『プロミス・シンデレラ』和装・郷敦の清々しさと絵に描いたような主人公いびり 美醜の差激しい第4話
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

※第5話のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします


和装男子よき『プロミス・シンデレラ』第4話

絵に描いたような主人公いびりに身震い。それに比べて壱成(眞栄田郷敦)の和装のしゃきっとして実に清々しいことよ。『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)第4回は美醜の差が激しかった。


【前話レビュー】『プロミス・シンデレラ』誠実そうな早梅の夫・正弘のクズっぷりに「えええぇぇっっ!?」

高校生の壱成とバツイチの27歳・桂木早梅(二階堂ふみ)と老舗旅館の若旦那・成吾(岩田剛典)のラブ・トライアングルが主軸のドラマ、第3話の終わりで早梅と成吾が再会し、第4話の冒頭は成吾を狙う仲居たちが良い感じのふたりを目撃しピリつく。赤い和傘の下で出会ったふたりの顔は赤い傘の色味でほんのり紅い……。演出の努力がそこに垣間見えた。

早梅と成吾の再会の様子は極端に肥大化されて旅館の従業員たちに広まる。お姫様抱っこされた話まで知れ渡り、早梅は靴を隠されるというイジメに遭う。

イジメのクリシェに遭遇した哀れな早梅が茶房のマスター黒瀬(金子ノブアキ)に送られて川沿いを歩いていると、壱成が偶然を装って待っている。とそこに成吾が追いかけてきて靴を買いにいきましょうと申し出て……。火花散る兄弟。いや、勝手に火花散らしているのは壱成だけ。早梅の腕を引っ張って帰る。

このドラマでは“靴”がモチーフになっている。高校時代、早梅が成吾から靴を贈られたものの受け取らなかったことにはじまり、第1話では壱成に靴を池に捨てられている。
早梅の尊厳の象徴が“靴”なのである。

『プロミス・シンデレラ』和装・郷敦の清々しさと絵に描いたような主人公いびり 美醜の差激しい第4話
(C)TBS

家に戻ると、壱成は早梅から成吾が早梅の初恋の相手だったことを聞き、ますますメラメラ。それはいいとして、回想シーンの二階堂ふみと岩田剛典がセピアの画面でぼかしているとはいえなかなか厳しいものがある。ふたりとも立派な大人の俳優だから。高校生まで演じる演技力と煽るのも虚しい。スイーツ映画だと十代は別の俳優が演じることもあるが、ここで十代の俳優を起用するとこんがらがるのかもしれず、致し方なしか。

早梅と成吾の過去の思い出を悦子(三田佳子)吉寅(高橋克実)がこっそり聞いていたり、藤田(友近)菊乃(松井玲奈)が静かながらお互い心を許していない感じだったり、脇役描写もちょっと入れつつ話が進む。

「あきら」と呼ばれ、「その名前で呼ぶのはルール違反」と厳しい顔で言う菊乃のことが気になる。第3話の菊乃の行動がえええ!と驚くべきことで、菊乃はキーマンのようなのだが、松井玲奈がコロナに感染したと報道されて心配である。

なんでこうなった

第4話は常連の太客・西園寺(かたせ梨乃)が宴会にやって来るエピソードが中心。仲居たちの古典的な早梅いじめによって、たまたま西園寺からの電話を受けた早梅が予約のメモを残したはずが何者かによって捨てられてしまい、準備ができていないと大わらわ。たまたま西園寺が人数変更の電話をしてきたことで、予約が入っていないことが判明し、とりあえず準備はことなきを得る。

西園寺の主催するS会は女人禁制で、彼女がお気に入りの男子のみ参加が許される。
旅館でも男性だけが接客。お気に入りは成吾だが、ほかの仕事で間に合わない。西園寺の“地獄の配膳ループ”に誰もが疲弊するなか、早梅が果敢に配膳に……。

怒った西園寺に着物を脱げと命じられ帯に手をやる早梅、その頃、何者かが着物を着替えている。ハイスピードカメラで交互に脱ぐ・着るを映しハラハラさせ、最終的に着物を着た人物が座敷にやって来る。その人物は――

成吾かと思ったら壱成だったというサプライズ。とにかく眞栄田郷敦の着物姿がいい。上半身に良い筋肉がついてしっかりしていて、ぴしっと着こなしていて、着物の良さも引き立ている。

着物は体幹が大事である。これで旅館の仲居のイジメや西園寺のセクハラの安っぽさも打ち消された。こういう子供じみたイジメはリアルといえばリアルで、実際にもこういうことはあるからこそ見ていていやな気分になる。嫌いな人物がいるのは仕方ないしライバルを出し抜きたい気持ちもわからないことはない。
でもその私的な欲望は仕事に迷惑をかけない場でやってほしい。

『プロミス・シンデレラ』和装・郷敦の清々しさと絵に描いたような主人公いびり 美醜の差激しい第4話
『プロミス・シンデレラ』第5話は8月10日(火)よる10時

VIPの予約を捨ててしまったら、早梅のせいにしたとしても仕事に支障をきたす。けっきょく、自分たちだって大変な目に遭うし上司にも迷惑がかかる。でもこういう浅はかな人物が職場にはびこり、あろうことか生き残っていくこともある。ドラマでは早梅の正義感と壱成の魅力でうまく収まった。原作もこうなのかと気になって読んでみたら全然違っていた。

原作を読むとこんなにベタなイジメやセクハラを描いていないのに、なんでドラマでは仲居のイジメや西園寺のセクハラを膨らませているのか。その理由を良いふうに考えると、壱成の着物姿の清潔感ある美を際立たせるためではないか。そのために徹底して醜い世界を描こうとしたと考えれば合点がいく。

ただ、原作ではいじめとセクハラで話を進めなくてもキャラクターの魅力はちゃんと出ている。漫画と実写の表現の違いがあるとはいえ、なんでこうなった感が拭えない。第3話のレビューでも指摘したが、脚本家が情緒を省いて、ひたすらイケメンの見せ場とキュン場面を作るための構成を重視したシチュエーションドラマ化している。
それはそれで好きな人もいるのだろうけれど、本当にこの選択がベストだったのだろうか。作り手に問いたい。
(木俣冬)

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番組情報

TBS
火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜

出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春 
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典

原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)

制作著作:共同テレビ TBS

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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