草なぎ剛が主演を務める連続ドラマ『罠の戦争』(フジテレビ系)の第3話が1月30日に放送された。板挟みになり苦悩する牛尾を演じた、名バイプレーヤー・矢柴俊博の迫真の演技が注目を集めた。


【写真】鷲津(草なぎ剛)と牛尾(矢柴俊博)ほか、『罠の戦争』3話場面カット【5点】

前話では、衆議院議員・犬飼孝介(本田博太郎)の右腕として暗躍する虻川勝次(田口浩正)を解雇まで追い込んだ鷲津亨(草なぎ剛)。

次に、犬飼とその息子である俊介(玉城裕規)の不正を暴こうとした鷲津は、犬飼の専属ドライバーである牛尾(矢柴俊博)に、自身の息子・泰生(白鳥晴都)の転落事故について問い詰める。

しかし、鷲津の怪しさを察知した犬飼は“鷲津に聞かれたこと”を牛尾に吐かせるため、クビをちらつかせる。脅しに負けた牛尾は犬飼にすべて喋ってしまい、鷲津に謝罪のメールを送った――。

牛尾の苦渋の決断に対してネット上では「これはさすがに仕方ない」「家族を優先するのは当然」といった同情の声が続出。決して多くはない出演時間にも関わらず、同情せざるを得ないほどの迫真の演技を見せた矢柴に改めて注目が集まったようだ。

3話放送前の1月23日には「どデカい合戦場のロケ地で、大勢のエキストラさんに『がんばろー』なんて励ましの声を一緒に掛けたりしたんだ」「あの時以上に大きくなった草なぎさんがいる。正面を向いて台詞をやりとりしてみたい。何を感じるかワクワクする」と自身のTwitterに投稿していた矢柴。

実は矢柴は2009年に公開された草なぎ主演の映画『BALLAD 名もなき恋のうた』にも出演。今作で約14年ぶりの共演を果たしたことになる。

放送直後には「3話終了。
僕の初日は鷲津との定食屋のシーン。草なぎさんと対面するのが本当に楽しみだった。余分なものなしで向き合いたかった。いざ本番。鷲津は透明で深い。見えない。深すぎて光が届かないから見えないのだ。あまりの底知れなさに絶叫しそうになった。興奮した。最高だと思った」と撮影当時のことを振り返っている。

『罠の戦争』では、犬飼や俊介に逆らえない気の弱い男性を演じている矢柴。俳優の経験値は高く、演じ分けられる役の振り幅が大きいのも矢柴の特徴だ。
たとえばディズニープラスで配信されている日本発オリジナルドラマ『ガンニバル』では“前任の駐在役”として出演しており、冒頭では人気のない村の中を叫びながら徘徊し、銃を頭上に乱射するという狂気に満ちたシーンを熱演。

2023年1月に自身のInstagramでガンニバルの撮影について、「オープニングの狂気の長回しは、2022年で一番インパクトがある撮影だった」「ひたすら狂い続けて、寿命が3年縮まった気がする笑。いや仮にそうだとしても全く後悔はない」と投稿。

オープニングという大事な場面なうえに“狂い続ける役”を演じることは、ベテランの矢柴でも演じ切るのに苦労したことが伺える。

また国民的ドラマとして長い歴史がある大河ドラマに3度も出演している矢柴は、2022年に放送された『鎌倉殿の13人』(NHK)で平知康役を担当。

NHKが実施したインタビューで「京の人間として、話し口調や所作など意識していることはあるか?」という質問に、「役者なので立ち居振る舞いは常日頃考えていますが、本当に不思議なことに、衣装を着て、大河ドラマのセットの中に入ると自然とすました話し方になってしまう」「京の空気感の中にいると自然と品よく、高い声で話すようになっていく」と回答。

真摯に求められた役を演じ切る矢柴。実際に演技をおこなう時には、どのようなことを意識しているのだろうか。

役者たちにスポット当てて掘り下げていくサイト『役者魂.jp』は以前、矢柴に取材をおこない、「役選びや役作りの方法」について尋ねている。

同記事によると、そもそも演じる際は役によって“差別化”しないことを意識しているそう。「1度演じたら、それ以上の役しかやらないと思うわけではない」「どんな役でも依頼されたら、断らずに挑戦したい」ともコメントしている。

また、役作りに関するポリシーについても語っている。


「毎日お弁当を食べていて一度フルコースを知るともうお弁当に戻れないとか、高級車がないと移動したくないとか、そういうことにはなりたくないなぁと思っている」

「もちろん、品格や風格に関わるということはわかるんだけど、あくまでも中身が伴うことが目的であって、モノを持つことがゴールではない」

どんな役でもチャレンジできるよう、“心のフットワークを軽くしたい”という気持ちが強いようだ。

さらに「演じる役を体に覚えさせるため、実際に役に合った服を着たり、道具を手にして役作りの純度を上げている」としており、『罠の戦争』の熱演を含めて、矢柴の演技は手間をかけるという過程があるからこそ、魅力を存分に発揮しているのかもしれない。

矢柴の好演で、物語にいっそうの深みを増した『罠の戦争』。これからの展開や矢柴の再登場に期待したい。

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