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女のマウント合戦『ナイト・ドクター』第4話
月9『ナイト・ドクター』(フジテレビ 系 月曜よる9時〜)はベイエリアにあるあさひ海浜病院が新たにはじめた夜間専門の緊急救命で働く若者たちの群像劇。救命に情熱を燃やすあまり恋人とも別れた朝倉美月(波瑠)、上級医の成瀬暁人(田中圭)、持病を抱えた妹・心美(原菜乃華)を親代わりのように世話する深澤新(岸優太)、あさひ海浜病院の本院・柏桜会グループの桜庭会長(真矢ミキ)の息子で心臓に疾患のある桜庭瞬(北村匠海)、高飛車だが優秀な高岡幸保(岡崎紗絵)の5人と、ニューヨーク帰りの指導医・本郷亨(沢村一樹)が勤務する。【前話レビュー】運命は変えられる――桜庭(北村匠海)の変化が感動的だった第3話
第4話はこれまであまり出番のなかった高岡の回。
高岡が北斗に問い詰めると、フォロワー8万人を持つインフルエンサーの花園と仕事上親しくしていたら勘違いされて困っている、という経緯。故に、仕事で会えないうちに恋人に浮気された朝倉とは違うと高岡は自信満々。仕事もプライベートも充実させ、30歳までに結婚すると目標を定め、花園は患者にもかかわらず、あからさまにマウント合戦を繰り広げる。
花園の態度も失礼だが、高岡の態度も医者とは思えない。超わがままで勝手なことばかり言ったりやったりする花園だが、「どんな相手であろうと相手は患者」と朝倉も深澤も丁寧に接する。が、高岡だけは花園のわがままに付き合っていられないと私情丸出し過ぎの態度をとる。
とにかく仕事熱心でまっすぐ不器用な朝倉と違い、高岡は、北斗と付き合う上で都合のいい場として今の仕事を決めただけと明かし、医療の仕事をナメてるの?と朝倉は苛立つ。高岡は真面目に仕事に打ち込まない、責めるに値する存在と化す。朝倉は「(北斗に)依存して、ホントの高岡はどこにいるの?」と高岡を問い詰める。
朝倉も高岡も極端なだけで、どちらが正しいわけではない。それを冷静にジャッジするのは成瀬である。「感情に任せて物を言い合う。いい大人のすることとは思えないな」と淡々とまっとうなことを言う。
敵役や悪役がいない昨今のドラマ
やがて高岡が人一倍、丁寧に患者を診ていたことが判明する。誰よりも細かいカルテを書いていた。そんな高岡だからこそ花園の隠された疾患にも気づくのだ。……こんなふうに最近のドラマは、みんな良い人。敵役や悪役がいない。一瞬、いやな感じと思っても、じつは良い面がありますよ〜とすぐに挽回場面になる。
花園と高岡の関係は、花園がわがまま放題するのみならず、高岡が隠していた実家のことや子ども時代のことをネットで調べて馬鹿にするなど、たしかに観ていてもイライラした。そんな花園にすらそんなふうになってしまった納得の理由がある。「患者がわがままに振る舞う納得の理由」みたいなネット記事の見出しになりそうな重大な理由を高岡が見つける。
誰にも「悪者」という単純な役割を与えないように気配って、物語の起伏が緩やかで、天気の良い日の波のようである。こういうドラマで気持ちをなだらかにしないといられないほど現実世界は波が高く翻弄されることばかり。暴れる怪物に子守唄を歌って穏やかにするかのように、表現に気遣うことで、ネットの波も穏やかになる。視聴率も安定。良いことばかりである。
誰かに依存してしまうことは自身の心の問題だと気づいた高岡が、自分の姿を花園に見て心のケアをするように精神科を受診してくださいと言ったとき、高岡にも心のケアが必要ではないかと筆者は心配になったが、彼女が自分で気づいて行き過ぎないようにストップをかけることができた。さすが優秀な医師。
高岡は自分の欠落や不安を何かに依存して補填するのを辞めて、朝倉たちが住んでいる病院の寮的なマンションに引っ越してくる。朝倉、高岡、深澤、今回ほとんど出番のなかった桜庭がマンションの広い屋上で朝ごはんを食べながら盛り上がる。そのさわやかな空気はすべてのもやもやを風に飛ばす。そこにひとりだけ参加していない成瀬の物語はいよいよ第5話で描かれる。
第4話では花園が病院に運ばれてきたときの高岡の医者らしからぬ態度に成瀬がした信じがたいという表情が最高だった。ひとりちょっと年上ということもあるし、あまりみんなと仲良くならないままだといいなあと筆者は勝手に思っている。批評的な視点の人がいてほしい。
さて。高岡の話を傾聴し慰めていた深澤。第4話は高岡のエピソードの他に、深澤の妹・心美とのエピソードもあった。
(木俣冬)
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番組情報
フジテレビ 系『ナイト・ドクター』
毎週月曜よる9時〜
出演:波瑠 田中圭 岸優太 岡崎紗絵 北村匠海
一ノ瀬 颯 野呂佳代 櫻井海音 梶原善 真矢ミキ 小野武彦 沢村一樹、ほか
脚本:大北はるか
音楽:得田真裕
プロデュース:野田悠介
演出:関野宗紀 澤田鎌作
制作著作:フジテレビ
番組サイト:https://www.fujitv.co.jp/NightDoctor/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami