今回のニュースのポイント


建設業でAI・データ活用が本格化:清水建設は日立ソリューションズの支援のもと、iPaaS「Workato」を導入しました。1,000種類以上のコネクターを活用し、社内に分散する多様なシステムを統合するデータ利活用基盤を構築しています。


「裏側業務」の自動化を加速:現場の機械化だけでなく、バックオフィスやサポート部門の業務プロセスを大幅に自動化します。メール解析からチャット通知まで、業務全体のデジタル化を推進します。


社員による「内製開発」を重視:専門エンジニアだけでなく、業務部門の担当者が自らノーコードで自動化フロー(レシピ)を作成できる体制を整え、現場主導のDXを実現します。


中期DX戦略に基づく人財育成:2026年度までにデジタル活用人財を2,000人以上育成し、DXコア人財120人を全社に配置する計画を掲げ、構造転換を急いでいます。


 建設業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の変化は、現場の重機が自動で動くといった目に見える機械化だけにとどまりません。これまで紙ベースのやり取りや属人化したノウハウに支えられてきた「裏側の業務プロセス」そのものが、今、変化が進み始めています。


 清水建設は、同社が進める「中期DX戦略〈2024-2026〉」の一環として、日立ソリューションズの支援のもと、あらゆるデータ連携や自動化をワンプラットフォームで実現するiPaaS「Workato(ワーカート)」を導入しました。これにより、SaaSやオンプレミス、社内向けに導入している生成AIアシスタントなど1,000種類以上のコネクターを介して、社内システムや外部データをワンストップで連携できる高度なデータ利活用基盤を構築しました。


 具体的な取り組みとしては、システムメンテナンスの通知メールを生成AI(LLM)で解析し、その緊急度に応じて担当者へチャットで自動通知する仕組みなどが実装されています。建設業はプロジェクトごとに条件が異なる「一品生産」のため、膨大な図面や見積り、調整業務が属人化しやすい傾向にありますが、こうしたバックオフィス領域での自動化により、人がシステムを動かすのではなく「システムが人をサポートする」業務フローへの移行が始まっています。こうした清水建設の取り組みは、現場の機械化だけでなく、業務プロセスや組織を横断的にデータとAIで作り替える「次世代DX」の一例だと言えます。


 今回のDXの大きな特徴は、社員自らがノーコード・ローコードツールを活用して「自分たちのためのDX」をつくり上げる「内製開発」の推進にあります。

中期DX戦略〈2024-2026〉では、デジタル活用人財を3年間で2,000人以上育成し、さらにDXコア人財120人を全社に配置する計画が示されています。Workatoにおいても専門のエンジニアだけでなく、業務部門の担当者が自ら連携フロー(レシピ)を組み上げることを重視しており、現場の細かなニーズに即した迅速な改善が可能となっています。


 なぜ今、これほどまでに徹底した効率化が必要なのでしょうか。建設就業者数はピーク時から大幅に減少し、若年層の確保も困難になるなか、従来のような「人を増やして対応する」モデルは限界を迎えています。清水建設は、生成AIアシスタント「Lightblue Assistant」の全社導入を進めており、すでに数千人規模の社員が活用する段階にあります。デジタル活用で働き方を維持するための必須インフラと位置づけ、定型的な業務プロセスを大幅に自動化することで、労働環境を改善し、事業を継続・成長させる構造への転換を急いでいるのです。


 こうした「すべてをデータ化し、AIで最適化する」動きは、他産業とも共通しています。自動車業界で日産自動車が「ソフトウェア・デファインド・ビークル」で車を再定義し、製造業でソニーや村田製作所が現場の情報を意識的にデジタル化してクラウドで管理するように、建設業でも設計図やコスト、不具合情報などをデータ統合するための取り組みが進んでいます。かつては現場の腕前こそが最大の武器でしたが、今やその背後で動くデータ基盤とAIの活用能力が、業界を勝ち抜くための新たな競争軸となっています。


 清水建設の挑戦は、建設業が「現場での施工能力」だけでなく、「業務プロセスをいかにデータ化し、自動化できるか」という次世代DXの巧拙によって評価される時代へ移行したことを示しています。今後、見積りや工程管理、さらには保全業務など、より広範な領域で自動化が進めば、人間の役割は高度な判断や顧客対応へとシフトしていくでしょう。建設業のビジネスモデルそのものが、データとシステムを核としたインテリジェントな産業へとアップデートされ続けています。

(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)

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