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『おかえりモネ』永瀬廉がスターの皮を脱いで「亮」の心の内を吐き出した第110回 今週は新次も良すぎた

『おかえりモネ』第22週「嵐の気仙沼」

第110回〈10月15日(金)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

※本文にネタバレを含みます

※『おかえりモネ』第111回のレビューを更新しましたら、Twitterでお知らせします


長きに渡った未知(蒔田彩珠)亮(永瀬廉)の問題が解決した。「お前に何がわかる? そう思ってきたよ。ずっと。俺以外の全員に」と亮が心の内を吐き出す時、永瀬廉がスターの皮を脱いで演技しているように見えた。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第110回掲載中)

「大丈夫なんて言わないで」

船は無事だった。亮が帰って来た。「本当にすいませんでした」と漁港組合長の滋郎(菅原大吉)に深く頭を下げる身振りと口ぶりが父・新次(浅野忠信)にそっくり。

組合の事務所の外には未知が待っていた。すこし嬉しそうな顔をする亮。ふたりは心配して尽力してくれた百音(清原果耶)の元にやって来る。

一度は気を利かせてふたりで話をするように席を外すが、変わらず心をさらけ出さず、「大丈夫だから」と未知にやんわり距離をとろうとする(未知いわく「どうでもいい気遣いみたいな言葉」)亮に百音は「りょーちん、笑わなくていいよ。大丈夫って言いながら本当はなんて思っていたの?」と問いかける。そこで亮はとうとう笑顔で隠し続けて来た心をぶちまけた。

「お前に何がわかる? そう思ってきたよ。ずっと。俺以外の全員に」

汐見湯のコインランドリーで一度、亮の弱った部分を見せられていた百音だからこそ言えたことであろう。

亮の本音

「お前」という言葉の響きは鈍器のような凶暴さがある。対して「大丈夫だから」と言う時はやさしげなふんわりした音がする。百音もいつもささやくような話し方をする。とりわけこの回、百音は言いあぐね無理に絞るような話し方をしている。

こういう胸の上のほうで呼吸するような話し方は聞く方にもストレスを与えるものだが、話しているほうもストレスになっている。なにかあったときに深呼吸するといいのは身体の安定が心を安定させるから。おそらく清原果耶はあえて息を浅くして話している。それによって百音の息苦しさ、生きづらさを表しているのだろう。彼女の話す言葉が快楽にならないように配慮しているのだと思う。何かよさげなことを言って良い気分になって終わりってことにならないように。

『おかえりモネ』永瀬廉がスターの皮を脱いで「亮」の心の内を吐き出した第110回 今週は新次も良すぎた
写真提供/NHK

物語であれ現実であれ、苦しさを隠して明るく振る舞うことが美徳とされてきた。たとえば『モネ』では亮や亜哉子(鈴木京香)がそうである。でも彼らの笑顔は『モネ』の世界ではちょっと浮いて見える。ほかの人達が正直で無理して笑っていないから。なかには辛さも悲しさも乗り越えて無理していない明るさを全身から出す人間力のある人もいる。それが龍己(藤竜也)であるが、その境地に至るのはなかなか難しい。亮や亜哉子は明るく笑いながら本心では苦しみを持て余していた。

「お前に何がわかる? そう思ってきたよ。ずっと。俺以外の全員に」と言ったあとの亮はもう笑っていないし、瞳も見開いていない。横向きの顔には彼の無意識が見え、正面顔は前髪が覆いかかるようになって、瞳は何も見たくないかのようにまぶたが重く覆っている。

百音が苦しそうに話すから亮も思わず本音の苦しさが出せた。ここで百音が腹から出た声で言葉の頭を強く高めの音でハキハキと語ったら、言えなくなってしまうことがある。「大丈夫」という言葉が本音を覆い隠すのと同じ、明るい笑顔、明るい通った声は、元気にさせる面もある一方で、心を縛りいためつけていく。エナジードリンクと同じで、体内のエネルギーを無理に発動しているだけで実際は肉体も心もどんどん消費されて疲弊していくのである。明るく笑って会話を交わしながら心は傷ついていく、そんなコミュニケーションこそしんどい。たまにはガス抜きが必要だ。

震災の被害を受けた人たちには亮のような思いを抱えた人もいれば、そうではない人もいるだろうから、ひとくくりにはできないとは思う。ただ、震災に限ったことではなく、何かに傷ついた人のなかには亮のように「大丈夫」と明るく笑いながら心の中は別な感情に支配されている人もいるであろう。百音は亮に代表される本当の心を出せない苦しみに手を差し伸べる。


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NHK「連続テレビ小説」第104作目の作品。宮城県気仙沼市の離島・亀島で育った清原果耶演じるヒロインの永浦百音が、気象予報を通じて幸せな「未来」を届ける希望の物語。2021年5月17日~10月29日放送。

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