ドラマを視聴するとき、その作品が描く”時間”について注目したことはあるだろうか。日本のテレビドラマの多くが10話完結となっており、作品によって9話、11話で完結することや、シリーズ化して数クールにわたって放送することもある。


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今期のドラマでは、月9『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ)と日曜劇場『下剋上球児』(TBS)が物語において印象的な時間の使い方をしている。今回は、毛色の違うこの2作品が、どのように時間を捉えてストーリーを展開しているのか考えたい。

『ONE DAY』は、2023年12月23日23時30分に銃殺事件が起きたことをきっかけに、登場人物たちにとって翌日のクリスマス・イブがどんな1日であるかを1クールかけて描く。

銃殺事件の容疑をかけられたものの、記憶をなくし逃亡している勝呂寺(二宮和也)と、地方テレビ局のキャスターとして銃殺事件を追う倉内(中谷美紀)、レストランのシェフでクリスマスに向けて準備を進める・立葵(大沢たかお)という3人の物語。

ある1日を切り取ったドラマといえば、「物語上の24時間を1時間ずつ、24話で描いた」ドラマ『24-TWENTY FOUR-』を思い描く人も多いだろう。しかし、先述したとおり日本のテレビドラマはおおよそ10話で完結することが多い。

そこで『ONE DAY』では、各話ごとに描く時間の長さを変えながらも、細かい時間設定を視聴者に示している。第1話では、クリスマス・イブの0時00分から7時19分まで、第2話は7時29分から8時36分までの1時間7分を描いた。時間は進み、11月20日に放送された第7話は14時19分から15時36分だった。時間軸からも、物語は後半に差し掛かり佳境を迎えようとしているのがわかる。

興味深いのは、毎話エンドロールで示される時計が少しずつ進んでいることだ。何時にどのような出来事が起きていたのか、時間を中心にして内容の振り返りができる仕組みだ。


主演のひとりである二宮和也も自身のX(旧Twitter )で、毎話の時間軸についてツイートしており、細かい設定が重要であることを伺わせている。今はまだ気づかされていない伏線も多いのかもしれない。

他方で、3年という長期間を描くのが『下剋上球児』だ。本作は、2018年の夏の甲子園に初出場した三重県の県立白山高校野球部を追った書籍「下剋上球児」(菊地高弘著)からインスピレーションを受けている。

下剋上とは、訳ありな教師・南雲(鈴木亮平)とともに弱小野球部が甲子園に初出場を決めることであり、ドラマでもそこまで描かれるであろうことが事前にわかっている形だ。

各話の最後には「下剋上まで◯日」と表示されていることから、同作も時間軸を意識している。第1話では「下剋上まで822日」だったが、3年生が引退し、新しい1年生が入ってくるなど学年も変わった第6話では「下剋上まで373日」と少しずつ迫っている。結末が予想できるからこそ、カウントダウンで時間軸を意識させるのも有効だ。

上記2作品からもわかるように、時間が示されることによって臨場感やリアルな追体験ができるというメリットがある。一方、結末や物語の着地点を予想しやすくなるという弱点も抱えているわけだ。

しかし『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』、『下剋上球児』ともに話数を重ねるごとに物語に深みが増しており、面白さは右肩上がり。たとえ物語の結末が読めたとしても、最終話まで楽しみにしている視聴者は多いだろう。
時間や期間が見えていることで、視聴者に安心感を与え、落ち着いて楽しめる余地も生まれているのではないだろうか。

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