いよいよ最終盤を迎えた『VIVANT』。第9話放送直前には、麒麟川島明と田村真子アナのラヴィット!コンビ司会による『緊急生放送 150 分 SP』が放送され、堺雅人阿部寛二階堂ふみ二宮和也松坂桃李ら豪華キャストも勢揃い。
ラストスパートに向けて盛り上がりを見せた。個人的には、バルカ警察チンギスを演じるバルサラハガバ・バタボルドと、彼の格好に扮したレイザーラモンRGの奇跡の2ショットがツボでした。(以下、これまで放送されたドラマのネタバレを含みます)

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第8話も異色だったが、第9話はそれに輪をかけて異色。何しろ今回はバルカ共和国のみでストーリーが進行し、日本パートがいっさい出てこない。つまり、野崎(阿部寛)も薫(二階堂ふみ)も登場しない。ラスト直前回としては、かなり“攻めた”構成となった。


前半パートでは、秘密組織テントがバルカ北西部の土地を買いまくっている理由が明かされる。地下資源が豊富なバルカでは、99%という超高純度フローライトの鉱脈が眠っていて、それを採掘することで恒久的な資金源を得ることができる。テントはそれを狙っていたのだ。だが、土地を購入するにも莫大な金がかかるため、金銭と引き換えにテロ活動を請け負っていた。

そこで乃木(堺雅人)は、別班が手に入れた情報を元に信用取引を仕掛ければ、誰一人傷つけることなく莫大な売却益を得られると提案。ストップ安を狙って追加の資金を投入したり、とにかく株価を下げようとする『半沢直樹』的展開に突入する。
サスペンス・アクションにとどまらず、あの手この手で視聴者を楽しませようとする『VIVANT』のエンターテインメント精神には、ただただ感服するばかり。

そして後半パートは、ノゴーン・ベキ(役所広司)の壮絶な過去が語られる。日本警察の公安所属で、スパイとして農業使節団の一員としてバルカを訪れた乃木卓(林遣都)は、なぜ最愛の妻・明美(高梨臨)を失うことになったのか。息子の憂助と別れることになったのか。ノコル(二宮和也)、バトラカ(林泰文)、ピヨ(吉原光夫)たちとはどのように出会ったのか。そして、謎のテロ組織テントを創設するに至ったのか。


巨大組織の結成秘話という意味では、『ゴッドファーザー PART II』(1974年)を思わせる展開。

最後の最後で、乃木が射殺したと思われていた別班工作員たちは実は生きていて、全ては別班としての潜入捜査だったことが明かされる。やはり、レオナルド・ディカプリオが暗黒街に潜り込む『ディパーテッド』(2005年)のような<潜入捜査官モノ>だったか。

貧困層の子供たちを救うことが目的だったとはいえ、テントはこれまで数々のテロ活動に関わってきた。おそらく乃木の目的は、“テントの最終標的は日本”という噂は本当なのかどうか、確かめることだったのではないか。だとすれば、ノゴーン・ベキが「祖国を標的にすることはない」と明確に否定したことから、日本の治安維持のために暗躍する別班がこれ以上テントに関わる必要はない。


そうなるとお話は終わっちゃう訳で、何らかの誤情報によってテントは日本を標的にしていると認識してしまい、別班と公安が入り乱れてテント殲滅作戦に取り掛かる、というストーリーはあり得ることだ。そしてテントと別班との間で板挟みとなった乃木が、自分を犠牲にして愛する者たちを救おうする…とか。

最終回を直前に控えて、筆者には悲劇的な結末しか思い浮かばない。願わくは、その想像が間違っていますように!

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