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今まで比較的ローギアで進んできたこのドラマだが、この第4話では一気にギアが変わる。
百合子の家族は敬虔なカトリック教徒。子供の頃はキリスト教を信じていた百合子だったが、原爆によって理不尽に多くの人々の生命を奪われた事実を受け止めきれず、「戦争は終わってない」、「神は何もしてくれない」と和尚(さだまさし)に心のうちをぶちまける。神は苦しんでいる者たちに、手を差し伸べてはくれないのだと。
本エピソードのタイトルは、「沈黙」。遠藤周作が1966年に発表した小説と同じタイトルだ。この小説もまた、キリシタン弾圧下の江戸時代に、ポルトガルからやってきたイエズス会司祭が、“神の沈黙”に苦悩する物語だった。脚本を書いた野木亜紀子は我々に、「神なき時代にあって、何を信じればいいのか」という重いテーマを投げかけてくる。
百合子の訴えに、和尚は「神も仏も何もしないとよ。何かするとは人間の業」と静かに語りかける。
第4話は、故人の霊を弔うために行う伝統行事「精霊流し」のシーンで幕を閉じる。そして「精霊流し」とは、さだまさしがフォークデュオのグレープ時代に発表した楽曲。第16回日本レコード大賞の作詞賞を受賞したこの曲には、さだまさしの親戚が事故で亡くなったときの想いが込められている。
鎮魂の歌であり、鎮魂の行事でもある「精霊流し」。とっくの昔に放棄していたはずの“祈り”という気持ちが、おそらく百合子に再び芽生え始めたのだろう。これまで百合子は、朝子(杉咲花)の何気ない行動がきっかけで被ばくしてしまったことから、その本当の理由も言えないまま、ずっとわだかまりを感じていた。
盆踊りの夜、百合子は朝子に浴衣を着付けながら、これまでの言動を詫びる。おそらく第5話以降、この二人は単なる幼馴染ではなく、新しい友情関係が築かれていることだろう。そのきっかけとなったのが、「精霊流し」。さだまさしの起用は、神キャスティングだったのである。
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