──上坂さんのファッションに革命を起こせたらという願望を込めて、チャレンジしていただく企画の記念すべき初回アイテムは「フーディー」です! 今回挑戦してみていかがでしたか?
上坂 ははーん、なるほど。事務所の方から「ファッションの撮影がある」という情報のみを得て、本日この場所へ赴いたのですが、どうりで私が普段なら着ないお洋服ばかりだなと思っていたところでした。というかフーディーって言葉自体、とても耳慣れないです。フードが付いていたらフーディーですか?
──そうですね。インターネットで調べたところによると、フードが付いているアウター(防寒着)をパーカー、フードが付いているスウェットシャツをフーディーと定義するそうです。ただ、日本ではフードが付いているトップス全般をパーカーと呼んでいて、最近になってストリートファッションブランドを中心にフーディーと呼ぶようになって来ているように感じます。
上坂 ふむふむ。結局ふわっとした定義ということがよくわかりました。ただ、私が所有しているフードが付いているお洋服って、『ムー』のグッズや、メガドライブのプリントに惹かれて買ったものであったり、いくつか柄で惹かれて買ったものはありますが、決して普段着の位置付けではなく、ライブのリハなどで着るくらいなんです。だから、街でフーディーを着ている人を見ると「すごい、フードだ」って思うし、「前髪を気にしない人なんだな」って。
──前髪ですか。
上坂 はい。だってフードをかぶったら前髪が崩れちゃうじゃないですか。だから私のようにぱっつん前髪の人はフード被らないでしょうし、そもそもロリータブランドにフードの付いているアイテムって見たことがないですし……。私はロリータ文化の中で生きているので、フードが付いているお洋服を着ている人とは仲良くなれないな、みたいな気持ちがあります。フーディー1枚で生きていけるなら苦労しないよ、みたいな。
──たしかに……。
上坂 ロリータを愛好する者がもし頭になにかを被るとしたらボンネットやヘッドドレスです。それに、何らかの物から頭を守りたいならフリルたっぷりの日傘をさすと思うのです。だから撮影中にフードを被ってと指示を受けた時は、正直うろたえましたし、私が被ることで、このおしゃれなフーディーが害虫駆除の方や消防士さんに見えてしまわないよう細心の注意を払いました。あとは六本木などでワイヤレスイヤホンをしながらスケボーでゴーッて街中を滑走している方もフードをかぶってらっしゃる印象があります。
──ストリート系ってことですね。
上坂 はい……。ストリート系の定義は不明ですが、イメージの中のラッパーの方って、フードを深く被っている印象で。ラッパーとロリータ、友情を育める雰囲気が一切ありません……。というか、そもそも私の人生において、フードを被っている方と接触したことがないかもしれません。
──学生時代も接触したことないですか?
上坂 私は中学生の頃からロリータですし、私服で着ている子もいたと思いますが、女子校だったですし、同級生も制服姿しか見たことがなくて。
──制服の下にフーディーを着ている子とか、いなかったですか?
上坂 記憶が……。でもおそらく、制服の下にフーディーを着ている系女子って、運動部に入っていて、活発なイメージじゃないですか。そういう方と接するときは大抵、床の模様をじっと見ていたりしたので、目線が相手の腰から上に向いた思い出がほとんどなくて……。
──す、すみません! 上坂さんとフーディー、ひいてはストリートファッションの間に、深くて暗い川が流れていることは非常によくわかりました。
上坂 でも、ちょっとした憧れはあるんですよ。私、神奈川県出身なのですが、幼少期に子役として活動していた時代に、よくオーディションのために東京へ来ていたんです。で、プロ子役の皆様の輝きに圧倒されながらオーディションを終え、家に帰りたくないなあと思いながらトボトボ歩いていると、フーディーをかぶってスケボーに乗った人がゴーッて滑走していって。
──そうですね。たしかに。一見怖そうかもしれませんが、全然そんなことないと思いますよ。

こちらがフーディーに挑戦した上坂
──じゃあ上坂さんとストリート系の距離を埋めるためにも、この連載のどこかでストリート系のお店に潜入してみるってどうですか? 例えば Supremeに並んでみるとか。
上坂 シュ? シュプリーム? 初めて耳にする単語ですけど、皆さんのその笑顔の裏に、私の人生にトラウマを作ろうとしている気配しか感じないです。そこに足を踏み入れたらどうなるのかはわからないですけど、もしその企画が実行されるのであれば、始まったばかりですけど、丁重にこの連載を辞退させていただこうかと……。
──イヤイヤ、それは困ります! ちなみに今後チャレンジしてみたいアイテムってあります?
上坂 普段着ないお洋服ってことですよね。ライダースは形が一緒なのに値段にバラツキがありすぎて正解がわかりません。あとはスニーカー、キャップとかリュックとか、あとはデニムとか、つなぎとか、スカジャンとか。
──たしかにアウトドアとかスポーティーなイメージも上坂さんにはないですね。ウインドブレーカーとか。
上坂 シャカシャカ音がするお洋服は、声優的に絶対にNGなんです。アフレコで音が鳴ってしまった日には切腹ものなので。そもそも根本的なところでスポーツ的なお洋服を私が着たら、お遍路さんですか?って雰囲気になってしまうと思います。着用したら最後、八十八箇所を巡らなくてはいけなくなっちゃいます。
──そんなことはないと思いますよ(笑)。
上坂 あ、あとこの間『アメトーーク!』でスニーカー芸人さんの回をたまたま観たんです。頑張って付いていこうと思ったのですが、最後まで解せないまま終わってしまいました……。
──気泡(笑)。エアーのことですかね。でもそれくらいの姿勢で来ていただけると、オススメのしがいもありますよ。ヴィンテージデニムを学ぶ、とかも面白そうです。
上坂 え、それは古着のジーンズってことですか?
──そうですそうです。色落ちを防ぐために、25年間洗っていないものとか……。
上坂 あ、ごめんなさい。それは無理です(キッパリ)。
──早っ(笑)。大丈夫ですよ、あくまでも例えばの話なんで……って、話せば話すほど上坂さんとの心の距離がすごい勢いで離れていっている気配をビシビシ感じていますが、そこは強い気持ちで進めていこうと思います。……ちなみに僕のデニムはちゃんと洗ってますよ?
上坂 (無言)
──完全に疑ってますよね、その感じは(笑)。
上坂 うーん、私がフードを被ったところで、ラップができるようになるでもないし、スケボーに乗りたい気持ちになる訳ではないということは、とても良く理解できました。見た目だけをストリート系に擬態したところで、心までは解放されるには至らなかったような……。私のフーディー姿が正解をたたき出せたのかは不明ですが、賢明なる『OVERTURE』読者の皆様におかれましては、なるべくならデニムは洗っていただきたいな、と思いました。
──わぁ、それは実質大成功ということで! また次回もよろしくお願いいたします!
上坂 …………。

上坂すみれ10thシングル
『ボン▽キュッ▽ボンは彼のモノ▽』
4月17日発売
※▽はハートマーク
作詞作曲を清竜人が手がけた表題曲は、自身も声優として出演するTVアニメ『なんでここに先生が!?』のOPにもなっている。4月20日ヴィーナスフォートにてトークイベントも開催!