
※本文にはネタバレがあります
※第4話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします
二階堂ふみの瞳が饒舌『プロミス・シンデレラ』第3話
高校生・片岡壱成(眞栄田郷敦)とバツイチの27歳・桂木早梅(二階堂ふみ)と老舗旅館の若旦那・成吾(岩田剛典)のラブ・トライアングル『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)第3回はなんだかドロドロしてきた。【前話レビュー】『プロミス・シンデレラ』眞栄田郷敦のおんぶと岩田剛典のお嬢様抱っこ どっちが好きなの? 第2話

浮気した早梅の夫・正広(井之脇海)との離婚問題が進展した後、えええ!?という展開に。壱成のイジメも、旅館の仲居たちのイビリもかわいいものだが、もっと強烈な悪意を感じる出来事が待っている。
第3話は、誠実そうな正広がなぜ浮気したのか、相手は誰なのか? その謎が明かされていく。
早梅に正広から電話がかかってきていることが気になる壱成は離婚届を出すことを早梅に命じる。不倫の証拠を抑え、300万円もの高額慰謝料を獲得し、壱成に返済するという指令をしぶしぶ受ける早梅。探偵グッズを集めてノリノリの壱成。彼なりに早梅を心配しているのだと片岡家の執事・吉寅(高橋克実)が壱成の気持ちを代弁する。


正広を尾行する壱成は、正広と早梅の出会いの場である思い出の定食屋に入る。働かない父親から離れてひとり働いていた早梅の悲しい身の上。そんな彼女がつい優しげな正広に頼ってしまって結婚。ようやく幸せになったと思ったら浮気されてしまった。
散々な早梅に壱成は我慢しないでもっと感情を正広にぶつけろと言う。でも早梅はなぜか言えない。慰謝料をもらうことすら拒否するほどの絶望を抱えているのである。
出番はさほどない友近ながら、その一言に含蓄があるのはさすがである。また、二階堂ふみも繊細な感情を演じている。

100万円の慰謝料を差し出し、足りないと言われたら分割でいいかと応対する夫に、自分との関わりをこうもあっさりお金で解決できると考えられていることに傷つく気持ちがその表情や震える声に見事に現れている。二階堂の瞳の立体感はハンパなくとても饒舌だ。

「目の前にいるこいつがゴリゴリ削られてんだよ」
早梅の気持ちを表現する壱成のセリフが良かった。早梅の発散できない気持ちを壱成が理解して、代わりに発散してくれる。彼は彼で言えない悲しみを抱えているから、早梅とは良いコンビなのである。


人通りのある橋の上でふいに泣き出す早梅をひと目につかない向きにして、高級ティッシュを買って(?)きて渡す壱成のぶっきらぼうな優しさが染みる。泣き顔を他者に見られないようにする仕草は前作『着飾る恋には理由があって』で向井理がやっていた。
感情を大事にする恋愛もの? 仕掛けを楽しむエンタメ?
すでに壱成がものすごく良いヤツになっているため、もうこれでいいじゃないかと思うのだが、そこに成吾が出て来てしまうのが物語。さらに成吾と関わりのある芸者・菊乃(松井玲奈)が絡んできて……。
そもそも早梅と壱成は10歳も年齢が離れている。このドラマにはハードルがいっぱいある。恋物語にはハードルがあるのが当たり前とはいえ、ちょっと話を複雑にし過ぎているのではないだろうか。早梅に関わってくる人が、浮気夫・初恋の人・ドSの年下君といて、3人はまだしも、浮気夫の浮気に陰謀があるとなると、なんだかもう気持ちがついていきづらい。感情を大事にする恋愛ものなのか、仕掛けを楽しむエンタメなのか、どっちつかずなのである。

ただ、その複雑な人間模様を脚本家・古屋和尚は非常に手堅くまとめている。これまで警察ものからヒューマンドラマ、コメディまで幅広く手掛けてきた実力派・中堅ライターの力がいかんなく発揮されていると言えるだろう。だが、理路整然とまとめ過ぎていて、理屈ではくくれない恋愛の機微――身体感覚が不足していることは否めない。

そうなると眞栄田郷敦と岩田剛典の身体性に頼るしかなくなる。単純に言ってしまえば、カッコよさや色気というような原始的な魅力である。さらに単純化すれば、生命力そのもの。
二階堂ふみは自身の生命力はやや抑えめにして、共演者のそれを存分に引き出していく。それが彼女の稀有な才能のひとつである。いまのところ眞栄田は若さを発散する場面は生き生きしていて良い感じなのに比べ、岩田がやや苦戦しているように感じる。上品な若旦那を演じるのはなかなか難易度が高いようで、唯一、茶房のマスター黒瀬(金子ノブアキ)と話しているところだけ開放されていて楽そうに見える。
それもこれも演技のひとつであり、おそらく老舗旅館を背負って持て余している成吾が早梅と再会して変化していくところが見どころになるのであろう。

感覚的な部分で工夫を感じるのは、早梅の居候している屋根裏部屋みたいな場所のインテリアやお世話になっている片岡家の悦子(三田佳子)のモダンな着物の着こなし。これらのインスタ映えしそうなビジュアルの数々が『プロミス・シンデレラ』に限らず、火10ドラマの楽しみになっている。
(木俣冬)

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番組情報
TBS火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜
出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典
原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)
制作著作:共同テレビ TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami