【前編はこちら】東出昌大がWinny開発者・金子勇役に挑戦「役作りをするというより、本人になりきる感覚」
【写真】東出昌大がWinny開発者・金子勇役に挑戦【7点】
──映画『Winny』はすごくデジタルな内容を扱う作品だと思いますが、東出さんは現在、狩猟などをして生活されているんですよね。
東出 そうです。デジタルとはかけ離れていますよね(笑)。
──アナログな生活はいかがですか。
東出 僕はもともとそういうことが好きだったんです。あまり物を買いたくないし、増やしたくない。靴下が破れたら縫えばいい、というような感覚なんですよね。だから今は身の丈にあった生活をしている感じがしています。芝刈りに行って、小枝を拾ってきて焚き付けに使って、薪を割って、煮炊きして。
──毎日そうやって生活をしているんですか。
東出 毎日そういう生活です。朝起きて、火を起こしてコーヒーを入れて、山に行って焚き木を拾って。洗濯物が溜まっていれば、今の時期は寒いから、街のコインランドリーに行くんです。肉がなければ山へ狩りに行くし、薪はひたすら割ってます。小屋も建てないといけない。忙しいですよ。さらに最近は取材もあったりして「いいですよ」と言っている内に来客が絶えなくなっちゃって。でもそういう生活を発表することが目的ではないので、そこは変わらないように意識しています。
──今作では、金子勇さんが裁判によって拘束されることで、才能ある人にも関わらず時間をすごく浪費してしまうという点についても考えさせられました。限られた日々を過ごす上で、東出さんが大切にしていることはなんですか。
東出 自主自立ですね。「集団ってなんなんだろう」と思うんです。当時の報道では金子さんという人がよりキャッチーな形にねじ曲げられて伝えられていました。でも金子さんの本質ってそういうことじゃないんです。集団で安心安全の中にいると、他者を排斥して、キャッチーなものを目にしたがる人が多いと思います。
僕自身も、最初にこの作品の話を聞いた時には金子さんについて「怪しい人なのかな」と先入観を持ってしまいました。でも自主自立していれば、他者を排斥しようと思わないし、人を悪く言っている暇がないから、人に過度の期待もしない。金子さんは、金子さんの世界で自立なさっていたから、人を悪く言わなかったんだと思うんです。金子さんを演じる上でも、日々生きる上でも、考えさせられることは多いです。
──現在の東出さんは、役者としての未来について、なにか考えているプランはありますか。
東出 ないです。仕事が来たらフルスイングで長打を打つということだけですね。
──作品を選ぶこだわりもないのでしょうか。
東出 作品においては、自分は材料だと思っているんです。僕が良い材料になれそうだと感じた時は参加する様にしています。
──自分がやる意味があるかどうか、ですか。
東出 そうです。でも難しいですよね。本質を追おうとしている作品って小難しいことが多いから、間口は広くなかったりする。そうするとどうしても作品規模も小さくなってしまいますが、やっぱり本質で生きていきたいなと思ったりはします。
──これまでの役者人生の中で変化をしてきて、現在の価値観になったのでしょうか。
東出 フリーになっていることは大きいです。事務所にいると、自分の判断基準だけで、仕事は選べない時もありますし。今は「僕はとにかく芝居を頑張るんだ」という感覚でいます。