『おかえりモネ』第22週「嵐の気仙沼」
第109回〈10月14日(木)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

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まさに「嵐の気仙沼」。夕方16時から深夜3時までの緊迫の11時間を15分間で描く。
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2020年のお正月。
百音(清原果耶)の予報でたくさんの船が避難できて、あれほど冷たかった滋郎(菅原大吉)にも感謝され、荒れたら荒れたで港には経済効果があると喜ばれる逆説も百音が知った矢先の亮の遭難。データに基づいた百音の予報では6時間ほどで低気圧が動く。強い風に抗って移動することなく、そのまま待機することが最善の対処法と考えられる。だが極めて強い風のなか6時間もたせることが可能なのか不安は拭えない。
いまにも転覆しそうな強い風が吹いている状況はいっさい画で見せることなく、本土で心配する人々の表情のみでドラマは進行していく。セリフの力、俳優の力、演出の力で目に見えない嵐を想像させる、『おかえりモネ』最大の“想像力”への挑戦である。

新次がカッコいい
本土の漁港組合の人たちも亀島の永浦家も心配顔。永浦家には三生(前田航基)がやって来る。百音のもとに悠人(高田彪我)と未知が駆けつけて来た。東京では明日美(恒松祐里)も心配して悠人に電話をかけてきた。ここで新次(浅野忠信)が目覚ましい行動に出る。組合に顔を出し、嵐に巻き込まれた船にこう告げるのだ。
「これ西からの風に舳先を向けてくれ。たぶんあと6時間ほどしたら風は収まる」
これには鳥肌が立った。優秀な漁師の勘は気象予報士の百音の判断と同じ。それも一瞬で状況を的確に把握し判断するというスゴ技。ブランクがあるとはいえ、長年の経験がどれだけ強いか示してくれた。それも全然ドヤ顔ではなく、ごくごく自然な口ぶりで。
以前も新次は航路と天気図を自分で描きながら予想していたことがあった。
……と想像したものの、耕治(内野聖陽)が新次に連絡したというセリフがあるので、百音の判断を新次に伝えた説も考えられないことはない。百音の口から伝えるより新次のほうが説得力あるという作戦だったりして。でもここはやはり新次の独自予報説でいきたい。

と、ここで朝岡の登場
「私たちは予言者ではない。未来を予測できるのもあくまでも科学に基づくデータの集積と分析によるものです。不確かな未来を自分たちの思うように操作できるわけではありません」「祈ることしかできないという経験を私たちは何度もしています」
東北の低気圧は朝岡(西島秀俊)も心配。野坂と内田の元にやって来て、百音と電話で話をする。彼の言葉こそ『モネ』の物語の真髄である。どうしようもない不条理な自然災害に人間が抗えるのは理性と知性しかない。
祈りは出来得ることをやった後のものだ。
どれだけ力を尽くしてもおごることないよう自分を戒めているストイックな朝岡。
(木俣冬)
番組情報
連続テレビ小説『おかえりモネ』
2021年5月17日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 坂井真紀 千葉哲也 山寺宏一 山口紗弥加 菅原大吉 佃典彦 茅島みずき 伊東蒼 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら
作:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami