6月15日から配信を開始、29日に最終話が配信されたAmazonオリジナル『ラブ トランジット』。本作は毎週木曜日に新エピソードが配信される形で進行、15日に第1~4話、22日に5、6話、そして29日に7、8話が配信されて完結した。


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韓国のエンターテインメント企業・CJ ENMが制作し世界で人気を誇る恋愛リアリティ番組『乗り換え恋愛』のフォーマットをもとに日本で制作されたこの番組。過去に恋人だった5組の元カップルが、約1か月のホテル共同生活を通して、復縁や新たな恋の間で葛藤する姿に迫るもの。誰が誰の元恋人(=X)かは知らないまま過ごす、未知数な恋の行方や人間ドラマを楽しめる。

8月から配信予定の『バチェラー・ジャパン』シーズン5が待ち遠しい中で配信された当番組。すでにシーズン2を期待する声が上がっているが、なぜこんなにも反響を呼んだのか。『ラブ トランジット』を楽しむための注目ポイントを紹介したい。
(※以下、ネタバレを含みます)

まずは何といっても、元恋人たちが集まって恋愛をするという設定だろう。しかも、途中までは誰が誰の“X”なのかは明かされないまま進行する。お互いのことが少しずつわかり始めたときにそれぞれのXを発表し、Xを知った上での共同生活が始まるのだ。

恋の始まりと終わりの予感が入り乱れるこの設定に、感情がゆさぶられる視聴者も多かったよう。それは、観る人の経験や感情とリンクする部分がより多いからだ。

Xが明かされるまでは「誰が誰のXなのか」という考察が巻き起こるのは当然のことだが、通常の恋愛リアリティ番組と比べ、そこでまず一つ考察させるネタがある。
節目節目に匿名でメッセージを送り合う場面があるのも考察を捗らせる要因の一つ。Xが明かされる前と後では、同じ話も見方が大きく変わるので、明かされた後に改めて1話から見直す楽しみも与えてくれている。

しっかり伏線を回収してくれる部分もありつつ、「どうなの?どうなの?」と思わせる編集にも抜かりがない。特に序盤の「Xとの再会シーン」の編集には目を見張るものがあった。少なくとも10話はあるバチェラー・ジャパンと比べると全体的に若干展開が早い気もしたが、さくっと観られるのは現代に合っていてありがたくもある。

また、本作の出演者は全員が見事にキャラ被りをしていないのも魅力。
俳優やプロのアスリート、経営者、女子大生などさまざまな職種の10人が集まっている。Xや恋愛との向き合い方がそれぞれ違い、もれなく全員から学ぶことがあった。素直な気持ちを出す人、出せない人、出さない人がはっきりしていて興味深い。

それも最初の方のエピソードではわからず、最終話まで見続けることで浮き彫りになってくる姿ばかりなのだ。感情とリアクションは必ずしも表裏一体ではないことを改めて突きつけられる場面もあった。

特に、共同生活中にXの目を見て話せる人と話せない人、相手の気持ちを尊重しながら自分の思いを伝えられる人とそれができない人がいるのは印象的。
もちろん、単に恥ずかしさや気まずさもあるかもしれない。復縁したい・したくないも含めて「目を合わせる」「相手を尊重する」行動にも注目して見てほしい。

だが、本作の最大の引力は、劇中の音楽ではないだろうか。絶妙なタイミングで声から始まる音楽が入ってくるため、涙を誘う演出になっていた。シンガーソングライターのeillが歌う主題歌『happy ending』は特に胸にグッとくる。

出演者の表情のみが映り一瞬音がなくなり、次の瞬間に歌が流れる。
それとともに目に浮かんでいた涙があふれる体験を、本作では何度もした。とにかく切なくさせるのだ。ものすごい修羅場を観ているのに、感動的なものをみたような気にさせられる不思議。『happy ending』を聴くと”匿名メールの送受信シーン”が思い浮かぶのは筆者だけではないはずだ。

テレビドラマは3か月のクール、配信ドラマもある程度の話数があるものだが、こちらは全8話で完結。それなのにドラマを1つ見終わったかのような余韻とほどよい疲労感が残る。
完結したばかりではあるが、すでにシーズン2が待ち遠しく思えるほどの作品だ。

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