朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第7週「1948-1951」
第33回〈12月15日(水)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり、橋爪紳一朗〉

※本文にネタバレを含みます
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千吉が勇に安子との結婚を勧める
「カムカム英語」に励まされていた安子(上白石萌音)とるい(古川凛)だったが「今週いっぱいでお別れ」と聞いて「えっ」となる。とここで驚くのは「カムカム英語」が終わってしまうことと同時に、るいがまた代替わりしたことであった。大きくなってきた。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜33回掲載中)
るいは春から小学生になる。制服を千吉(段田安則)にあつらえてもらって大喜び。
安子は「水田屋とうふ」に間借りして菓子を作って売り、算太(濱田岳)は威勢よく売っている。口上を述べている彼は寅さん化が進んでいるような気がする。
きぬ(小野花梨)は妊娠し、夫・力(小林よしひさ)はラッパを吹いて応援する。みんなの生活に平穏が戻ってきたようだ。雉真繊維も勇(村上虹郎)の野球部作戦が功を奏して順調。そして千吉は勇に結婚を勧める。相手は――安子。
「ははは、何じゃ何じゃ、何の冗談じゃ」と動揺する勇。だが千吉は本気。
「姉さんは兄さんの嫁さんじゃ」と渋る勇に千吉は「未亡人になったおなごが夫の兄弟と再婚するのは珍しい話じゃねえ」となおも言う。
結婚とは家を守るための制度である。そういう時代であったのだなあと思うが、千吉の場合は情けも入っているように感じる。勇の安子に対する気持ちにも気付いていた。勇が他の人と結婚して子供ができたら、安子もるいも立場的に微妙になってしまう。ふたりが結婚するのが最良だという判断はけっして家のためだけではないだろう。安子に何も言わないから勇が決断しろと任せるのも千吉の良さである。
それを立ち聞き(座り聞き)している雪衣(岡田結実)は哀しそうな表情で……。彼女の物語が思わせぶりなリアクション以外描かれていないにもかかわらず、ここでものすごく泣いているとかなり独り相撲な人に見えてしまう。この役はなかなか不利な役であると感じるが、美都里(YOU)も最初はいやな人に見えたが最終的にはすごく良い人になっていたので、まだまだわからない。
そんな雪衣に算太が夢中になっているが、彼女の瞳は勇にしか向いていない。
勇は雪衣の心を知ってか知らずか、安子への想いに決着をつけようとしている。そんな彼にひとつのきっかけを作るような出来事が……。大阪の進駐軍から野球部と試合の申し込みが来て……。

勇と安子もお似合いだと思うのだが、気になるのはロバート(村雨辰剛)。お別れしたかと思ったら、また定一(世良公則)のカフェに現れる。大阪勤務でときどき岡山にも来ていると言い、定一の店の常連になっていた。
「わしの復興まで見届けなくていいんだ」と定一。健一(前野朋哉)の消息まで探してくれているというどこまでも良い人なのだった。でもこの人が大阪あるいはアメリカに帰らずまた安子の前に現れるということはなんらかの展開ありと思わざるを得ない。やたらと思わせぶりな雪衣と、真意は見えないロバートの存在にもやもやする。
第33回は、嵐の前の静けさという感じであろうか。
(木俣冬)
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番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami