【写真】「自分を取り戻すための一戦」才賀紀左衛門の撮り下ろしカット【5点】
「当たり前ですが、俺の本業は格闘家です。格闘技が心の底から好きだし、自分を表現できるのは格闘技でしかない。だけど、実際は2年ほど試合から遠ざかっていまして。その理由はプライベートがゴタゴタしていたのもあるけど、それ以上に大きかったのはケガの問題。
これは当初考えていたよりも深刻で、正直、今も試合時間が長くなると不安が残るんです。その点、Breaking Downルールは1分間じゃないですか。ちょうど自分に合っていたんですよね」
そうしたルール面に加えて、才賀はBreaking Downの注目度の高さにも魅力を感じているようだ。これは彼のキャリアにも大きく関わってくる話である。というのもK-1デビュー戦こそ大晦日の「K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!」で派手に地上波放送されたものの、その後は格闘技界が冬の時代を迎えたことによって露出が一気に低下。“知る人ぞ知る存在”になることを余儀なくされた。
「RIZINに出たときも、『なんで立ち技の選手が総合(格闘技=MMA)をやらなくちゃいけないの?』という声はあったんです。でも僕としては、その時点で一番勢いのある舞台に上がることを優先したかった。これに関しては、僕と同じ考え方をする選手は多いはずですよ。
今の時代、普通に格闘技をやっていたら、Breaking Downを目指すのは当然の話。だって、単純に一番注目度を集めている舞台なんですから」
しかし、一方でレジェンドの魔裟斗やRIZINフェザー級王者になった鈴木千裕からは「ヤンキーが輝くと格闘技の未来がなくなる」「彼らが格闘技の質を下げている」などと大会の存在意義を問題視する声が挙がっているのも事実。
「(否定的な意見には)じゃあ逆に聞くけど、『不良が更生したら、あかんのか?』という話。そりゃ魔裟斗さんはいいですよ。すでに社会的に成功している立場なので、好きなように言えるでしょうね。
千裕に関しては、根が真面目なガリ勉タイプ。だから、くすぶっている奴らの気持ちがわからないんだと思う。
Breaking Down批判には2つの論点がある。「社会通念や教育上、よろしくない」という角度のほかに、「競技レベルが低すぎる」という意見だ。格闘技マニアは「1分間では攻防が少ない」と敬遠する傾向があり、それゆえに「Breaking Downはオーディションが本番で、試合自体はおまけ」と揶揄されるのも事実だ。
「正直言って、RIZINに出ているトップどころでも1分間のBreaking Downルールでは勝てない選手が大勢いると思いますよ。公開されたオーディション動画では『プロなんだから勝つのは当たり前』みたいな感じで自分は煽っていますけど、本音を言えばチャレンジする側の気持ちで今はいます。
今後、Breakng Downルールが浸透して、競技として成熟していったら、格闘技の可能性が広がっていくと俺は思う。ケガのリスクも少なくなるでしょうしね。空手の試合だって1分とか2分が多いし、時間が短いからつまらないというのは論点がズレています」
才賀によると、もし時間無制限で倒れるまで闘うことになったら、プロ側が圧勝するのは明白だという。時間が長くなればなるほど、技術の差が出てプロ選手が負ける要素は少なくなるというのだ。
だが、これまで多くの強豪たちとしのぎを削ってきた才賀自身も、Breaking Down初出場にあたって油断禁物だと気を引き締めている。SNSでは「弱い者いじめして出稼ぎ 最高」などと憎まれ口を叩いていたが、実際は1分間ルールに合わせて細かい調整を重ねている。
「結局、今は俺が何をやったところでプライベートのことばかり騒がれるじゃないですか。あることないこと好きなように書かれて、それに対しては反論したいことだってあるんです。本当に誤解と勘違いばかりですし。とはいえ、一番大事なのは子供の気持ちですからね。
1年とは言わないまでも、1週間とか3日とか俺の家に記者の人が密着したら実際の様子が伝わるんだと思う。娘は俺がおもいっきり愛情をかけてあげないとダメ。大切に育ててあげられるのは俺だけというのは明らかですから。もっとも記者の人だってPVを稼いだり雑誌を売るのが仕事だから、理解できる部分はあるんですけどね」
半ば諦めたように現状を語る才賀だが、今回のBreaking Down参戦は自身のキャリアにとっても大きな分岐点になると総括する。絶対に負けられない理由があるというのだ。
「今だから言うと、俺は格闘技を信じられなくなった時期があったんです。K-1のテレビ放送がなくなって、RIZINが人気になるまでの間は『東京に出てきたはいいけど、格闘技一本で本当にやっていけるのかな』という不安が常につきまとっていましたから。
当時はYouTubeで発信していくという方法もなかったですしね。そんなときに俺は喋りも達者だったもので、芸能界の人たちと遊ぶようになっていったんですよね。そこでいろんな人脈ができたし、前の奥さん(あびる優)とも結婚しまして。
でも、それって格闘技から目を逸らしたということでもあるんですよ。一方で武尊なんかは愚直なまでに格闘技に打ち込んで、あれだけの存在になった。本当にすごいことだと思います。逆に俺は自分に負けたんですよ。それが悔しい。
だから今回のBreaking Downは自分を取り戻すための一戦でもあるんですよね。繰り返しになりますが、俺が存在意義を証明できる場所は格闘技でしかない。ここから再び這い上がりたいと思います」
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