【写真】活動11年目、村山彩希の撮りおろしカット【15点】
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「今にして思えば、当時の私は薄っぺらい人間でしたね」村山は、加入当初2011年のことをそう振り返る。
「AKB48に入った頃は頑固で、嫌いなものは嫌いという思いが強かった」
そんな村山が「めっちゃ変わる」きっかけをくれたのは、先輩・峯岸みなみだった。2013年、当時AKB48のシングル選抜常連として活躍していた峯岸みなみが研究生へと降格してくる。まだ入って1年半程度の村山にとっては雲の上の存在。だが……。
「みぃちゃん(峯岸)が研究生に降格してきてから深く関わるようになったんですけど、はじめは反抗期だったこともあり、『悪いことをして降格してきた先輩』だと思っていました。今にして思えば、当時の私は薄っぺらい人間でしたね」
峯岸が教えてくれたのは、「人の負の部分を知ると人間性が見えてきます。そうすると、好きになれる」ということ。「他人を受け入れることができるようになったことが、この10年で一番大きな変化だと思います」
その意識の変化は後輩メンバーにも向けられる。
「今年加入したばかりの17期研究生。最近、彼女たちのレッスンを見学したりしているのですが、踊れない子がいたとしても、それでもいいと思うようになりました。ここからどう成長していくか。
だが、成長を促すのは、優しさだけではなく厳しさも必要というのが村山流だ。17期生は今年9月に公演デビュー。当時を振り返る。
「ゲネプロが初見だったのですが、正直納得できませんでした。メンバーは満足していたかもしれないけど、彼女たちをしっかりとした形でステージに上げる体制が整っていないのではないかと感じたんです。プロとして責任を持ってステージに上げるのは、環境とか教え方に左右されますよね。私も研究生を経験していますから、今の彼女たちに言ってあげられることがあるのではないかと思って、ゲネプロが終わった後、5分だけ時間をもらって、ステージに上がるうえで大切なことを伝えました。
たぶん今の時代は褒めて伸ばす方がいいとは思うんです。でも、彼女たちがデビューする大切な日に欲しているのは、当たり障りのない言葉ではありません。自分の経験をもとにして、なんとか5分だけお話ししましたけど、上手に伝わっているかどうか……。少しだけですけど、牧野アンナさんの気持ちが分かった気がしました」
AKB48の新曲や新公演、SKE48立ち上げ時に振り付け・レッスンを担当し、メンバーに多大な影響を与えた牧野アンナ。村山が触れ合ったのは、2018年4月からAKB48劇場で上演された牧野のプロデュース公演「ヤバイよ!ついて来れんのか?!」でのことだった。
「プロとして大切なことをたくさん教わりました。今でも思い返しています。私はキャプテンとして参加していたから、どう振る舞うべきなのか。プレイヤーとして以外のことも教えていただきました。アンナさんは最近、SKE48チームSの新公演のレッスンをしていましたよね? その動画がYouTubeに上がっていたから観たんです。私、泣いてしまいました。新公演が始まって羨ましいなという感情もあったし、アンナさんがSKE48のメンバーに伝える言葉は、まるで自分に言われているようで、胸に刺さりました」
牧野への尊敬を隠さない村山に聞いてみた。「村山さんがメンバーを育成するという考えは?」
「なきにしもあらずですけど、先のことは本当に分からないです。というのも、私は育成だけでは満足できない人で。今は自由だからこそ手を貸してあげたくなっているのですが、正式に後輩指導がスケジュールとして組み込まれると、途端にやる気がなくなると思うんですよ。ごめんなさい、私、普通じゃなくて(笑)」
まだまだ指導者に回る気はない。シアターの女神は現役バリバリだ。
「私はアイドルの自分を見てほしいと思っているわけではなくて、そのときの感情をそのまま伝えたいんです。たとえば、その日に病んでいるとしたら、あえて病んだままステージに立って踊ります。そこで、ファンの方が『今日のゆいりーはどこか表現が違ったね』と言ってくれたら、私の勝ちです。それは表現の振り幅が大きくなったということですから」
今年で11年目の25歳。村山彩希は自身の手で当たり障りのない未来を築いていく。
(取材・文/犬飼華)
▽村山彩希(むらやま・ゆいり)
1997年6月15日生まれ、神奈川県出身。13期生。ニックネームは「ゆいりー」。2011年9月24日にAKB48第13期研究生オーディションに仮合格、2012年8月5日にセレクション審査合格。AKB48の51stシングル『ジャーバージャ』で初めて選抜メンバーに選出された。劇場公演に並々ならぬ熱意を持つため、“劇場の女神”と呼ばれている。
Twitter:@yuirii_murayama
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