5月29日(水)にリリースされる乃木坂46の23rdシングル『Sing Out!』。このシングルで初めて選抜に選ばれた2期生メンバーがいる。
渡辺みり愛。2期生最年少ながら常に周りを気遣い、メンバーを支えてきた彼女の初選抜までの道のりを、2011年の結成時から乃木坂46を取材してきたライターの大貫真之介氏が振り返る。

今年2月23日に行われた乃木坂46バースデーライブ3日目(大阪・京セラドーム)、2期生の一人ひとりが紹介される際にそれぞれキャッチフレーズがつけられた。渡辺みり愛のキャッチフレーズは「ダンスダンスダンス」。この1~2年で「渡辺みり愛=ダンス」のイメージがメンバー、スタッフ、ファンの間で浸透した。

翌日の西野七瀬卒業ライブでは『生まれたままで』のセンターに立った渡辺。この曲のオリジナルセンター伊藤万理華(卒業)は、渡辺にとって初期からの推しメンであり、しなやかなダンスはグループ随一との呼び声が高かった。当日は齋藤飛鳥衛藤美彩井上小百合らオリジナルメンバーがそろっており、ポジションの重さに不安もあったというが、渡辺は真ん中で華麗に躍動してみせた。

3歳から小学6年生までクラシックバレエを習い続け、プラチナ期のモーニング娘。が好きだったという渡辺みり愛は、2013年5月に13歳で乃木坂46に入った。彼女は自身の弱い面を見せないタイプで、2期生最年少ながらメンバーを気遣い、支える姿が目についた。
感情を抑えることも多いように見えた。

「ファンの方に対してもメンバーに対しても嘘をついてるわけじゃないんですよ。ただ、うれしいことがあって『うれしい』『うれしい』と騒いでしまったら、その後に嫌なことがあった時の落差が大きいじゃないですか。逆に、嫌なことがあった時は『いつかはいいことがあるだろう』と自分の中で抑え込んでるんです」(『TopYell』2016年7月号)

そんな彼女が珍しくマイナスな感情を表に見せたのが2016年12月14日。『FNS歌謡祭』(フジテレビ)で当時の選抜メンバーと加入したばかりの3期生がパフォーマンスを披露したものの、アンダーメンバーは出演することができなかったことをトークライブアプリ・755で「何だか、涙が止まらないの」と発信した。

渡辺は当時のことを「キラキラしたスタジオにいるメンバーと家にいる自分を比べてしまって悔しくなって」と語っている。(『TopYell』2016年7月号)

17年3月22日リリースの17枚目シングルで、渡辺はアンダーセンターに選ばれた。アンダーメンバーは(当時)最少の12人。「今回は開催されないかもしれない」という声も聞かれたアンダーライブは、東京体育館という大会場で行われることになった(4月20日~22日)。

「アンダーライブっていままでも全員が輝けるのが良さだったんですけど、12人になって、さらにひとりひとりを見てもらえるようになった……『そうプラスにとらえていこうね』『ウチらスーパーアンダー!』なんて話してました」(『別冊カドカワ 総力特集 乃木坂46』vol.04)

渡辺はリハーサル時こそセンターのプレッシャーから「ペチャンコ」に潰れそうになりながらも、本番を迎えると「愛の強さ」を武器に最小で最高のステージを見せ、千秋楽で「トリプルアンコール」を起こすのだった。

自身がセンターのライブでも、渡辺はまわりのメンバーを立てることを忘れなかった。その姿勢こそアンダーライブ東京公演が成功した要因のひとつだった。


「自分のことをしゃべるのが苦手なので、どうせならメンバー全員の話をしようと。メンバーが話した後に『○○ちゃんはリハの時にこんなことがあって』と裏話を添えるようにしてました」(『別冊カドカワ 総力特集 乃木坂46』vol.04)

18枚目シングルでは期待されていた選抜に入れなかった渡辺。しかし、彼女の気持ちは「その先」に向いていた。歌番組のアンダーとして17枚目の表題曲『インフルエンサー』をパフォーマンスする際に出会った振り付け師のSeishiroから刺激を受け、自身のダンスの可能性を広げようと……。

渡辺のダンスは、2016年の「真夏の全国ツアー」後から変わりつつあった。「大きく踊っている」と評価されがちな現実に悔しさを感じて、「自分のダンスを変えてやる!」と手先足先まで丁寧に踊ることを重視するようになり、過去に習っていたバレエの引き出しを再び開けて動きに「なめらかさ」を加えていった。

Seishiroとの出会いでダンスをより追求するようになった渡辺。卒業生の生駒里奈とSeishiroの公演を観に行くなど、これまで以上に積極的にダンスと向かい合うようになり、『EX大衆』2018年12月号では「乃木坂を卒業した後、いまは女優か一般人がほとんどじゃないですか。ダンスの道に進む子がいないなら、私が開拓したい」と意欲を見せた。

その成果のひとつがアンダーライブ北海道シリーズ(2018年10月3日~5日)で3期生の佐藤楓阪口珠美と3人で披露した『人生を考えたくなる』でのジャズダンスだった。また、「真夏の全国ツアー」大阪公演初日(2018年8月4日)の鈴木絢音ジコチュープロデュース企画で披露した『Against』(鈴木、樋口日奈堀未央奈、渡辺、和田まあや)は、渡辺が振りの一部を考えたという。

さらに10月のゲームアプリ「乃木恋」のイベントでは、「私がこの日の為に1週間かけて振りを作ったダンスを皆様にレクチャーして一緒に踊る」という前代未聞のファンサービスが行われた。
みり愛は「私が振り付けをしたダンスを皆さんが踊ってくださる。そして一緒に踊るという時間が貴重だったので物凄く嬉しかった」とブログに綴った。

盟友である北野日奈子は渡辺のダンスについてこう語っている。

「セクシーなダンスでもアンニュイな雰囲気を出したり、みり愛は他の人と違うんですよ。みんなと揃えつつ、自分の個性もポッと出すパフォーマンスができるようになったのは最近だよね? フロントでも2列目でも3列目でも、どこにいてもみり愛はみり愛らしくていいなと思います」(『EX大衆』2019年3月号)

5月29日にリリースされる23枚目シングル『Sing Out!』の選抜発表、「渡辺みり愛」の名前が初めて呼ばれた。選抜発表後、渡辺は「アンダーにいた頃も、今いただいたこの位置でも頑張り方は変えたくない」とコメント。彼女はこれからもブレずに自身の道を貫くことだろう。

4月25日、『Sing Out!』の振り付け担当がSeishiroと公表された。これぞ好機到来。渡辺みり愛が生き生きと舞い踊るダンスパフォーマンスで自己主張する日がもうすぐやってくる。
▽渡辺みり愛(わたなべ・みりあ
1999年11月1日生まれ、東京都出身。2013年乃木坂46 2期生オーディションに合格。
2017年17thシングル『インフルエンサー』のカップリング曲『風船は生きている』で初のアンダーセンターを務める。5月29日発売の23rdシングル『Sing Out!』で初選抜入りを果たした。
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