インドネシア・ジャカルタ拠点のJKT48、タイ・バンコク拠点のBNK48、フィリピン・マニラ拠点のMNL48、台湾・台北拠点のAKB48 Team TP、中国・上海拠点のAKB48 Team SH、ベトナム・ホーチミン拠点のSGO48……と国内のみならずどんどん海外に広がっていくAKB48グループ。今後はインド・ムンバイを拠点とするMUM48の結成も発表されている。
今、世界で各グループはどんな動きをみせているのか? 海外姉妹グループが大躍進した2018年を振り返るとともに、2019年の動向を占う。

2018年、平成最後の年。この1年は48グループの歴史を語る上で、とてつもなく大きな1年となった。それは先日のNMB48山本彩の卒業、向井地美音次期総監督の誕生、HKT48指原莉乃卒業発表……はもちろんのこと、「海外姉妹グループの躍動」という新たな1ページを加えたからだ。

大きなトピックだけをさらっても、「世界選抜総選挙」と題し、海外姉妹グループ初参加大会となった第10回記念の選抜総選挙(6月16日)、昨年末開催の「第69回NHK紅白歌合戦」では、AKB48がBNK48と共に『恋するフォーチュンクッキー』を披露と、今や日本のお茶の間にも届きうる存在となりつつある様子だ。

海外展開の意義について、プロデューサー秋元康氏はかつて、NHKのドキュメンタリー番組『追跡!AtoZ』にて、こう語った。

「これからのコンテンツはどれだけ見たことがないものか、濃いものが強い。濃ければ濃いほどフォーマットは世界に広がる(中略)。(海外の)見る方は、日本からやってきた“アイドル”とはなんだろう?と(思うだろう)。僕はクリエイターとしてそこの出会いが面白いと思った」

つまり「大所帯アイドルグループ」という日本独自のコンテンツは、世界の娯楽に穴をあける存在だと。氏の目論見はまさに的中。2011年にインドネシア・ジャカルタで発足した初の海外姉妹グループ「JKT48」が国内で爆発的な人気を誇り、インドネシアの芸能シーンを変えるまでのシンドロームを巻き起こした。
48という独特のスキーム、メンバーたちが織りなす“個々のドラマ”は、海外エンタメ市場に一石を投じたのだ。

今年1月27日には、AKB48と全海外グループの計7グループが集う一大イベント「AKB48 Group Asia Festival 2019」をタイ・バンコクで開催。このイベントを皮切りに、国内外での存在感をさらに高めつつある海外姉妹グループ。ここからは、各グループの動向を追っていきたい。

まずは2016年3月に発足が発表された、BNK48、MNL48、TPE48の3つに触れていこう。



「BNK48」は、この1年の海外姉妹グループの勢いの象徴となった。

彼女たちの人気を不動のものとしたのは、2017年12月に発売された2ndシングル『Koisuru Fortune Cookie』(『恋するフォーチュンクッキー』)の存在だ。ポップなサウンドとキャッチーなダンスで、発売直後から老若男女を巻き込み爆発的なバズを起こす。その勢いはとどまることを知らず、2018年4月にはオフィシャルMVのYouTube 再生数がなんと1億回を突破という偉業を達成。その勢いを象徴するように初のコンサート「STARTO」は、チケット即完、5000人収容の会場が連日超満員と、これまでの活動が見事実を結んだ形となった。

BNK48旋風は市民だけでなく、タイ王族まで巻き込む。さる5月、若者向け音楽ライブにゲストとして登場したウボンラット女王が、壇上で『恋チュン』を披露したのだ! 国民はおろか王族をも巻き込む熱量、まさにBNK48が文字通り「国民的アイドル」になったことを証明した瞬間であった。


タイ国内だけでない、日本でもBNK48の存在は大きな爪痕を残す。世界選抜総選挙ではBNK48から10名が参加。本開票でエース格のミュージックが72位、キャプテンのチャープランが39位にランクインと、海外出身メンバー初の快挙を達成。2018年8月4日には「TOKYO IDOL FESTIVAL2018」に出演。チャープラン、ミュージック、2017年7月にAKB48から完全移籍を果たした伊豆田莉奈を含む6人がお台場の地に降り立ち、大いに盛り上げた。日本のファンたちも彼女たちの勢いを肌身で感じたはずだ。

現在メンバーたちは、本国でCM、テレビ、映画に引っ張りだこの状況だ。2019年1月26日にはBNK48にとって初の総選挙イベントを、タイ最大のイベントホールで開催。今やタイを飛び出し「世界のBNK48」へと羽ばたこうとしている。



フィリピン・マニラを拠点とした「MNL48」はマイペースな活動を展開中だ。

2016年12月の1期生オーディションを開始すると、フィリピン最大のテレビ局「ABS-CBN」と提携が決定。同局の音楽番組『It’s Showtime』を通じた大々的な宣伝も相まって、なんと4134名もの応募者が集まった。
いくたびもの審査を経て、最終審査に残った72名の1期生「候補者」が決まり、そこから「選抜」「アンダー」「研究生」を振り分けるという48グループ初の試みでメンバーを選出。正規生48名、研究生19名の計67名の1期生がお披露目された。

9月に1stシングル『Aitakatta Gustong Makita』(『会いたかった』)、12月1日には2nd『Pag-Ibig Fortune Cookie』(『恋するフォーチュンクッキー』)と、コンスタントにリリース。またYouTubeにて「MNL48 I-School」(初期『週刊AKB』スタイルのバラエティ)を定期配信と、着実に活動の幅と気の輪を広げ続けている。

一方、TPE48(現AKB48 Team TP)は、一筋縄ではいかない道を歩み続けた。

発足以来、長年全く動きがなくファンをやきもきさせ続けてきたTPE48。ところが、2017年秋口にオーディション開催を皮切りに12月1日にAKB48阿部マリアの完全移籍と動きが慌ただしくなる。2018年2月4日には1期生、45名の合格者が決定。3月より、いよいよ本格的始動!……と思われたのも束の間、待てども目立った展開を見せず、気が付けば6月を迎えていた。なんとその裏で、運営会社による資金面のトラブルが発覚。デビュー自体が危ぶまれるという危機に直面したのだ。

暗雲立ち込める中、彼女たちに救いの手が差し伸べられた。
7月30日に他会社へライセンスを移し、新たに「AKB48 Team TP」として再スタートを切ると発表。後日転籍したメンバー35名が改めてTeam TPの1期生として披露された。この日集まったファンたちに配られた記念ポストカードには「本当に会いたかった♡」という言葉が台湾語と日本語で記されていた。ファンはモチロン、メンバーもこの日を心より待ち望んでいたのだ。

12月8日開催の「Cool Japan Festival」出演、12月25日に待望の1stシングル『勇往直前』(『前しか向かねえ』)をリリース。まさに「前しか向かねえ」精神で加速度を増してきたTeam TP。来年こそはより強く羽ばたくことだろう。



2018年末から本格始動した新星2組も独自の歩みを始めた。

上海を拠点とする「AKB48 Team SH」は4月10日に1期生オーディションを開催。8月8日に1期生、23名が公開された。その後の活動展開も目覚ましく、12月3日には1stシングル『LOVE TRIP』を配信リリース(全編東京ロケで撮影されたMV、監督はAKB48グループの映像作品を手掛けてきた高橋栄樹)、資生堂やファッションブランド「JUNKO KOSHINO」といった大企業とのタイアップも決定と、期待の高さをうかがわせる。

そして、現在最新の姉妹グループである、ベトナム・ホーチミンを拠点に6月21日に結成発表がなされた「SGO48」(SGO=サイゴン)は、11月17日に1期生29名が披露。
翌18日にハノイで開催されたイベントにてAKB48チーム8と共演を果たす。まだ目立った動きはないが、先輩たち同様これからの活躍が大いに賑わしてくれることだろう。

各国で新たな胎動が起こる中、結成7年、海外展開の嚆矢(こうし)となり今やインドネシアの国民的アイドルに成長したJKT48も、2018年新たな局面を迎えた。

まず3月17日に、常に前向きな姿勢もJKT48メンバーに大きな勇気を与えた元AKB48の近野莉菜の卒業公演が行われ、約10年に渡るアイドル人生(JKT48としては約4年活動)に終止符を打った。

そして3月24日に1期生、メロディの卒業記念コンサートを開催。これまでエースとして、キャプテンとして、さらには支配人として、JKT48を国民的アイドルに押し上げ支えてきた彼女の卒業は、JKT48が文字通り第2章へと、本格的な歩みを進めることを意味していた。

メロディは卒業後、JKT48のゼネラルマネージャーに就任。すると「JKT48 Re:Boost」と題した改革案を発表。劇場を飛び出しての都市部でのライブ活動の活発化、アイドルとしての基礎を育成するための学校「JKT48アイドルアカデミー」の開講など、新機軸を打ち出していく。2018年11月に卒業を発表した総キャプテン、シャニアの「若い子たちが新しい JKT48 を作ります」の言葉の通り、インドネシア一番のアイドルグループは、装いも新たな姿と形を見せていくはずだ。



そして2018年一番の衝撃を与えたのは、48グループ×韓国アイドルという夢の企画「PRODUCE48」だ。

2017年11月29日、世界的なアイドル産出国である韓国国内でも、絶大な人気を誇る視聴者参加型サバイバルオーディション番『PRODUCE101』と48グループとのコラボ企画「PRODUCE48」の開始が発表された。


48グループメンバーからの参加申請受付開始し、極秘裏にオーディションが進み日韓合わせ96名の候補者が集い、4月11日に「PRODUCE48」の撮影がスタート。そして6月15日、運命の本放送が始まる。

シビアな韓国プロデューサー陣と視聴者の審査、韓国側の候補者のスキルの高さを前に有名メンバーたちですら涙を流す中、竹内美宥といったスキルに自信を持つメンバーたちが躍動し、愛嬌を武器にヒリついた空気を和ませ続けたAKB48中西智代梨、NGT48山田野絵がマスコット的人気を博すなど、番組を通して魅力を開花させるメンバーが続々登場。笑い、涙、韓国側候補者との友情と、回を重ねるごとに目が離せないドラマを展開し続けた。

8月31日の最終話。日本からはAKB48チーム8の本田仁美(9位)、HKT48の宮脇咲良(2位)、矢吹奈子(6位)の3名がデビューメンバーとして選ばれる。また、グループ名が「IZ*ONE」に決定、本格的に活動を展開していく。

10月29日に待望のデビューミニアルバム『COLOR*IZ』をリリース。日本を始め、アジア、南米の計12カ国のデジタル音楽チャートで1位を獲得。まさに世界基準のアイドルグループであることを証明する結果を残した。

9月末、宮脇、矢吹、本田の3人はIZ*ONE の活動に専念するため、2021年4月まで48グループでの活動を休止すると発表。これには寂しい想い抱いたファンも多いだろう。しかし、IZ*ONEの活動規模は日を増すごとに広がり続けており、今年2月6日にはシングル『好きと言わせたい』で待望の日本デビュー。IZ*ONEの活動を通し、成長する3人の姿はさらなる楽しみをもたらしてくれるだろう。

駆け足で振り返ってきたが、海外姉妹グループいずれも面白い展開を見せている。近日誕生予定のインド・ムンバイを拠点とした「MUM48」も含め、さらにその輪を広げ続ける48グループ。全世界を48グループが席巻するという、ともすれば夢のような話も、現実味を帯び始めてきた。 
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