岩手・宮城・福島を舞台にした『フラ・フラダンス』(2021)や、岩手を舞台にした『岬のマヨイガ』(2021)など、これまでも地域活性化、震災地復興支援の一環として多くの作品が制作されてきた。公開中の映画『レディ加賀』は、石川・加賀温泉にある老舗旅館を舞台にした作品だ。


【写真】小芝風花が老舗旅館の若女将に、『レディ加賀』場面写真【4点】

アニメや映画、ドラマなどを通して地方を描くことは地域活性化のツールとして大きく機能しており、今後も地域を舞台にした作品は多く作られていくだろう。

名産を全国的に宣伝したり、アニメの聖地巡礼など、独自の魅力を開拓していこうと、どこの地域も常に模索しているのだが、どうにもならない事態というのが、自然災害やコロナショックなどの予期せぬものに襲われたときだ。

力を合わせて…。一丸となって…。外部から言葉ではなんとでも言えるし、美談となるのは、何とかしのいだ後の話であって、実際問題として、かなり厳しい状況から立ち直れない人たちの方が圧倒的に多かったりする。

特に大きな影響を受ける業種のひとつが観光業である。
観光業によって成り立っている地域もあるわけで、観光業が衰退してしまうと、宿泊などの直接的な収入だけではなく、雇用や若い世代のモチベーション低下など、芋づる式に負の連鎖に陥り、一気に過疎化が進んでしまう。

さらに今回の能登半島地震で追い打ちをかけられてしまった石川県。観光業を立て直せるかどうかが復興を大きく左右すると言っても過言ではない。

今作は、10年ほど前に加賀温泉を盛り上げる為に結成された旅館の女将たちによるプロモーションチーム「レディー・カガ」から着想を得て、それをコロナショック後の現代を舞台に描いた作品。タップダンサーとしての夢に挫折しかけている主人公が、地元(原点)に戻ることで、自分の夢に改めて向き合っていくことになる。

小芝風花は『妖怪シェアハウス』や『彼女はキレイだった』などのドラマを観てもわかるように、挫折しながらも成長していく芯の強い等身大の女性を演じるのが上手く、正に本作のようなキャラクターはうってつけ。
小芝の演技がシンプルなストーリーに彩りをもたせている。『スウィングガールズ』(2004)や『チア☆ダン』(2017)のような、気持ちがバラバラだったメンバーが音楽やダンスを通して一丸となっていくという、カタルシスもある。

プロットはどちらかというと、映画というより、長尺で描けるドラマ向き。そのため、主人公の葛藤が描ききれていなかったりもするが、それも含めて小芝風花が包み込んでくれており、俳優が作品を救うとは、こういった作品のことを言うのだと改めて思わされる。

小芝風花が猛特訓で習得したというタップダンスにそれほど尺が使われていないのは残念でならないが、近年、出演作品が増えている小芝だけに、またタップダンスを披露する機会もあるはずだ。それも含めて今後の活躍にも期待したい。


【ストーリー】
樋口由香(小芝風花)は、加賀温泉にある老舗旅館「ひぐち」の一人娘。小学生の時に見たタップダンスに魅了され、上京してタップダンサーを目指したものの現実はうまくはいかず、夢を諦めて実家に戻って女将修行を始めることに。何をやっても不器用な由香は女将修行に苦戦するものの、持ち前の明るさとガッツで奮闘する。そんななか、加賀温泉を盛り上げるためのプロジェクトが発足し、由香は新米女将たちを集めてタップダンスのイベントを開催することになるが……。

【クレジット】
監督 雑賀俊朗/脚本 渡辺典子 雑賀俊朗 プロデュ-サー 村田徹 藤田修
出演 小芝風花 松田るか 青木瞭 中村静香 八木アリサ 奈月セナ 小野麻里奈 / 佐藤藍子 篠井英介 森崎ウィン檀れいほか
主題歌:眉村ちあき「バケモン」(トイズファクトリー)
特別協賛 : 加賀市
特別協力:北國新聞社
後援:石川県・金沢市
配給:アークエンタテインメント
© 映画「レディ加賀」製作委員会
公式HP:ladykaga movie.com&nbsp
2月9日(金)より全国公開

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