田村 雑誌のインタビューなんて久しぶりだな~。何だかこの感じが懐かしいです。
──アンジュルムを去ってから2年以上経っていますからね。知らない人もいると思うので、卒業した経緯から説明をお願いします。
田村 高校生の年齢になったことが、自分の中ではすごく大きかったんですよね。というのも私は宝塚が大好きなんですけど、宝塚音楽学校って15歳から入れるんですよ。つまり私と同い年の人が毎日、歌やダンス、お芝居などに真剣に取り組んでいて。そのことに焦りを覚えたんですよね。いずれはミュージカルの道に進みたいと思っていたし、だったら決断するのは今しかないなと卒業を決めました。
──アイドルを卒業しても、もともといたアップフロントに残りながらミュージカルの道を目指すという選択肢もあったそうですが。
田村 ありました。だけど、私はそこに甘えたくなかったんです。本当にイチからスタートしたかった。ハロー!プロジェクトの環境は恵まれていて、コンサートなどの活動の他に定期的に関連の舞台に出ることもできるし。だけど私はあえて厳しい道を選ばないと、自分がダメになる気がしたんです。
──そして、女優復帰宣言をしたのが2017年の1月。空白の期間が8カ月近くありましたが、その間は何をしていたんですか?
田村 ひたすらレッスンをしていました。しっかりとした実力をつけたかったので。ボイトレ、ソルフェージュ……。ダンスも今まで踊ってきたジャンルに加えて、バレエスクールで基礎を勉強しようと2つ並行して通っていました。ただ単純に大好きなんですよね、レッスンすることが。先のことは何も決まっていなかったけど、特に不安はなかったんです。
──アイドル時代との違いに戸惑ったりもしましたか?
田村 もちろん違いはありましたけど、アイドルをやっていてよかったなと思いました。私ってミュージカル女優としては、かなり特殊なスタートの仕方をしたかなと。普通はミュージカルに必要な基礎をきちんと勉強するところから始まると思うんですが、私は「歌うことの楽しさ」とか「自分らしい表現」とか、そういったことをアイドルとして吸収した上でミュージカルの基礎を学んだ。この順番が自分には合っていたと思うんです。そもそも私はアイドルになる前、子役で舞台に上がっていたりもしていたんですよ。つまり〝舞台→アイドル→舞台〟の順番でここまで来ているんです。「アイドル活動は回り道しただけじゃないの?」っていう意見もあるかもしれませんけど、私からすると決してそういうことじゃなくて。すべてに意味があったと思っているんです。
──そして舞台「minako―太陽になった歌姫―」の主役に抜擢されます。これは、どういう経緯で決まったんですか?
田村 スマイレージやアンジュルムのMC監督としてもお世話になっていた野沢トオルさんが、この舞台の演出をされたんですが、「本田美奈子. 役は田村しかいないんじゃないか」って声をかけてくれたんです。
──田村さんの本田美奈子. リスペクトは有名ですもんね。
田村 それが、全然知らなかったらしいんですよ! それに今、所属している事務所の社長は美奈子さんのデビュー当時から一緒に歩んでこられた方なんですけど、社長も私が美奈子さんのことを小さい頃から尊敬していたことは知らなかったそうです。それなのに「あの田村っていう子がいい」と言ってくれたそうですからね。すごい偶然だと思いますよ。運命的というか。こんな再出発ができたことは、これ以上ない喜びです。
──実際に本田美奈子. 役を演じてみて、どうでしたか?
田村 当時は18歳だったんですけど、いきなり座長じゃないですか。周りは全員年上だし、その中でのプレッシャーはすごかったです。それと同時に美奈子さんをずっと尊敬していた私が美奈子さん役をするという喜び、そして恐れ多さ。それに歌に対する意識も決定的に変わりました。私は美奈子さんの歌が好きなんですけど、じゃあどこが好きなのかと言うと、一番は歌に対する姿勢。本田美奈子.役を演じさせていただくからには、歌のことを軽く見ては絶対にいけないし、表現することに真剣に向き合わなくてはいけない。
──完全実力主義の世界で「あの子、元アイドルでしょ? ちゃんと歌えるの?」みたいな偏見はなかったですか?
田村 自分では気づかなかったですね。でも、そう思われていたらむしろラッキーだと思います。最初から期待値が高い状態より、ナメられているくらいが気楽じゃないですか。「おっ、意外にやるね」って思われそうだし(笑)。歌には自信はあったんです。舞台のシーンで歌を披露する日なんて、みんなの口がポカーンと開くまで歌い上げてやろうと思っていましたし。ただ、実際の現場はいい人ばかりでしたよ。すごく優しかったし、全員で盛り立ててくれたし、「田村についていく!」っていう気持ちでいてくれたし。
──自分で感じられるくらいの手応えもあったんですね。
田村 ありました。でも、一番強く感じたのは「今、幸せだな」ってことですね。ファンの方に「待たせてごめんなさい」っていう気持ちもあったし、久しぶりにみなさんの前に出る喜びもあったし。だって、戻ってくることができるかも分からない状態で、「帰ってきます!」と言っちゃったわけですから。
──田村さんのファンも不安な気持ちだったかもしれません。
田村 見てくれているファンの方を心配させることは、このお仕事をやる以上、ダメだと思うんですよね。そういう意味でも、戻ってくることができてうれしかったです。
──ところでアイドルって、いつかは卒業していくものなんですかね。古巣のアンジュルムからは1期生でリーダーの和田彩花さんも来春卒業していきますし。
田村 どうなのかな。男性の場合だと、俳優とか他の活動を続けながらアイドルを続けるパターンも多いじゃないですか。だけど女性アイドルの場合はどうしてもグループの活動がメインになるから、他の活動をするチャンスも少なくなる。
──一方でミュージカルに対しては「やりきった」と思うことはないのでは?
田村 それは、分からない。私、飽き性だと思うんですよ。
──飽き性ですか?
田村 うーん、常に何かを追い求めているイメージなんですよ。以前は「ミュージカルだったら、自分なりの表現ができるはず」と思っていたんです。だけど、与えられた役を演じるということが大切で。もちろんミュージカルで演じることは大好きだし、やっていることに何の不満もないです。ただ「自分なりの表現を求める」という点に関してはミュージカル以外のジャンルでも挑戦したいと思うようになりました。それで、歌手として自分を表現する場所をいただいて。そして、おそらく女優としても歌手としても、今のままじゃ満足できなくなる日が来ると思うんですよ。
──典型的な天才タイプの発想ですね。自分で作ったものをブチ壊しても、進化しようとする。自分の興味がそっちに向いちゃうと、損得勘定で考えられなくなる。
田村 本当にその通り! 一生、自問自答をくり返すんだと思います。もちろん、これからもいろんなミュージカルやお芝居に挑戦していきたいですが、自分の表現の場も大切にしていきたいです。そして、私しか表現できない「田村芽実というジャンル」を作り上げていきたいと考えています。
──しんどい生き方ですね。その自分なりの表現を求める旅は死ぬまで続いていくんですか?
田村 終わりはないでしょうね、たぶん。少なくとも歌はずっと続けていくと思う。私が常に考えているのは、「どうしたら歌で人の心を動かせるのか?」っていうことなんです。本当にそのことばかり考えて生きています。でも、これが実に難しくて! ちょっと掴んだかなと思うと、それの10倍くらい課題が見つかる。その課題をクリアしても、また新たな課題が出てくる。エンドレスなんですよ。歌で人の心を動かすためには、技術だけじゃ伝わらない。もちろん、テクニックはあるにこしたことはないと思いますが。
──求道者のようですね。
田村 観ている人の心を抉りたいんですよね。私って美術館に行くと疲れちゃうことがあるんです。作品の力に圧倒されて、魂が抜き取られたような感じになっちゃう。私は歌や舞台で、観ている人にそういう感情を与えたいと思っているんです。
──さて、デビューシングル『輝いて ~My dream goes on~』がいよいよ発売されますね。
田村 ジャケット写真は背景や衣裳では飾り気のない感じを表現したんですけど、これには「真っ白なところからスタートする」という意味を込めているんです。聴いていただければ、今までとは違う田村芽実を感じていただけるはずです。
──カップリング『Summertime』は田村さんが作詞。作詞に挑戦しようと思ったきっかけは?
田村 今まで他の方のカバーをさせていただいたとき、どこか〝借り物〟みたいな感じがしていたんですね。それで自分の言葉で歌ってみたいなと思って、作詞にチャレンジしてみました。
──そしてミュージカル「マリーゴールド」と浪漫活劇「るろうに剣心」の上演も始まります。
田村 「マリーゴールド」は、ハロプロの「LILIUM - リリウム少女純潔歌劇-」と非常に繋がっている作品なんです。「リリウム」が面白かったという人には、絶対に観てほしいな。(作・演出を手掛けた)末満健一さんの演出は、とても深くて内面の部分までしっかり描ききっているんですよ。「るろうに剣心」は派手なアクションシーンもあるだろうし、他の出演者もいろんなジャンルで活躍している方々ばかりなので、豪華な作品になると思います。
──最後に今後の目標は?
田村 60歳になったときにもずっと歌を歌い、表現すること続けていたいと思っています。歌の深さって、最終的には人生の濃さに比例すると思うんです。だからそのためにも、歌を歌い続け、表現し続けないといけない。あとは、その前にちゃんと長生きしなきゃ(笑)。
(『月刊ENTAME』2018年10月号掲載)
たむら・めいみ
1998年10月30日生まれ、群馬県出身。165㌢。O型。
2011年、ハロー!プロジェクトのスマイレージ(現・アンジュルム)としてデビュー。個性豊かなメンバーの中で一際パフォーマンス面で輝きを放つ。そして2016年5月30日、かねてからの夢であった女優の道を志すため武道館公演をもってグループを卒業。準備期間を経て、2017年5月より舞台に出演。2018年9月にはビクターエンタテインメントよりメジャーデビューが決定。女優としても、歌手としても新たなストーリーを歩んでいる。
Twitter:@Tamura_Meimi
1stミニアルバム『Sprout』(スプラウト)
2019年3月20日(水)リリース予定
限定盤】(CD+DVD)¥4,500(+税)/【通常盤】(CD)¥2,000(+税)
(収録曲)「無形有形」、「歌が咲く」(作詞:末満健一、作曲:和田俊輔)他
*収録内容の詳細は後日発表
*限定盤付属のDVDには、1月19日に開催された「田村芽実ワンマンライブ2019“めいめい白書”」のライブ映像が収録
田村芽実 ワンマンライブ 2019 vol.2 2019年6月30日(日)渋谷 WWW X
開場17:00 / 開演18:00
スタンディング 前売3,500円(税込)/当日4,000円(税込)
(お問合せ)liveinfo@victormusic.jp
詳細や最新情報は公式HPまで。