朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第11週「1962-1963」

第51回〈1月13日(木)放送 作:藤本有紀、演出:泉並敬眞〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第51回 求め合い、惹かれ合い、同じ夢を見るるいとジョー
写真提供/NHK

※本文にネタバレを含みます

※朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第52回のレビューを更新しましたらTwitterでお知らせしています


海でダブルデート

るい(深津絵里)ジョー(オダギリジョー)トミー(早乙女太一)ベリー(市川実日子)がダブルデート。行き先は海! さすがお金持ちのお坊ちゃんらしいトミーはおしゃれな車を出して(ナンバーが「1031」=トミー)、4人で出かける。「なんでこないなことになっとるんじゃろうか」とるいは戸惑い気味だが……。


【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜51回掲載中)

トミーはベリーにジョーとデートできると言って、るいにはベリーが自分に気があるらしいから付き合ってほしいと持ちかけて、連れ出すことに成功。でも本当の目的はジョーにコンテストに出る決意をさせることだった。それときっと、トミーがジョーにきついことを言ってしまったから仲直りしたかったのであろう。トミーのジョーに対する友情はなかなか熱いものがある。わざわざ、クリーニング店にるいを誘いにくるのだから。

この「なんでこないなことになっとるんじゃろうか」の経緯は、クリーニング店で、竹村夫妻(村田雄浩、濱田マリ)と映画館の西山(笑福亭笑瓶)山崎てる子(春やすこ)のおしゃべりのなかでわかる。この4人のコッテコテの会話がテンポがよくて押し出しが強くて揺るぎない。何がおかしいか内容には共感できなくても、その熱量に圧倒されて楽しい気分になる。

近頃の子はけったいな名で呼ぶ合うとてる子が驚くのだが、演じている春やすこは1961年生まれ、濱田マリが1968年生まれ、深津絵里は1973年生まれ、オダギリジョーが1976年生まれで、60年代と70年代という違いはあるものの、実はさほど年齢は変わらない。そこがお芝居の面白さである。

車酔いするジョー

ええ年して車酔いするジョー。この「ええ年」がオダギリジョーの実年齢で考えると、小学生のように小さくうずくまる姿がよけいにお気の毒に見えて効果的だ。

ベリーにジョーの介護を任せ、トミーはるいとふたりきりに。
話が違うと戸惑うるい。

ジョーはベリーにキツイことを言ったことを謝罪する。一瞬険悪になってもすぐに仲直り。みんないい人ばっかりでホッとする。

トミーはるいにジョーにコンテストに出てほしいという話と、ジョーの生い立ちを、それゆえにトランペットが大事すぎて、優劣の結果を出すことを恐れていると語る。そして、ベリーを車に乗せて、ジョーとるいをふたりきりにする。

「あのふたりは共鳴しあってんねん」
「楽器と楽器が、音と音が響き合う。求め合う。惹かれ合う。そして同じ夢を見るんや」

文学的なセリフを吐くトミー。さすが秀才。彼も若干、るいに気が(雉真のお嬢さんだから)あったようにも見えたが、さっさと諦めて、それよりもジョーの才能のためにるいが必要だと思って行動する。
極めて合理的な人物である。ベリーはベリーで、ねちねちしないし、自分の恋が実らなくても、決していじけない。トミーもベリーも湿度が高くなくて気持ちいい。

「ベリー、僕と共鳴せえへんか」とトミーに言われたときのベリーのにやりとした顔がいかしていた(「いかす」も「アベック」的死語)。



その頃、ジョーとるいは海を見ながら、同じ夢を見ていた。そこは奇しくも「旭海岸」で、岡山の旭川と同じ「旭」がついている。

アメリカを思うるいとジョー。るいはアメリカにいる母を、ジョーは憧れのルイ・アームストロングの国・アメリカでいつか演奏したいと夢見る。それはまるで、るいの父・稔(松村北斗)の抱いた、アメリカで仕事をして、言葉や文化の壁を超えていきたいという夢のようであった。るいもまた、母・安子(上白石萌音)と同じく国境を超えた大きな夢を見る人物に心惹かれるようである。

余談だが、勇(村上虹郎)も野球でアメリカに勝つのではなく、アメリカに行って野球をしたいという夢をもっていたら安子の心も動いたかも?

「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」を口ずさむジョー。るいも続く。
まさに、ふたりの音と音が響き合い、惹かれ合い、同じ夢を見ている瞬間だった。ただ、るいがひとりで海を見ているときは帽子をとっていたが、ジョーが来た途端、帽子をかぶってしっかり前髪で額を抑えるところに女ごころを感じる。

こうしてジョーはコンテストに出る決意をする。それだけでも一大決心かと思うが、さらにジョーはるいに思いがけないことをーー。のんびりしていた展開が一気に転がりだす???
(木俣冬)

『カムカムエヴリバディ』をさらに楽しむために♪




【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る

番組情報

連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ

2021年11月1日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
編集部おすすめ