【写真】エッセイストとしても活躍する青木さやか
本書は、娘とのやり取りやシングルマザーとしての日常をざっくばらんにつづったエッセイ集。当初、「母と娘」というテーマには「難しいな」と感じることが多かったという。
「娘の成長もそうですけど、そこに対しての悩みはどんどん変わっていくし、今断定的にこれを書いてしまって将来後悔するんじゃないかなとも思ったんですよね。あとから娘が読んだときに、『どの口が言ってるんだ』ということにもなりかねないじゃないですか(笑)。でも、書くならまずはさらけ出していこうと。娘との楽しい日々だけじゃなくて、ちゃんとケンカしたり、意見が合わなかったりしたことも全部書こうと決めました」
なかには「『イケメンの息子がいる男性と再婚して!少女マンガの主人公みたいに過ごしたい』と言われた」というユーモラスなエピソードも。恋愛や人間関係についてなど話題は多岐にわたっているが、娘の反応は?
「娘は、全く読んでないんですよ。この本にも書いてありますけど、最初に『書かせてもらうからね』と話したら『ギャラは一部もらう』と(笑)。今は、それについて『いつお金入ってくるの?』と聞いてくるくらい。もちろん『この話、書くよ』というのはさらっと伝えていますけど。
本書のなかでは娘のことを「同級生だったら友だちにはならないタイプ」と、青木自身とは全く違うタイプだということも紹介している。
「もちろん似ているところもあります。でも、例えば外に出るときにきっちりと身だしなみを整えるとか。私はそんなこと全然ないのに。あと人の痛みを自分のことのように感じて一緒に泣ける子なんですよね。私にはあまりそういう記憶はないので。人との距離感は全く違うかもしれないですね」
「母が嫌いだった」と、自身の母子関係に複雑な思いを抱えていた青木。自分の子育てにおいては、「反面教師ではないですけど、自分の考えが大量に娘に向かないようにしていたかもしれない」と振り返る。
「私の育ったうちはとにかく世間体が一番大事な家だったんです。例えば、成績がいい、家族の仲がいいとか。外からどう見られるか。
その感覚で、子育ても自分が難しいと思うところは周りの人たちにすごく助けてもらいました。いろんな方の考え方、たくさんの大人たちの影響を娘は受けている感じがします。育てる、という意味ではもちろんご飯も作るし、経済的にも担っていますけど、考え方という部分に関しては、周りのいろいろな方々の手を借りている気がします」
青木は、娘が2歳のときに離婚。本書では、パニック症を患うなど心身ともに大変だった当時の思いにもまっすぐに向き合った。
「そのころのことを思い出して書いていくのは、精神的につらい作業でしたね。書くことで、あ、このことは自分の中でまだ解決できていないんだな、と気づくこともあって。書く、というのは私にとって特別な作業だと思いました。書きづらいところは、自分にとって課題や問題点があるところなんだなって」
書きにくい話題は避けるという選択肢もあったが、青木は「そうなると面白くないじゃないですか」と笑う。
「自分がすごくふわふわした人間に見えちゃうし、そういったところを書かないと誰にも届かないのかなと。
離婚前後のことや娘との言い合いは「決してカッコいいものじゃないから、正直出したくはなかったですけどね」ともいう。
「でも、出したくない、書きたくないと思う、そういう気持ちを紐解いていけば、自分の感情を理解できるんですよね。そうすれば、たとえばどうして娘とケンカになったのかが分かるし、それがわかれば次はもっと感情をコントロールできるようになるのかなと。私のケースを読んでもらって、『そういう人もいるんだ。じゃあ自分はどうだろう』と自分の行動や感情の理由を考えるきっかけにもなるのかなと感じています」
取材・文/吉田光枝
【後編はこちら】青木さやかが語る子育て、そして母との関係「離婚をしてワンオペで育児をして生活、倒れたことも」