冠番組を含めレギュラー10数本を抱え、テレビ業界で一時代を築き上げた「女傑」をこう評するのは失礼だが、もはや完全に再ブレイクを果たしたと言っていいだろう。3回連載の山田邦子インタビュー、3回目では、現在と今後の活動の展望について語ってもらった。


【前編はこちら】山田邦子が語るコンプラ時代のお笑い「結局漫才って、おもしろいかどうか」

【中編はこちら】山田邦子、多忙すぎた昭和のテレビ界「朝6時に終わって朝6時スタート、何時に寝るの!?」

【写真】芸人人生を謳歌する山田邦子の撮り下ろしカット【6点】

去年、川中美幸さんとデュエットして20年振りにCDを出したんです。番組からヒット曲を出したことはあったけど、音楽に真剣に活動するのは初めてで。歌手として歌番組に出演するのも初めてでした。

川中さんとおそろいの衣装も作ったんです。歌うときはスタンドマイクで振りもあって、「ちょっとピンクレディーっぽいな」って感じがしたんで、キラキラ光るピンクの衣装にしたら、ピンクレディーじゃなくて阿佐ヶ谷姉妹みたいになっちゃった(笑)。

お笑いに関しても、この年で初めてのことはけっこうあって。
うんと下の若手の子たちに会うことが多くなったんですけど、みんな私のことを先輩というより民芸品かなにかだと思ってるんですよ。「邦子さん」じゃなくて「クニちゃん」って呼んでくる。そういう子たちとYouTubeでコラボさせてもらったりできるのは、「ああよかったなあ」って思います。

今は馬鹿みたいに忙しかったころとはちがう充実感がありますね。自分の時間を自由に使えるっていうのは贅沢なこと。いろんな人に会いに行ったり、ネタを作ったり。
テレビで披露する機会はなかなかないけど、3年前くらいから演芸場に出ているんですよ。若手の漫才師とか落語家の子たちと仲良くなって、呼んでくれるようになって。「物まね漫談 山田邦子」でやってます。

演芸場、おもしろいですよ。最近はそういうところに行かないと同業者に会えないですからね。ほんともう、大御所扱いになっちゃって、「こんな小さいイベントに呼んでもやってくれないだろう」みたいなね。
そんなことないのに。やっぱり、私の職業は「ネタ」ですから。ふざけたことばっかりやってますけど、一生続けるでしょうね。

まだまだやってないこと、やりたいことはたくさんあります。例えば私の趣味でもある和楽器や着物着付け、長唄なんかの「和の文化」を子供たちに伝える、月に3回くらいのお教室を最近始めました。みんな敷居高く考えすぎで、やってみたら面白いということを伝えたい。
発表会か、あるいは私のYouTubeで出すか、何かしらの形にしたいな、ということで動いています。

朗読会もやっていこうと思ってます。最近、みんな本を読まなくなってますから。ただ読むだけじゃなくて、そこに音楽の生演奏を入れるかもしれないし、何か別の演出を入れたり。なんか真面目に語っている風ですけど、全部自分が楽しいこと、笑えることをやっていきたいだけなんです。

あと、毎年9月25日は「クニコの日」ってことでチャリティイベントをやってるんですよ。
去年は芦ノ湖でワカサギ釣り大会を大勢でやって、それはすごくおもしろかった。

40周年の時は、40人のゲストと5分ずつ漫才するイベントを開きました。瀬川瑛子さんや綾小路きみまろさん、林家たい平ちゃんはオレンジ色の衣装で出てくれて。テリー伊藤さんは飛び蹴りしてくれて、なぜかトシ・ヨロイヅカ(パティシエの鎧塚俊彦氏)も出てくれて(笑)。最高でしたね。関口宏さん、五木ひろしさん、舘ひろしさんを並べて「3人ヒロシ」で自虐ネタやってもらう、っていう案はポシャッちゃいましたけど(笑)。
「ヒロシです……」ってやってほしかったなあ。

このイベントのネタを考えるのも毎回大変なんですけど、おもしろいことは待っていてもやってこないので。人を元気にするならまず自分から元気にならないとダメだし、自分が考えて作ったもので、みんなで笑いましょうよ、という気持ちは大事にしたい。それで、去年ギリギリまで動いて、コロナ禍だからというのもあって実現しなかった企画をぜひやりたいなと思っているんです。

やっぱり、バスガイドさんなんですよ、私のネタの原点は。演芸場に来てる若い子たちにも「オバちゃんはバスガイドさんのネタでデビューしたんだよ」っていうのを伝えたい。今、バスガイドネタはどんどん変わってきていて、「もしバスガイドが瀬川瑛子さんだったら」とか「ゴルゴ13だったら」とか、ワケわかんなくなってきてますけど(笑)、でも見たら笑ってくれるんですよね。だからコロナ禍が緩くなったら、山田邦子がガイドを務める「クニコの日バスツアー」を実現させたいですね。