【写真】阪神淡路大震災のシーンが描かれた『おむすび』第5週【5点】
「おいしいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」これは第1回で海に帽子を落とした男の子に、第5回で栄養失調になったスズリン(岡本夏美)に結(橋本環奈)がかけた言葉だ。そして今週放送の第23回で、この言葉が祖母・佳代(宮崎美子)から結に伝わったものだと明らかになった。
1995年1月、神戸で被災した米田一家は避難所生活を送ることに。状況を把握できていない6歳の結(磯村アメリ)は、差し入れのおむすびを食べて思わず「これ冷たい」「ねえチンして」とポツリ。いつもと違うことが起きているとは理解しつつも、この時は結も歩(高松咲希)もまだ気力が残っていた。
しかし翌朝、二人は崩れ落ちた自宅をを目にし被害の大きさを知る。結が「これ何?」と無邪気に聞いてしまうほど、建物は潰れ傾いていた。そしてその後、歩の親友・真紀(大島美優)がタンスの下敷きになり亡くなったという辛い現実が二人を襲う。
歩はその日から心を閉ざし、ご飯も食べず誰とも喋らなくなってしまった。結もふさぎ込む姉を心配してか「お姉ちゃん、お姉ちゃん」と声をかけていたが、歩の心はそう簡単には戻ってこない。そんな歩を見かねて、米田家は避難所を離れて糸島で暮らすことになる。
糸島に着くと祖母・佳代がおむすびを握ってくれていた。佳代は「歩、おいしいもん食べたら悲しいこと、ちょっとは忘れられるけん」と二人におむすびを差し出す。しかし歩はなかなかおむすびに手を付けようとしなかった。そこには「悲しい記憶を忘れてしまいたい自分」と「真紀ちゃんのことを絶対に忘れたくない自分」との間で揺れ動く、葛藤があったのかもしれない。
それでも歩は生きるために「食べる」選択をした。何日ぶりの食事だったのだろう。一口一口おにぎりを噛み締める歩の目には、じんわりと涙があふれていく。こんなにも悲しいのに「生きる」ことを望んでいる自分を、ゆっくりと受け入れていくような場面でもあった。
思えば佳代は第18回でも、震災のことを思い出し部屋に閉じこもっていた結に「おいしいもん食べたら、悲しいことちょっとは忘れられるけん」とおむすびを差し入れていた。全ての悲しみを取り除くことはできなくても、ご飯を食べるこの瞬間だけは少し悲しみと距離を置ける。涙を拭いながら食べる温かいご飯は、生きることを肯定してくれているような気がするのだ。
食べることは生きること。
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