【関連写真】鈴木亮平の狂気じみた悪役ぶりが話題になった『孤狼の血2』
まず一人目は、リリー・フランキー。彼は2013年に公開されたサスペンス映画『凶悪』で、初の悪役に挑戦した際、驚くべき才能を見せ付けた。
同作は実際に起きた凶悪殺人事件をベースとして作られた作品であり、暴力的なシーンで満ち溢れている。しかし実際に手を下すのは、ほとんどがピエール瀧演じる暴力団員だ。リリー・フランキーが演じた不動産ブローカーの「先生」は、被害者が苦しむ姿をただニコニコと笑って眺めるという異様な人物像だった。
直接手を下した際の迫力もすさまじく、物語中盤では命乞いをする老人に非道のかぎりを尽くし、楽しそうにはしゃぐリリー・フランキーの姿があった。まさしく“凶悪”と言うにふさわしい姿に、誰もが恐怖したのではないだろうか。
『凶悪』を手がけた白石和彌監督作品でいえば、映画『孤狼の血 LEVEL2』の鈴木亮平も忘れてはならない。彼が演じたのは“悪魔の男”とも呼ばれる凶悪なヤクザ・上林成浩。
鈴木はストイックな役作りをすることで有名だが、同作でもそうした入れ込みようは健在だったようだ。コロナ禍により通常よりも長く脚本の読み込みを行ったらしく、そのセリフ一つ一つに組長役の圧が感じられる。
さらにもみあげをバッサリ切り、特徴的で尖った形をしている耳を大胆に見せるように工夫もしたそう。その筋肉質な肉体と相まって、まさに悪魔的な見た目が完成していた。
スクリーンに顕現した暴力の化身に恐怖を味わったのは、何も観客だけではない。同作の完成披露イベントでは、共演者たちが口をそろえて恐怖を口にしており、早乙女太一に至ってはジャージにマスク姿で佇む鈴木の姿について「広島のやべぇヤツが来たんじゃないかなと思った」と語っていたほどだ。
実力派俳優・伊藤英明が悪役としてもっとも輝いた作品といえば、誰もが映画『悪の教典』を挙げるだろう。
同作で伊藤が演じた蓮実聖司は、生徒から“ハスミン”という愛称で呼び親しまれている人気教師。しかしそれは全て仮面にすぎず、本性は人を殺すこともいとわない「生まれながらのサイコパス(反社会性人格障害)」という設定だ。
海難救助に命をかける正義のヒーローを演じたドラマ『海猿』(フジテレビ系)などが印象的な伊藤だが、『悪の教典』ではそんな善人の顔が反転し、究極のヴィランへと変貌する仕組みとなっている。
蓮実は生徒の命を奪う行為を、単なるゲームとしか考えておらず、ショットガンで次々に生徒たちを撃ち殺していく。そして極悪非道な行為のなかでも、さわやかな教師風の笑顔を崩さない。返り血を浴びつつ人懐っこい笑顔を浮かべる“ハスミン”の姿は、不気味そのものだ。
ちなみに同作が公開された2012年は、映画『BRAVE HEARTS 海猿』が上映された年でもあった。
いずれも幅広い演技を得意とする役者たちだが、だからこそ鮮烈なイメージの悪役が際立って見えるとも言える。今後の出演作でも、ふたたびその恐ろしい顔を突如覗かせるかもしれないので、ぜひ注目しておいてほしい。
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