【写真】かたせ梨乃、リリー・フランキーも出演、最凶アクション映画『BAD CITY』場面写真
製作総指揮として、映画の企画段階から撮影のコーディネートまでこなし、自ら脚本も手掛けた『BAD CITY』。還暦を目前に、本作の製作を決断した背景には、過去に手がけた初プロデュース映画『SCORE』(1996)で興行成績が振るわなかった苦い経験があった。
「当時はVシネマ全盛期で、Vシネマなら、こういう風にビデオショップにアプローチをかければ、これだけ回るというのが見えたのね。でも『SCORE』は初のプロデュース映画というのもあって、どうしていいか分からなかった。1週間かけて映画館の前でチラシを配ったんだけど、何か用事があって外を歩いてる人に、チラシを渡して映画を見せる大変さを痛感したんだ。映画って不特定多数にアプローチしなきゃいけないから難しいんだよね。結果、興行的な成功には結びつかなくて、いつかリベンジをしたいと、そのタイミングをずっと探っていた。それで還暦を迎える時に、あの時の魂は枯れてねーぞ! という思いをぶつけるのは今じゃないかと思ったんだ」
還暦を過ぎた今もヘビースモーカーで、撮影がない時は毎日欠かさず酒を飲む。この日も数多くの取材をこなしながら、次々とビールやチューハイを飲み干した。しかし『BAD CITY』では年齢を全く感じさせないエネルギッシュなアクションを披露している。
「取材って大体同じことを聞かれるから、飲んでたほうがテンションも上がるじゃん。
『BAD CITY』で演じるのは、ある事件を起こした罪容疑で拘置所に勾留中の元強行犯警部・虎田誠。100人以上にのぼる敵を向こうに回して、CGなし、スタントなしの本格アクションに挑むため、撮影の一年前から家で人型のサンドバッグを打ち続けた。
「『SCORE』はドンパチっていうスタイルだったけど、『BAD CITY』はフルボッコに変わったんだ。撮影が終わってみたら全然余力があったんだよね。あと1週間はできると思った。まだまだ俺もやれるじゃないかと。今回は製作総指揮で、自分で台本も書いたけど、普通だったら還暦近い年齢の役者に、この役は与えないよ(笑)。
でも俺は、これが映画だと思う。テレビじゃねぇんだから。今はテレビ主導の映画ばかりだけど、どれも一緒くたじゃん。制約がうるさくなって、一気に日本映画のパワーが落ちちゃった。韓国映画なんて今でもワンカットで、斧で10人ぐらいの頭をかち割っていくじゃん。韓国ではOKなのに、なんで日本では駄目なんだと。勢いを全部、韓国に持って行かれて、めっちゃ悔しい。だから『BAD CITY』ではスタントなしでアクションをやれるよって奴ら、同じ魂で共鳴する奴らを集めて、一つになって勝負したんだ」
冒頭のシーンからバイオレンス描写が満載で、並々ならぬ気概を感じさせる。
「メインタイトルが出るまでの冒頭がお気に入りなんだ。脚本を書きながら、まだケツまで書いてないのに、これはイケるかもって思った。今回は次から次にアイデアが湧いてきたんだ。
メインのロケ地となった福岡県中間市の全面協力により、ロケ地では迫真のシーンが実現、リアルでダイナミックな画面作りに結実した。
「中間市の現市長、福田健次は元俳優で、俺が前にいた夏木プロダクションの同期なの。中間市も過疎化が進んでいるから、いい宣伝になるだろうし、町ぐるみで応援してくれたよ。市民デモのシーンがあるじゃない? あれも普段からデモで現体制に反対している人たちを、『いつもデモしている人たちを集めましょう』って市長が自ら集めたんだから(笑)。いつもデモしているから芝居じゃない。プラカードも自分たちで持っているしね。撮影中は、言葉は悪いけど、中間市全体が巨大なロケセットみたいな感覚だった。市長に『あそこを使いたいんだけど』って言ったら、『分かった。ちょっと聞いてみるよ』と、そんな感じだったからね」
小沢を慕う有志たちが集まった後援会「九州小沢会」の存在も映画には欠かせないものだった。
「決してビッグバジェットの映画じゃないけど、現場に出るとNetflix級だからね。たくさんテントを張って、そこにラーメン、チャーハン、おでん、お好み焼きが並んでいるんだから、もはや縁日だよ。
【後編はこちら】小沢仁志“還暦記念映画”にかける思い「CGなし、スタントなし、俺の魂の熱さを感じてほしい」