カントリー・ガールズを知らなくても、カントリー娘。という名前を聞いたことがある人は多いかもしれない。田中義剛プロデュースのもと、1999年から活動を開始したハロー!プロジェクトのグループだ。2007年にはメンバーが里田まい一人となり、長いあいだ活動休止状態となっていたが、2014年、里田が夫の田中将大と渡米するにあたって新メンバーが募集される。
そのオーディションでは該当者がいなかったものの、Berryz工房の無期限活動停止を翌年に控えていた嗣永桃子、ハロプロ研修生から稲場愛香と山木梨沙、当時開催されていたモーニング娘。オーディションの応募者から森戸知沙希、島村嬉唄、小関舞の6名で再始動。
グループ名は「世界に羽ばたくグループになるように」と、カントリー・ガールズに改められた。そしてその年末、彼女たちはデビュー曲「愛おしくってごめんね」と「恋泥棒」を披露。ハードなダンスやクールな曲調が多かった当時のハロプロでは新鮮な、THE アイドルな楽曲とキャッチーな振り付けで、あっという間にファンの心を奪っていく。
楽曲もさることながら、恥ずかしがり屋だが勝ち気な森戸、ファンの歓声に照れてしまう透明感抜群の島村、物怖じしないボーイッシュな小関の年下組、そしてあざとさに定評のあった稲場、頭の回転が速く喋りの上手い山木の年上組という、メンバー構成のバランスも素晴らしかった。
そんな新人メンバーのフレッシュさに立ち向かいながら、これまで突き進んできたアイドル道について、そしてファンを楽しませるすべを叩き込むベテランアイドル・嗣永の手腕はさすがとしか言いようがない。その成果は2ndシングル「わかっているのにごめんね」ですでに発揮されており、初々しさに加え、“ももち先輩”から学んだかわいらしさをそれぞれが体現している。そしてパフォーマンスはもちろん、掛け合いの面白さ、山木による紙芝居までもが楽しめる1曲だ。
その後、2015年6月に島村が脱退、そして11月にはハロプロ研修生から船木結と梁川奈々美が加入する。
ちゃきちゃきと明るい大阪っ子・船木、そして口が立つ優等生な梁川。2人ともとにかくポテンシャルが高かった。同期でともに小柄だが、タイプの違う2人はいつしか“やなふな”と呼ばれ、ファンからもメンバーからも愛される存在に。
そして2人が加入して最初のシングル「ブギウギLOVE」では、これまでのとにかくラブリーな世界観から、グループの新たな一面ともいえる強く凛々しい表情を見せる。特に船木の力強い歌声はカントリー・ガールズの表現の幅を広げてくれたように思う。
2016年の4月に稲場が活動休止、8月にはそのままグループを卒業する。そして11月、プレイング・マネージャーとして後輩たちを率いてきた嗣永が、翌年の6月をもってグループおよびハロー!プロジェクトからの卒業、芸能界を引退することが発表された。
カントリー・ガールズがどんなときもステージの流れを自分たちのものにし、ときに毒っ気を交えながら、ファンを楽しませる愛らしいパフォーマンスができるのは、嗣永の背中を追いかけ続けてきたからだろう。
ファンに媚びる可愛らしさではなく、それぞれが自分らしく強い意思を持つことが今を生きるアイドルとして重要なことなのだと、アイドル人生をかけて私たちに、そして後輩たちに教えてくれた。彼女たちのステージを見ていると、今もどこかで“ももち先輩”の存在を感じてしまう。
嗣永が卒業する少し前、ハロプロファンを騒がせる出来事があった。それはカントリー・ガールズのメンバーが他グループを兼任するということだ。
森戸はモーニング娘。、船木はアンジュルム、梁川はJuice=Juice、山木と小関は兼任はせず学業を優先しながらの活動に。そこから兼任メンバーはそれぞれのグループでの活動がメインとなり、山木は大学生アイドルユニット・カレッジコスモスとしての活動を始め、カントリー・ガールズの活動を見られる機会はハロー!プロジェクトのコンサートとファンクラブイベント、そしてレギュラーラジオだけになってしまう。
そんな状況の中、今年3月には梁川がカントリー・ガールズとJuice=Juiceから卒業、芸能界を引退。そして今回のグループ活動休止の発表だ。どこかやるせない気持ちも感じながら、ファンはその決断を受け入れようとしている。
今年の夏、4人体制になって最初の楽曲「One Summer Night~真夏の決心~」が配信された。MVでは、ずっと抱えてきた恋心や夢への思いを打ち明け、前に進むメンバーの姿がドラマ仕立てで描かれている。
カントリー・ガールズは約5年の活動を経て、アイドルの王道でありながら、今の時代にアップデートしたチャーミングなグループへと成長した。これまで培った実力や学びは、それぞれの道を歩む彼女たちにとって、きっと大きな助けになるのだろう。
そしてファンもこれまでカントリー・ガールズにもらった感動や笑い、涙をすべて糧にして、美しく羽ばたく彼女たちをどんなときも応援し続けるのだ。いつか「すごいじゃん、そんな未来」と言える日がくるように。