2021年にSKE48を卒業し、現在、舞台を中心に活動している女優・高柳明音。5月3日から東京・三越劇場で上演されている『ホロー荘の殺人』、そして7月にはW主演作・キ上の空論10周年記念公演『「幾度の群⻘に溺れ』も控えている。
今回、そんな彼女に舞台、そして女優活動への意気込みを聞いた。

【写真】『ホロー荘の殺人』ではミッジ役を演じる高柳明音【10点】

アガサ・クリスティーの名作長編小説を舞台化した『ホロー荘の殺人』。本作は、1951年にアガサ・クリスティー自身が執筆して戯曲化された他、映画や TV 作品として映像化されるなど、高い人気を誇る作品の一つ。高柳が演じるミッジ・ハーヴェイは「作品の中で『珍しくこの家系の中でまともよね』というセリフがあるくらい、登場人物の中では唯一のまともな人間」という役どころだ。

同役について高柳は、「貴族が多い中、ミッジは貴族の血が半分しか流れていない存在なので、庶民の気持ちを表現しています。叶わぬ恋をしているところも個人的にはいいなと思っています」と口にする。

「私が今までにあまりやったことがないような作品なので、見に来てくださった方がどんな気持ちになるのかすごく気になります。感情をたくさんかき乱せたらなと思っているので、覚悟しつつ、楽しみに来て下さったらうれしいです」と気合十分。

取材時点では、通し稽古を行う前の段階だったという本作だが、キャスト間は早くも和やかなムードだったという。「すごく穏やかな雰囲気です」と現場の様子を明かし、「私も30代になって、他の現場では大人な方の立ち位置が多くなってきましたが、今回は年少組。初心に帰って、『まだまだだ』という気持ちで頑張っています」と続ける。

主演の凰稀かなめを始め、紅ゆずる、旺なつき、綾凰華と、本作に出演する女優陣は高柳をのぞいて宝塚歌劇団出身者ばかり。
共演者については「本当に気品あふれる方々なんです。関西出身の紅さんはおちゃめな印象もあったりして、皆さん優しいです」と笑顔を見せる。

稽古中は共演シーンの多いキャストと過ごしていることが多いそう。「相手役の林翔太さんや中尾隆聖さんは席が近いんです。後ろから中尾さんの笑い声が聞こえると『あ、フリーザ様だ』って思います(笑)」と、中尾隆聖が『ドラゴンボール』で声を演じたお馴染みの悪役を感じながら、稽古に励む日々だ。

上演を前に高柳は「ミステリなので犯人探しも楽しんでほしいですが、人と人との感情のぶつかり合いが描かれた人情劇の部分も伝わるといいなと思っています」と観客の反応を楽しみにしていた。

舞台を中心に様々な作品で活躍する彼女だが、7月には町田慎吾とのW主演作・キ上の空論10周年記念公演『「幾度の群⻘に溺れ』も控えている。

高柳は「『キ上の空論』には、今回の作品で初めて参加させていただきます。あらすじからすでに謎が多く、私がかなり重要な役割であるということまでしかまだわからないんですが、楽しめる作品を精一杯作りたいなと思っています」と意気込みつつ、「出演が決まった後にW主演と聞いて、主演級の役で出演することになるとは思っていなかったので、今から震えています(笑)」とも吐露。

「私が演じるのは、唾液に人を眠らせる成分があるという役なんですけど、それを巡っていろんなことが起こっていく、ドキドキさせられる物語だと聞いています。台風の目みたいな存在なのかなと思うので、背筋が伸びる思いです」と力を込めた。

舞台の主演という大役には「うれしいというよりは、プレッシャーが大きい」と本音ものぞかせる。
「1人主演ではないので、そこはうまく甘えさせてもらいながら、1人で背負わないようにはしたいなと思っています」と語る。

「今はまだ、色々な作品に出て吸収をしたいなと考えていたので、『主演が今なんだ』という気持ちはありました。W主演ではありますが、主演が座組の雰囲気を作ると思うので『自分でいいのだろうか』という思いもあります。すごく人見知りなので、その面でも大丈夫かなと少し心配しています」と心境を明かした。

SKE48を卒業した高柳が、女優としての活動を本格化してからはや2年。舞台を取り巻く環境はコロナ禍で大きく変化していたが、徐々に以前の雰囲気を取り戻しつつある。

「私は卒業するタイミングがちょうどコロナ禍だったので、卒業してからずっと、皆さんがマスクをしていて、できるだけ声も抑えていて、という環境でした。私にとって、コロナ禍以降では『ホロー荘の殺人』が初めて観客の方が声を出して笑ったり、自然に反応ができる舞台になるので、『来てよかったな』と思っていただける作品にしたいです」。

グループを卒業して間もない頃、出演する作品に「アイドル・元アイドル」という肩書が付くことに対する思いを語っていたことがある。

「以前はプロフィールにグループ名が付いていることで、第一印象がアイドルということは、女優としては良く悪くもハードルが低かったところもあったと思うんです。だから『そのハードルは絶対に超える』という気持ちでやっていました」。

ところが、現在は考え方に変化が出てきた。


「卒業して、名前にSKE48と表記されなくなってからは、見に来て下さった観客の方が、『あの子気になる』と調べてくれて『元SKE48の子だったんだ』『私の推しがちゅりと一緒に出るんだ!』と良い意味で捉えてくれることが、ありがたいことに増えました。『ホロー荘の殺人』は元宝塚歌劇団の方が多いので、宝塚のファンの方から見たら『1人だけ違う子がいる』という風に見えると思うんです。むしろ、スラッとした方々の中に、背の小さいワーワーしている子がいるなと気になってもらえたらいいなと思っています。『あのグループにいた子ね』と思ってもらってもいいと思う」。

「グループのことはもちろん今でも好きですし、大切に思っているし、感謝もすごくしています。あの時には感じられなかった感覚が、あの頃に過ごした12年間のおかげで、感じられるようになっているなと思います」と表情はほがらかだ。

今後の展望を尋ねると「映像のお芝居もやりたいです。すごく興味があります」と目を輝かせる彼女。「舞台は毎回、演じるたびに変わるところがありますけど、映像は撮影したものが全てになるんですよね。声を届けるために大きく発声する舞台とは違った、繊細な表現ができるという部分にも興味があります」と続ける。

映像作品でもミステリに挑戦したい、と話し、「命をかけた騙し合い系の作品も好きなので、めちゃくちゃ借金を背負わされるようなベタな展開もやってみたいです(笑)。すごく良い人だったのに豹変するような役にも興味があります」と具体的なイメージを楽しそうに語ってくれた。


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