映像など、ブラックオプス感溢れるカッコいいやつ。

その映像はモナーク(ゴジラなど怪獣が共通して登場する『モンスターバース』に登場する秘密機関)の資料という体裁のようなのだが、「『ゴジラ』のタイトル出る時のやつじゃん! なんで今回だけ復活したんだ!?」と喜んで観ていると、途中からどうも様子がおかしくなる。

タイトル映像は今までのモンスターバースのあらすじ紹介も含んでいるため、ゴジラとコングが今までの映画で倒してきた他の怪獣がトーナメント表から次々に脱落する映像が挟まる。そして「ゴジラとコングは不倶戴天の宿敵」「永遠のライバル」みたいな文言を書いた文書がビシビシ映り、トーナメント表はついに頂上決戦、ゴジラとコングの直接対決へ……。

『ゴジラ vs コング』どっちが強いか決めたらええんや!怪獣界の二大スター直接対決はわんぱくの極み
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観客が全員「ゴチャゴチャ言わんと、誰がいちばん強いか決めたらええんや!」というテンションになったところで、逆光に照らされつつズガーン!と登場する「GODZILLA vs. KONG」のタイトル。作りがほぼプロレスの煽りV。一言もセリフを発することなく、「今回はこういうノリでだぞ!」とタイトルが出る前に客に伝えきる、素晴らしい技術である。

本編が始まっても、徹頭徹尾オープニングのテイストのまんま。一応、前作『キング・オブ・モンスターズ』以降大人しくしていたゴジラがなぜか最先端企業エイペックス社の工場を襲ったりとか、地球内部の空洞の探査のためにはモナークが髑髏島を隔離して囲い込んでいるコングを南極まで動かさないといけないとか、ストーリーはあるにはある。が、その内容はとにかく力技。映画の中でゴジラとコングを連戦に持ち込むためにだけ存在しているようなもんである。

では、肝心のゴジラとコングのファイトシーンはどうだったのか。
これがまあ、わんぱくの極みである。下馬評ではゴジラ優勢のコング不利ではないかと言われていたが(なんせ『髑髏島の巨神』の時はまだコングちっちゃかったし)、ゴジラと肩を並べるほどに巨大化したコングもゴジラ相手に一歩も譲らず、さらにゴリラらしく武器を使う知能派ファイトを展開。

対するゴジラも出し惜しみなしで口から熱線を吐きまくり、ひと暴れで艦隊を壊滅させて怪獣王の実力を披露。案外器用なコングに対し、「鋭い牙や爪で噛み付いたり引っ掻いたりする」という爬虫類っぽい攻撃で対抗する。

『ゴジラ vs コング』どっちが強いか決めたらええんや!怪獣界の二大スター直接対決はわんぱくの極み
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そんな両者譲らぬ激闘に、エイペックス社の陰謀が絡む筋立て。そもそもゴジラとコングの戦い方自体が殴る蹴るした後に相手に組みついての接近戦という感じでプロレス感強めなのだが、さらにこの陰謀によってゴジラにもコングにも華を持たせる展開に。

ゴジラとコングという怪獣界の二大スターを戦わせる以上、戦わせることより「どうやって互いの看板が傷つかないようにリングから降りてもらうか」が重要になるだろうと思っていたが、なるほどこういう手があったかと感心することしきりである。

思えば前作『キング・オブ・モンスターズ』は監督の怪獣に対する思い入れが強すぎたせいか、「神といかにして対峙するか」みたいなところに踏み込む思想の強さがあった(この場合の神とは怪獣のことです)。

が、今回はオープニングの印象通り、徹頭徹尾わんぱく三昧。小学三年生が考えた怪獣バトルを予算をぶち込んで映像化したような趣だ。一足早く夏休みが来たような感じである。

『ゴジラ vs コング』どっちが強いか決めたらええんや!怪獣界の二大スター直接対決はわんぱくの極み
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やべえ陰謀論おじさんに会いに行く! 受け継がれるエマ博士の血筋

このように基本的には小学生ノリの怪獣バトル映画である『ゴジラ vs コング』だが、一点だけ異常に生々しいポイントがある。前作では影のラスボスだったエマ・ラッセル博士の娘、マディソンに関する描写だ。


エマはもともとモナークの研究者だったが、実は「地球環境の悪化を防ぐため、怪獣によって人類文明をリセットする」というヤバい思想の持ち主だった。劇中ではテロリストと結託し、世界各地に眠っていた怪獣たちを起こして回った、まことにやっかいな人物である。

そんなエマの娘であるマディソンは、『ゴジラ vs コング』では少し成長している。だが彼女がハマっていたのは、なんとエイペックス社に関する陰謀論を垂れ流すネットラジオ。単に聞いているだけではなく、自分の友達を誘ってそのネットラジオを配信しているおっさんに会いに行くのである。

おっさんと対面した時には、おっさんの「タップ(水道水)は飲むか?」という質問に「フッ素が入ってて洗脳されやすくなるから飲まない」と即答。一気に意気投合するのである。

『ゴジラ vs コング』どっちが強いか決めたらええんや!怪獣界の二大スター直接対決はわんぱくの極み
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ついでに言えば、このやべえ陰謀論おじさんに関するディテールもやたらと丁寧。他人が食ってるりんごに「それは遺伝子組み換え食品だから食べないほうがいい」とアドバイスをし、謎の自作消毒液をお勧めする。

さらに、使っている携帯電話はスマホではなくフィーチャーフォン。なんか道具類を腰にやたらぶら下げているというルックスも生々しい。いやホント、なんでこんなとこだけやたら生々しいんだ……?

いや、まあ、あの母にしてこの子ありという理屈はわかる。
わかるんだけど、血の受け継がれ方がちょっと生々しすぎるというか、片方では「怪獣プロレス! 血湧き肉躍る死闘!」ってやってるのに、もう片方で「超過激なエコテロリストの娘が陰謀論にドハマりしてやべえネットラジオやってるおっさんに会いに行っちゃう」って、リアルさのラインがガッタガタというか、「なんでそこだけ急にリアルになっちゃったの!?」という疑問がふつふつと湧いてくる。

『ゴジラ vs コング』どっちが強いか決めたらええんや!怪獣界の二大スター直接対決はわんぱくの極み
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というようにリアルさのラインがガタついているところもあるのだが、しかしそれでも「まあ『ゴジラ vs コング』だし、いいか!」と開き直って見られる懐の広さを感じるのも事実。

いやホント、作品自体が「こうなったらいいのにな~」ということを全部やってくれる内容なので喉越しが非常によく、それだけに陰謀論おじさんのディテールとかやたらリアルなのがひっかかるところもある。

だがしかし、それはそれである。ゴジラとコングの大暴れを見つつ、エマ博士の血筋の濃厚さに想いを馳せるという、前代未聞の鑑賞体験を得られる怪作だ。夏休みの前祝いとして、小学生に戻った気持ちで見てほしい。
(しげる)

作品概要

『ゴジラ vs コング』
大ヒット上映中
出演:アレクサンダー・スカルスガルド ミリー・ボビー・ブラウン レベッカ・ホール
ブライアン・タイリー・ヘンリー 小栗旬 エイザ・ゴンザレス ジュリアン・デニソン
カイル・チャンドラー デミアン・ビチル
監督:アダム・ウィンガード
脚本:エリック・ピアソン マックス・ボレンスタイン
製作:レジェンダリーピクチャーズ ワーナーブラザース
日本配給:東宝
(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.
映画『ゴジラ vs コング』公式サイト:https://godzilla-movie.jp/

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Writer

しげる


ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

関連サイト
@gerusea
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