【写真】東出昌大がWinny開発者・金子勇役に挑戦【7点】
──映画『Winny』出演の決め手はどういったところでしたか。
東出 ファイル共有ソフトのWinnyは知らなかったんですが、お話をいただいて「こんな世界とドラマがあったんだ」と関心を持って、出演を決めました。
──東出さんが演じた金子勇さんは実在の人物ですが、演じる上で難しさはありましたか。
東出 金子さんは42歳という若さでお亡くなりになっているので、金子さんを知る方たちにご協力いただきました。遺品を貸していただいたり、お話を伺ったりする時間をたくさん持つことができたので、その体験はこの役を演じる上でとても有難かったです。
──かなり体重も増量されたそうですね。それはそうしてほしいと指示があったのですか。
東出 いえ、してくれとは一言も言われませんでした。最初に金子さんの映像を見た時、話し方や振る舞いに衝撃を受けたんですよ。
──どのように作り上げたんですか。
東出 ひたすら食べましたね。最初は筋トレもしていたんですが、筋トレをするとカロリーを消費して痩せてしまうんです。お腹には肉が付いていくんですけど、顔を太らせたかったんですよね。増量する際に、顔が太ってくるのは一番、最後なので、とにかく食べて食べて、という感じでした。
──この規模の体重の調整は今までに経験がありましたか。
東出 いえ、人生初です。松山ケンイチさんが、映画『聖の青春』の時に25キロ太ったそうなんですが、松山さんは「増量の役はいいよ。おおらかになる」と言っていたんです。でも僕にとっては嘘だと思いました(笑)。
──撮影が終わったらすぐに元の体重に戻したんですか。
東出 そうです。減量は楽しみでした。太っていると体がしんどかったので。
──東出さんの演じた金子勇さんは魅力たっぷりなキャラクターでした。役作りはリアリティを追求し続けていったのでしょうか。それとも東出さんなりに演出を加えていった部分もあるのでしょうか。
東出 役作りをするというよりも「金子さんになる」という感じでした。すぐ手を組むとか、体を前後(に揺れ)させるとかいう現場での居住まいを、日常的にやるんです。そういう癖は作品が終わってもなかなか抜けないんですよね。「なんか金子さんっぽいことしちゃったな」と思うことは、その後もたびたびありました。
──現場の雰囲気はいかがでしたか。
東出 今の日本映画界は時間がないと言われることも多いですが、怒号が飛び交うようなことは一切ない、穏やかな現場でした。現代とは違う時代背景なので、当時の雰囲気をみんなで頑張って作っていったという感じです。現場に行って、監督と話し合いながら「この方が良いんじゃないか」と台本が変わることもありました。裁判で最終陳述をしゃべるシーンがあったんですが、最初の台本とは全然違うセリフなんです。裁判記録の中に、実際に弁護士の壇さんと金子さんで作った最終陳述用紙があったので、それを引っ張り出してきて、「絶対にこっちの方がいいです」と変えさせてもらうことになりました。
──作品を通して、東出さんは金子さんの人生に対してどのように感じましたか。
東出 金子さんの生家を訪ねたんです。
──ご自身の生き方に反映される部分もありますか。
東出 あると思いますね。最近は天然と言われるようになってしまっていますが(笑)、「金子さんになりたい」と思った二カ月があったから、僕自身の人間性にも影響を与えていると思うんです。僕も普段から人の悪口を言わないようにしようと思っています。
──専門用語を早口で言うシーンも多いですよね。かなり大変だったのではないでしょうか。
東出 原理を覚えないと自分のセリフにならないので、P2Pとはなんなのか、クライアントサーバ方式とはなんなのか、というような勉強は結構必要でしたね。
──この作品を世の中に届ける上で、東出さんが伝えたいメッセージとはどういったものでしょうか。
東出 見ていただければ、伝わるものは伝わると思います。でも僕、作品の完成が怖かったんですよ。「良い映画を作りたい」という思いは当たり前にあるんですが、「うまくいっているだろうか」という不安も同時にありました。でも出来上がった映画を見終わった時に、自分でも「良い映画になった」と思えたので、本当に多くの人に見ていただきたいと思います。
【後編はこちら】映画『Winny』主演・東出昌大が語るアナログな私生活「肉がなければ山へ狩りに、薪をひたすら割って」