『おかえりモネ』第18週「伝えたい守りたい」

第86回〈9月13日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏、原英輔〉

『おかえりモネ』第86回 菅波、何かを決意したように「来週、東京行きます」ついに来るか、アレ
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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時は2019年9月(令和元年)。いよいよオリパラを翌年に控え、車椅子マラソンランナーの鮫島(菅原小春)は念願の選手に選ばれた。そのお祝いの会が汐見湯で開催され、莉子(今田美桜)、内田(清水尋也)、野坂(森田望智)、明日美(恒松祐里)、菜津(マイコ)が集まった。


【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第86回掲載中)

4年目。百音はすっかり落ち着いた大人に成長し、身ぶりも口ぶりも堂々としていて、時の流れを感じさせた。

登米と東京で遠距離中の菅波(坂口健太郎)が深夜の電話で「来週、東京行きます」と百音に伝えたときの何かを決意したような声と表情はいったい……。来るか、アレ。

「僕はスーちゃん以外に興味ないよ?」

汐見湯のお祝いの会ではなぜか明日美がむくれている。内田がモテているからだった。「育て過ぎちゃったよね」と莉子がからかうと、内田は「僕はスーちゃん以外に興味ないよ?」と言う。

亮(永瀬廉)とはうまくいかなかった明日美だが、いい人と出会い、いい感じに育てることができたようである。ただ気になるのが、明日美と内田が鮫島そっちのけで盛り上がってしまうことである(主として盛り上がってるのは明日美)。第63回では、百音の誕生会で連絡先を交換していた。誰かの主役の会だからといって必ずしも主役ファーストでなくてもいいとはいえ、今回も鮫島にお祝いも言わずにあからさまにむくれている姿はいい感じはしない。

おめでとうございます〜と言いながらちょっとへんな感じで、実は――とかいう流れにはならなかったのかと思うが、世の中には悪意のない話題泥棒は日常茶飯事だから仕方ない。それにここで大事なのは、内田の「僕はスーちゃん以外に興味ないよ?」である。


その前に鮫島は百音と「大人こそ照れずに言ってかないかんねん、そういう熱い想いは」と語っている。鮫島の「そういう熱い想い」は「誰かの役に立ちたい」ことだが、内田の「僕はスーちゃん以外に興味ないよ?」も想いをはっきり言葉にすることで明日美との仲がより良くなる良き行為である。照れずに口にすることも大事なのだ。

それにしても内田の華麗なキャスターぶり。宣伝のためファッション誌の取材を受けている。モデル経験があるから虚ろな瞳で立っていると絵になることこの上ない。莉子だってビジュアルで売ることも可能だが、取材を断っていた。とはいえ取材されて持ち上げられている内田をちょっと気にしているところが莉子の正直なところ。

『おかえりモネ』第86回 菅波、何かを決意したように「来週、東京行きます」ついに来るか、アレ
写真提供/NHK

菅波との関係は……

内田と明日美が仲良さそうなところをみんなに見せつけたその晩、夜中の1時50分に百音のケータイが鳴る。登米で地域医療に励んでいる菅波からだった。

「そっちは2時に起きるんだからいいでしょう」と開き直ったような甘えたような言い方の菅波に百音との遠距離恋愛歴2年半くらいで関係が深まっていることを感じるが、この2年半、1回もこんな時間に電話してくることがなかったとしたら、菅波に何かがあったと思ってもおかしくない。

案の定、菅波は自分の患者が自宅介護から入院になってしまったことを悔しく思っている様子だった。百音は菅波がまだ帰宅せず診療所にいて気持ちを解消できずにいいることを敏感に悟って声をかける。


「そっちの仕事、ほんとに楽しいんだね。4年目なんて仕事が面白くなる時期だからね」という菅波の声と表情には百音が充実していることへの複雑な想いが滲んでいるように感じる。

電話を切ったあと、ケータイに手をのばそうとしたり戻したり、逡巡した末、もう一度電話して「来週、東京行きます」と言った菅波の心は……。照れずに熱い想いを伝えるのだろうか。



チーム・ジェネレーターズ

朝岡(西島秀俊)は独立して若者たちに活躍する場を明け渡したが、相変わらずウェザー・エキスパーツとの付き合いもあって、百音たちを気遣ってはいる。そんな朝岡が新たなアプリ「チーム・ジェネレーターズ」を考えた。地元の人の気象情報を集める企画である。

「野坂さん、野坂さん」と寄っていって、「また新しいことはじめたんですか?」と聞かれると、喜々としてアプリの説明を野坂にしはじめる。この時、基本丁寧語だが、ふと「ああそうそう」と気安くなるところが印象的。これも年月が経過した現れだろうか。もしくは朝岡が独立して、上司として自分を律しないで済むようになったということだろうか。

『おかえりモネ』第86回 菅波、何かを決意したように「来週、東京行きます」ついに来るか、アレ
写真提供/NHK

最終回が近づいてきた?

朝ドラで最終回が近づくと、これまでのゆかりの人々が集まってわいわいやったりすることがよくある。第86回はちょっとそんなムードもあった。だが、まだ最終回まで1カ月半ある。
百音にはまだ本題が残っている。地元の役に立ちたいという想いをどのように昇華させるか。

百音は会社の社長プレゼンである提案を行う。これまで静観しているようだった主人公がついに動き出した姿は、さながら“風が吹いた”という印象を受ける。今週もまたBUMP OF CHICKENの主題歌「なないろ」の<闇雲にでも信じたよ きちんと前に進んでるって>の冒頭の歌詞がドラマにリンクした。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪










番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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