2025年度後期のNHK朝の連続テレビ小説『ばけばけ』(9月29日スタート)の公式SNSで、ヒロインの母親を演じる女優の池脇千鶴の劇中ビジュアルが公開され、SNS上で衝撃の「激変ぶり」に驚きの声が上がっている。池脇はドラマ出演のたびに徹底した役作りで視聴者を驚かせており、今作でも熱演が期待できそうだ。


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『ばけばけ』は、松江の没落士族の娘・小泉セツと、その夫で明治の文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにした物語。同ドラマの公式SNSは、キャラクターの人物紹介とともにキャストの劇中ビジュアルを続々と公開し、主人公の松野トキを演じる髙石あかりをはじめ、その夫となるレフカダ・ヘブン役のトミー・バストウ、トキとヘブンの人生に大きな影響を与える英語教師の錦織友一役の吉沢亮らが紹介された。

8月5日付の投稿では、トキの母・松野フミ役の池脇が登場。伝統的な日本髪で和服姿、少しふっくらとした顔立ちでにっこりと微笑んでいる。これに対し、ネット上では「役作りがすごくて衝撃」「若いころのイメージが強かったから激変にびっくり」「本当にリアルでいそうなお母さんになりきってる」などと驚きの声が続出した。

池脇といえば、1997年に第8代「リハウスガール」に選ばれて芸能界デビュー。2001年には、NHK朝の連続テレビ小説『ほんまもん』でヒロインを務め、あどけなさの残る顔立ちと人懐っこいキャラクターで人気を博した。当時は王道の清純派女優という印象が強く、このころのイメージが現在も残っている人は少なくない。そのため、今回の「ヒロインの母」役のビジュアルに驚いた人が多かったようだ。

ただ、池脇の「激変」が話題になったのは今回が初めてはない。今年2月にフジテレビ系ドラマ『秘密~THE TOP SECRET~』にゲスト出演した際には、ダボッとしたワンピースにボサボサのロングヘア、メガネ、ふくよかな体型という姿で、ある秘密を抱えた「さえない中年女性」を熱演。ネット上の視聴者は「クレジットを見るまで池脇千鶴だとわからなかった」「本人だと気づかないレベルの役作り」などと騒然となった。


2021年に主演したフジテレビ系ドラマ『その女、ジルバ』では、恋も仕事もうまくいかず絶望感を抱いたまま40歳の誕生日を迎えた独身の主人公が、平均年齢70歳以上の「超熟女バー」のホステスとして働くことで新たな人生観を得ていく姿を好演。ぽっちゃりした顔やシワをあえて強調し、背中を丸めて自信なさそうな様子を表現するなど、生々しく40歳のヒロインを演じ切った。この時も多くの視聴者は「池脇千鶴の徹底した役作り」に驚き、圧倒された。

昨今では、芸能界はもちろん一般社会でも「奇跡の〇〇歳」「美魔女」といった存在がもてはやされているが、池脇の役作りはその流れと完全に逆行し、とことんリアリティを追求している。先述したように「もはや池脇千鶴だとわからない」というレベルまで役作りするのは、女優という仕事の究極の形ともいえそうだ。

多くの経験を積んでたどり着いた境地だと思えるが、業界内では「実は若手時代から徹底した役作りには定評があった」との声がある。その片鱗が見えたのが、2003年にヒロイン役で出演した映画『ジョゼと虎と魚たち』だ。

同作は、下半身が不自由なジョゼ(池脇)という女性と大学生の恒夫(妻夫木聡)の切ない恋を描いた物語。池脇が演じたジョゼは、障害を持ちながらも気が強く、エキセントリックな女性。劇中ではベッドシーンにも体当たりで挑戦した。

当時の池脇は芸能界屈指の清純派女優で、アイドル的な人気を誇っていた。ふつうなら胸キュン系の恋愛作品などに出演するのがセオリーだが、彼女は今作で早くも清純派の殻を打ち破り、女優として芝居を追求していく意思を見せた。


演技を追求していくタイプは「独りよがりな個性派」になってしまうパターンもあるが、彼女の場合は作品を重視し、役柄ごとに別人に見えるほどの役作りをする。その姿勢を見れば、近年の「激変」と騒がれる役作りの徹底ぶりも納得だろう。

ある意味、彼女の近年の女優業の集大成になる可能性もある『ばけばけ』。芸能界でも指折りの実力派女優として、視聴者をうならせるような芝居を期待したい。

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