『おかえりモネ』第17週「わたしたちに出来ること」
第83回〈9月8日(水)放送 作:安達奈緒子、演出:中村周祐〉

※『おかえりモネ』第84回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします
菅波(坂口健太郎)にもらった合鍵(鮫のキーホルダー付き)で彼の部屋に初めて入った百音(清原果耶)。ドキドキが止まらない。
【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第83回掲載中)
布団と布団
初めて部屋に入るんかい!と驚いた視聴者も多かったのではないだろうか。2016年の暮れには付き合っていて、今2017年3月。想像にしか過ぎないが、百音とゆっくり話をしようとついに部屋に呼ぶことにした菅波だったが仕事で約束の時間に家に帰れず、部屋の前で待たせるのはいかんと反省し合鍵を渡したものの、結局その日も家に帰れず……という感じではないだろうか。
部屋に入った百音。おずおずと見渡すと――本がたくさん。そして鮫がいっぱいる。ぬいぐるみにちょっと手を触れる百音。第21回で菅波がシャークミュージアムで買ってきたものであろう。同僚へのお土産と言っていたはずだが、そう言って自分の趣味を誤魔化していたことがここでようやくわかった。
あの日、バスで同乗しなかったらここまでふたりは親しくなることはなかったかもしれない。
菅波の性格上それなりに片付いてはいるが、ショールームみたいに無機質ではなく、生活感はそれなり。とりわけ布団のうっすらした乱れに菅波の痕跡を感じさせる。じっと正座して目をしばたかせている百音。
結局、その日も菅波は仕事でちっとも帰って来ることができず、百音はとぼとぼ汐見湯に帰る。戻ってやっと電話をするが、それも菅波の仕事が入って中途半端に切れてしまう。
その晩、宇田川さんの風呂掃除の音を聞きながら、百音が菅波を思って眠る画がなんとも思わせぶり。掛け布団越しに見える百音のやや前かがみの身体のフォルムは百音が様々な想いを抱きしめているようにも見えた。ふたつの布団のたるみに色気が滲む。
今週の演出は『モネ』初登場の中村周祐。演出担当作はまだ少なく、ほかに20年に名古屋局で制作されたシシド・カフカ主演の『ハムラアキラ〜世界で最も不運な探偵〜』第6話の演出を担当している。『ハムラ〜』も画に凝っていたドラマであった。

宇田川さんはヒロ君
昼間ひきこもっていて夜中に風呂掃除をしている謎の宇田川さん。百音は汐見湯に来て約1年経過してようやく宇田川さんの一面を知る。時々パニック障害になるのだとか。それに菜津(マイコ)がそっと寄り添っている。「ヒロ君」と呼ぶ彼との関係を百音に話す時の菜津の声はいつもの明るさよりもさらに何か特別な感情がこもって聞こえる。この1年、1回もこの状態に出くわさなかったことも、コミュニケーションスペースに飾った菜津の絵にやっと気づくことも、菜津が急に「ヒロ君」呼びになっても自然に受け入れることも、いささか不自然に感じるが、百音は興味のないことにはまったく心も体も動かさない人なのだろう。菅波の部屋の中への興味とコミュニケーションスペースへの興味の差がずいぶんと違う。

ともあれ、宇田川さん、大変だったんだなあ。コロナとオリンピックでスケジュール等が変動したせいで宇田川さんのエピソードがギュッと圧縮されてしまったのだろうか。駆け足で語られた宇田川の苦労話だが、「水が違う」とか「沼」とか「荒波」とか“水”にたとえて語られるところが『モネ』らしい。すべては“水”で繋がっている。
内田はマモちゃん
ある朝、内田(清水尋也)が汐見湯にやって来た。百音の誕生会の時(第62回)、たしかに明日美(恒松祐里)と内田は意気投合してアドレスを交換しているようだったが、いつの間にか接近していて、明日美は内田のスーツを買いに付き合うことに。なんだか仲良さそうなふたりに百音はあっけにとられる。宇田川さんの「ヒロ君」はスルーだった百音だが、内田の「マモちゃん」にはツッコミ入ってた。明日美が選んだスーツの用途もまた驚きで……。スーツの内田が、キャスターとして崖っぷちに立たされている莉子(今田美桜)を刺激する。恋と仕事が交錯する、いよいよ民放の水10と火10のような雰囲気になって来た。
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami