乃木坂46の佐々木琴子は、その古風な響きの名前の通り、NHKの朝ドラに出演してもおかしくないような正統派美少女でありながら、中身は(敬意をこめて)ぽんこつというキャラクターで、2期生の中でも注目度が高い存在だ。そんな彼女だが、最近ではアンダーライブをはじめとした経験を通して変化し、また、別の面も見せはじめている。
小学生の頃の琴子は、寝ることが好きな少女だった。夢の中では、現実世界で起こりえないようなことだって可能にできる。目が覚めると、夢の最後シーンだけが脳裏に残って「何かすごいことをした」という感覚があった。中学生になると、兄の影響でアニメを観るようになっていく。『銀魂』や『HUNTER×HUNTER』、『マギ』の現実にはありえないストーリーにのめり込んでいった。 琴子は『マギ』のエンディングを歌う乃木坂46の存在を知って、従来のアイドルらしくないメンバーたちに惹かれていく。友達のお母さんの勧めで、乃木坂オーディションを受けた琴子。オーディションが進むうちに、乃木坂46に入って「生きた証を残したい」という気持ちが出てきたという。胸の内に「このままの生活を送っていたら、私が生きていた証拠がないんじゃないか」と思いがあったのだ。鈴木絢音のかわいさに「私は落ちるな……」とも思ったが、合格の報せを受け、乃木坂46に2期生として加入することになった。 歌もダンスもやってこなかった琴子は、うまくリズムがとれなくてダンスに苦戦する。「次の振りはなんだっけ」と考えると、手足の力が抜けてしまうのだという。
毎日のように涙を流したが、「辞めよう」とは思わなかった。 昨年6月からアンダーライブがはじまると、2期生のお母さん的存在の伊藤かりんから助言を受けつつ、家に帰れるギリギリの時間まで居残り練習をする日々。琴子は努力だけを続けていた。1期生の実力派である中田花奈や中元日芽香も「琴子はがんばり屋」と陰の努力を認めていた。 10月のアンダーライブセカンドシーズンでは、公演を繰り返していくうちに余裕が出て、「こなす」じゃなくて「楽しむ」ことができるようになったという。そのパフォーマンスは目に見えてよくなっていった。「顔が死んでる」と言われていた表情も、気づけば自然な笑顔を浮かべることができるようになっていた。 12月に有明コロシアムで行われたアンダーライブファイナルでは、全員センターという試みが行われたが、その締めとなる『ガールズルール』では琴子がセンターを務め、真ん中に置かれたことで持ち前の華が引き出された。各メンバーが歌う曲は完全にガチンコのクジ引きで、構成の関係で琴子が全員センターのトリになったという。 琴子は〝持ってる〟アイドルなのだ。同月に行われた、アルバムの販促として各CDショップの応援メンバーを決めるドラフト会議では、広島のフタバ図書に選ばれた4人のうちイベント出席者が琴子だけだったため、ニコ生での中継では自然と目立つことになったのも〝持ってる〟エピソードのひとつ。(その後、フタバ図書はサイトなどで佐々木琴子を激推しすることになる) 今年1月に発表された11thシングル『命は美しい』選抜には、研究生だった相楽伊織が入ったが、「11枚目の曲に合っていたから」と割り切りつつ、悔しさと羨ましさを認めていた。
伊藤かりんによると、琴子は「ああ見えて負けず嫌いで、前に出たい気持ちはちゃんと持っている」のだ。また、未熟ながらも成長している実感はあったが、研究生という立場が変わらないことにもどかしさも感じていたという。 そして、2月22日に西武ドームで行われたバースデーライブで琴子を含む6人の研究生が正規メンバーに昇格することが発表される。ここからが本当の意味でのスタートだ。 気がつけば、「アニメの話題だけ饒舌になる」「普通にジャージで電車に乗る」「ブログで友だち99人を募集して抽選で決める」「めんつゆを薄めて飲むのが好き」といった言動から、琴子には「他人と違う」個性があることが周りに知られるようになっていた。だが、「琴子ワールドがある」という評価には、「あぁ、そうなんだ」とサラッと流す。みんなと何が違うのかはわからないという。琴子はただ自然体なだけなのだ。 かといって、決してドライというわけではなく、むしろ「情が深いのでは」と思わせる面もある。アンダーライブセカンドシーズンでは、怪我で前半の公演に参加できなかった山﨑怜奈を、ステージ上で自然な形でフォローした。昇格組6人の対談を取材した時は、自身の個性を聞かれて答えに窮する鈴木絢音と渡辺みり愛に、さりげなく助け船を送る場面もあった。不器用そうに見えて、仲間のピンチにはサラッと優しさを差し出せるのは、彼女の魅力なのかもしれない。
取材時に「1期生は琴子さんの努力を認めてますよ」と伝えた時、ふいに涙を流したこともある。今年4月に開催されたアンダーライブサードシーズンの2日目。ライブの最後にセンターの中元日芽香が、「2期生は最初のアンダーライブの『バレッタ』で下ばかり向いてたのに、今はキラキラしながら『ボーダー』を歌っている」、そんな話をすると琴子は感極まって真っ先に泣いてしまった。 そのアンダーライブサードシーズンでは朗読のコーナーがあり、琴子は「乃木坂に入る前は自分の名前が嫌いだったが、ファンの方に『名前と雰囲気が合ってるね』と言われるようになって、自分を理解して好きになった」という主旨の発言をした。彼女は少しずつ自分のことがわかりはじめてきている。 6月からはじまる舞台『じょしらく』で、琴子はまた新しい自分を見つけるはず。まだ夢と現実のボーダーを走っている状態なのかもしれないが、琴子という名の希望が、古い地図を書き換える日がいつか訪れることだろう。大貫真之介 アイドルとお笑いを中心に執筆。乃木坂46写真集『乃木坂派』、『EX大衆』、『TopYell』、『日経エンタテインメント』、『an an』アイドル特集号、などで乃木坂46のインタビュー記事を担当した。
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