【写真】キャスト陣が適役、Netflix映画『ゾン100』場面カット
まず冒頭ではアキラ(赤楚衛二)がブラック企業で疲弊しているところから始まるが、アニメとは違って上司の小杉(北村一輝)からのパワハラにリアリティがあってなおかつねちっこい。机を叩きながらアキラに罵声を浴びせており、『半沢直樹』(TBS系)の“机バンバンニキ”こと小木曽(緋田康人)を思い出させるほど。ただ、ゾンビが大量発生してアキラが自由を手に入れた後、小杉は登場しなくなるが、後半でアキラは小杉と再会する。映画では後半に小杉とアキラを対峙する構図を明確にするため、小杉の印象をより濃くするためにヒールムーブを強めに描いたのかもしれない。
また、アニメは1話30分の全12話の放送が予定されている一方、映画は約2時間となっている。アニメは尺に余裕があるため、アキラ以外の登場人物にスポットライトが当てられるが、映画はアキラを軸にどんどん突き進む。親友のケンチョ(栁俊太郎)をアキラが助けに行くシーンは共通しているが、アニメの3話ではケンチョがゾンビから逃げている最中に自身の“ゾンビになる前にやりたいこと”として、お笑い芸人になることを誓うシーンがある。ただ、映画ではそのことはラストにさらっと描かれているのみ。映画ではケンチョやシズカ(白石麻衣)といった主要キャラを掘り下げられていない。
しかし、その分アニメでは2人の魅力やバックボーンなどは描かれている。
ちなみに、アニメと比較しながら見るとより楽しめるが、映画『ゾン100』それだけでも十分楽しい。それはキャストが適役だったことが大きい。アキラは赤楚衛二が務め、パワハラで心が弱ってしまう姿や、ゾンビと勇敢に立ち向かう姿など、様々な表情を見せる役を見事にこなしている。『仮面ライダービルド』(テレビ朝日系)や『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)などに出演して幅広い役を経験があるからこそ、アキラの成長をより感じられた。
冷静沈着で合理的な思考回路を持ち、戦闘能力も高いシズカを演じる白石もハマり役。とにかく白石にはクールビューな役が良く映える。『風間公親 教場0』(フジテレビ系)では優秀ではあるものの男運のない新人刑事・鐘羅路子を演じて役者としての幅広さを見せた。それでも真顔できつい言葉を吐きつつも、時より微笑みを見せる白石にはついつい視線を奪われてしまう。
ケンチョ役の栁も最初はアキラ同様になよなよしている印象を受けたが、徐々にケンチョらしい力強くを見せる。特に栁は金髪が似合っており、途中から金髪に変えて以降はより勇敢さに磨きが語った印象。アキラが信頼を寄せたくなるのもわかるほど、ユーモラスで力強いケンチョという役に合っていた。
ストーリーはもちろん、演技やCGも楽しめるエンターテインメントとなっており、何周もしたくなる映画だった。また、どちらもゾンビのようなに思考停止して、心を殺しながら生きていくことへの違和感を突きつける内容となっている。軽い気持ちで見ながらも、自分の生き方を振り返る機会も与えるゾンビ作品ではあるが、ヒューマンコメディの側面も強い作品だ。
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