前クールで高視聴率を獲得したTBS日曜劇場『ドラゴン桜』と、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』。そんな2つのドラマで目を引く同学年の2人の女優がいる。
南沙良と蒔田彩珠、次代を担う彼女たちの魅力とは?

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『ドラゴン桜』の最終回は、”2005年版”に生徒役で出演していた新垣結衣や紗栄子がサプライズ登場したことで盛り上がったが、その顔ぶれに『ドラゴン桜』が若手俳優にとっての登竜門ドラマであることに改めて気づかされた。

“2021年版”で未来のスターとして輝くだろうと想像されたのが南沙良だ。彼女が演じた早瀬菜緒は、挫折したスポーツエリートでもなく、他界した両親が残した借金に苦しんでいるわけでもない、「イマドキ」の普通の女子高生だ。

いつも笑顔だが、飽きっぽい性格の早瀬が本気で勉強に向き合う姿が、多くの視聴者の共感を呼んだ。時に、物語の進行をスムーズにした「狂言回し」の役割も担った。最終回で「東大に落ちたが、実は青山大学に受かっていた」というくだりも、切り替えの早い早瀬らしい名シーンだった。

本来は「内気で殻に閉じこもりがちな性格」という南だが、「自分の中の一番明るい部分を引っ張り出して」カラッとした性格の早瀬を違和感なく演じている。2018年かはらポッキーのイメージキャラクターを務めていることもあり“第2のガッキー”と言われたこともあるが、確かに南の陰から陽にスイッチできる能力は新垣結衣を彷彿とさせる。

東日本大震災から10年という節目の年に宮城と東京を舞台に描かれる『おかえりモネ』は、朝ドラとして久しぶりの現代モノとなるため放送前は不安視する声もあったが、安達奈緒子が執筆する繊細な脚本で「良作」と評判になっている。『おかえりモネ』で注目したいのは、主役の永浦百音(清原果耶)の妹・永浦未知を演じている蒔田彩珠だ。

快活な性格の百音と対照的に、未知は堅実派。家業である養殖業を継ぐために勉強に励んでいるが、焦りや頑固な性格から父親(内野聖陽)や祖父(藤竜也)と衝突することもある。
百音は震災が発生した「あの日」の想いを抱えながら、別の土地で自分の道を見つけようとするが、未知は生まれた土地で「あの日」を乗り越えようとしていた。

蒔田はクールに見えながら、その眼差しに強い意志を感じさせる演技で「みーちゃん」として生きている。『三度目の殺人』『万引き家族』と是枝裕和監督に連続して起用された彼女が醸し出すリアリティに、視聴者は思わず親目線で見守ってしまう。

南沙良と蒔田彩珠の2人が交わったのが2018年に公開された映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』だ。志乃(南沙良)は吃音のため人前で上手くしゃべることが出来ないが、美しい歌声の持ち主。その歌声に魅せられた加代(蒔田彩珠)は、志乃を誘ってバンド活動を始める。しかし、「お調子者」ゆえにクラスから浮いていた菊地(萩原利久)が加入することで関係性が変化する……。

特殊な状況のように見えるが、誰もが抱えるコンプレックスや劣等感、10代の移ろいやすい心、変えようと動いても続いていく日常が描かれているため、普遍的な青春映画になっている。監督は、『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』など乃木坂46のMVを手掛けている湯浅弘章だ。溶けたアイスが落ちる描写は、『あの日 僕は咄嗟に嘘をついた』と共通している。

蒔田は、「みーちゃん」と同様にクールで意志が強い加代の表面張力ギリギリになっても溢れない感情を見事に演じている。一方、吃音で想いを口に出せない志乃を繊細に演じた南は、終盤、涙と鼻水を流しながら想いの丈を叫ぶシーンで感情を爆発させる。
このコントラストが、2人を魅力的な女優に見せた。
志乃と加代が歌う『青空』をバックにキラキラと輝く日々は、あまりにも自然で、蒔田と南の青春も重なっているように見える。またいつか2人が共演して、青春の続きを見せてくれることを願ってやまない。

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