ド迫力の格闘シーンに挑む俳優の中には、演技ではなく本当に格闘技を習得している者も少なくない。カリ(エスクリマ)、ジークンドー(截拳道)、USA修斗などを身に着けた俳優・岡田准一もその一人であり、格闘技や武術の経験が作品に臨場感や緊迫感をもたらしている。
だが彼の他にも格闘技を習得し、アクションに活かしている俳優は数多く存在するようだ。

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例えば映画『ヴィレッジ』や『線は、僕を描く』など、数々の映画で主演を務める横浜流星も格闘技経験者。彼は小学校1年生から極真空手を習っており、「第7回国際青少年空手道選手権大会」では13・14歳男子55kgの部で優勝し、世界一に輝いている。

過去に『しゃべくり007』(日本テレビ系)へ出演した際には2m超の飛び蹴りを披露し、2020年に放送された『行列のできる法律相談所』(同系)では格闘家・那須川天心とスパーリングを実演したこともある。

ちなみに那須川とは小学校の頃から仲が良いそうで、横浜の空手の腕前については“このままキックボクシングをやってもチャンピオンになれる素質があった”とベタ褒めしていた。

さらに今年8月に公開される映画『春に散る』では、横浜がボクサー役として主演を務める。役作りのために去年の4月からボクシングをはじめ、今年6月に日本ボクシングコミッション(JBC)が実施するプロテストに合格。見事C級ライセンスを取得したという。

YouTube上にアップされている予告映像には、ミットに向かって鋭くパンチを叩き込む様子が収められており、いかに本気で役作りに取り組んでいたのかが見て取れる。

俳優の松坂桃李といえば“遊戯王ガチ勢”にして、ゲーム好きな生粋のインドア派として有名だ。しかし実は“合気道経験者”という、意外な一面を持っている。

今年5月に配信された「イーデザイン損保」新TVCMのインタビュー動画によると、松坂が主演を務めた特撮ドラマ『侍戦隊シンケンジャー』(テレビ朝日系)で合気道の経験が存分に生かされたとのこと。
作中には爆発や敵の攻撃によって身体ごと吹き飛ばされ、そのまま転がるシーンが多くあり、その時に役立ったのが合気道の受け身だった。

実は松坂は元々空手を習いたかったそうだが、近所に道場がなかった都合から、仕方なく合気道を習ったという。しかし『侍戦隊シンケンジャー』の撮影時には、学生時代から体に染みついていた動きが演技とかみ合ったことで、「ここで役に立ったか……!」という感情がこみ上げたそうだ。

ちなみに彼のパートナーである戸田恵梨香は、少林寺拳法初段の持ち主。彼女の父親が少林寺拳法の師範で、戸田自身も子供の頃に少林寺拳法を学んでいた。合気道と少林寺拳法……2人はまさに芸能界最強カップルと言っても過言ではないだろう。

少林寺拳法といえば、『るろうに剣心』の実写映画で一躍話題になった俳優・佐藤健も初段の実力者だ。彼は少林寺拳法を6年間習っていたそうで、そこから得た類い希なる運動センスは『るろうに剣心』や『亜人』など、さまざまな作品に生かされているように思える。

例えば映画『亜人』は不死の人間「亜人」を題材にした物語であり、劇中にはアクロバティックなアクションが数多く登場する。これを佐藤は「死なないからこそできること、しかないアクション」と語っており、自身も屋上からワイヤー1本でダイブするなどのあらゆるアクションに臨んでいた。

“実写不可能”と言われたアクションマンガの実写化に成功したのは、佐藤の卓越した運動能力と役者魂があったからこそだろう。

一方『るろうに剣心』では、何十人もいる敵に向かって身軽さを生かして殺陣を繰り広げ、「壁を蹴って相手に斬りかかる」「屋根から屋根へ飛び移る」など、派手なアクションに挑んでいた。
YouTubeなどに上がっているメイキング映像を見て、彼の運動神経の高さに驚いた人も多いのではないだろうか。

佐藤が「不殺(ころさず)」を誓った伝説の人斬り・緋村剣心を見事に演じ切れたのも、“自分や他人を守り、生かすためのもの”として作られた少林寺拳法の教えが影響しているのかもしれない。

それぞれの役者が持つ格闘技の技術は、彼らの演技に深みとリアリティを加え、観る者を引きつける。役者にもさまざまな能力が求められる中、見た目の格好よさだけではない、本物の身体能力を持った彼らの人気はこれからも衰えることは無さそうだ。

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