10月30日(土)、NGT48が新潟県・朱鷺メッセで昼夜2公演の単独コンサートを開催した。名だたるアーティストがコンサートを行ってきた同所にNGT48が立つのは実に3年半ぶりのこと。
「今回こうして立たせていただいた意味はすごく大きかった」そう語るのは創成期からグループを支えてきた1期生の西潟茉莉奈だ。12月に発売される7thシングルでセンターを務める2期生の小越春花とともに話を聞き、改めてあのコンサートの意味を考えてみた。

【写真】締めは『Maxとき315号』、NGT48単独コンサートの模様【7点】

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 先月30日、新潟県・朱鷺メッセのステージにNGT48の全メンバー28人が立った。同会場は、大規模な展示場、大小13の会議室、ホテルなどが一体化した複合型施設であり、コンサート会場として使用されることでも知られている。

 NGT48が朱鷺メッセに立つのは、約3年半ぶりのことだった。前回は北原里英の卒業コンサートだった。2015年、AKB48のメンバーだった北原は、「新潟の女になります」と宣言して、NGT48に完全移籍。3年の活動をつとめ上げたのちに卒業をするという晴れ舞台だった。

 あれから3年半。この間、NGT48は朱鷺メッセでのコンサート開催を諦めていたフシがある。1期生の西潟茉莉奈はこう語る。

西潟「もう二度と朱鷺メッセには立てないと思っていました。
すごいアーティストさんがコンサートを開く会場ですから。だからこそ、今回こうして立たせていただいた意味はすごく大きかったです」

 2期生の小越春花は、コロナ禍のため1席置きではあるものの、満員に埋まった(昼・夜ともに3000人=主催者発表)の客席を見渡して、感慨にふけっていた。

小越「私は(昼の部の)1曲目からセンターで歌わせていただきました。2期生の私はそもそもコンサートの経験が少なくて、これが人生で2回目のコンサートでした。しかも、新潟では初めてのコンサートです。どれだけのお客さんが来てくださるのか、不安でたまりませんでした。でも、1曲目でステージに出ると、そこに広がっていたのは夢のような景色でした。これだけのお客さんが集まっている景色は人生で初めてでしたし、そこに自分がセンターとして立っている。それだけじゃなく、トロッコに乗って、ファンの方に手を振りながら会場を移動している。そう思うと、なんだか涙があふれてきました。ファンの方の前で泣くなんて、初めてのことでした」

 昼の部は「NGT48単独コンサート」として行われた。セットリストのほとんどはNGT48 に縁のある楽曲で埋め尽くされていた。


 コンサートのリハーサルは、9月の下旬から始まっていた。

西潟「でも、ゆとりを持ってステージに立ったかというと、そうでもありませんでした。他にお仕事があるメンバーもいますし、『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』の練習もありました。リハーサルの仕上げの時期には、次のシングルのMV撮影も入ってきました。NGT48 に入ってから、一番と言っていいくらい忙しかったです」

 1期生にとって、昼の部はすでに踊り慣れた曲が多かったが、2期生にとっては未経験の曲だったりもした。そうなると、全体のリハーサルと個人練習で固めるしかない。

 個人的に「単独コン」の見どころは、1期生とドラフト3期生と2期生がどう融合しているか、だと思っていた。加入時期が異なるため、活動もプライベートもそれぞれのカテゴリーでまとまる傾向があったからだ。融合していないならば、全員で単独コンを開く意味は半減する。

西潟「1期生と後輩の間には、お互い変な遠慮や壁がありました。でも、その壁を壊さないといいものを作ることができませんから、リハーサルがいい機会になると思っていました。2期生は積極的に『ここの振りってどうするんですか?』と話しかけてくれて、壁は日に日になくなっていきました」

小越「私が意識していたのは、このコンサートは先輩が連れてきてくれた場所ではあるけど、それだけじゃなくて、私たち後輩が新しい時代を作っていくんだという意気込みを見せることでした。
先輩が作ってくれた線路をただ歩いているだけじゃなくて、もっと広い世界に飛び立てませんから。そのためには、リハーサルの時点で2期生みんながその気持ちを共有しないといけないと思っていました」

 ある日のレッスンでのこと。ドラフト3期生と2期生は輪になって話をした。

小越「まとめてくれるのは、真下華穂ちゃんです。最年長ということもあるし、お話が上手なので、みんなの意見を聞いたり、自分の意見を話したりしてくれました」

 アイドルは、とにかく踊れないと話にならない。それを公演やコンサートで披露して、ファンに真価を問う。キャリアを積めば積むほど、踊れる曲は増えていく。キャリアが浅い者の踊りは、ややぎこちなかったりもする。先輩と後輩の差はそこにある。だが、この日はそこまで大きな差を感じることはなかった。

小越「ドラフト3期生と2期生の中でダンス担当は安藤千伽奈ちゃんです。人一倍パフォーマンスを大事にしているメンバーです。
先輩に積極的に質問することで、みんなに正しい振り付けを広めてくれました」

 後輩だけではなく、全体での話し合いもあった。

西潟「コンサートをする上で一番大事なのは、気持ちを揃えることだと思います。ダンスの先生のアドバイスもあって、みんなで話し合いをすることになりました。そこでは、朱鷺メッセに立てることのありがたさ、荻野由佳ちゃんのおかげもあって、このステージに立てることへの感謝などが話に出ました。私は、『応援してくださる方がいて、コンサートは成り立っている。それを忘れないようにしよう』と言いました」

小越「その話し合いは気持ちを揃えるために、とても大事な時間になりました。その話し合いの場以外でも、先輩はいろいろなことを教えてくれました。本間日陽さんは、本番を意識しながらリハーサルに取り組むことが大事なんだと話してくれました。山田野絵さんは、リハーサルからカメラやファンの方を意識していて、さすがだなと思いました」

 本番中、メンバーは踊っている周囲の雰囲気から何かを感じることがある。西潟もそれを嗅ぎ取っていた。

西潟「リハーサルの時点では、まだ出し切れていない部分があるものなんです。でも、ステージに立ったメンバーはみんな楽しそうな顔をしていました。
応援してくださる方の前だと、楽しさが倍になるんです」

 アンコールも含めると、全29曲を歌った。NGT48らーめん部による『ラーメンワンダーランド』、中井りかプロデュースの4人組CloudyCloudyの『はっきり言って欲しい』といったユニット曲もあれば、『青春時計』『シャーベットピンク』といったシングルもあった。締めはグループの代表曲『Maxとき315号』だった。2021年秋時点のNGT48が詰まった、ショーケースのようなコンサートだった。

 2時間20分ほどの演目を終えると、メンバーの顔にようやく安堵が戻った。しかし、数時間後には夜の部が控えている。功労者・荻野由佳の卒業コンサートだ。メンバー一同、すぐに気を引き締め直した。

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