今年9周年を迎えるHKT48。秋には新劇場のオープンも控え、HKT48はどう動き出しているのか…ドキュメンタリー形式で綴る短期集中連載がスタート。
長年グループの活動を追い続けてきた元『週刊プロレス』記者で、『活字アイドル論』『ももクロ独創録』など多くの著書を持つ小島和宏氏がメンバーへの徹底取材を行い、HKT48の「今」に迫る。第9回目は、次世代エース、ドラフト3期生の渡部愛加里が登場。自粛期間中、ポジティブで有り続けたという彼女、その真意とは…。(毎週土曜日午前7時公開)

※第8回<“もう泣かない…”HKT48・松岡はなが新劇場オープン直前に決意表明「福岡の“顔”になりたい」>はこちらから。

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この記事がアップされる2日後、11月2日にいよいよ『西日本シティ銀行 HKT48劇場』がオープンする。
 
初日に関しては「九州エリア在住の方」限定で、客席も1席ずつ空けての観覧となるので、キャパシティーの半分以下の128席でのスタートとなるが、コロナ禍で迎えるオープン日としては、これぐらい慎重になるのは当然のこと。これから劇場はずっとそこにあり続けるのだから焦ることはない。
 
実はそういう考え方ができるようになったのは、今回、ドラフト3期生の渡部愛加里の取材をしたことが大きい。

「せっかく選抜に入ることができて、しかも、すごくいい曲だったのに、出るはずだった番組やイベントのスケジュールがすべてなくなってしまって……自粛期間に入るまでは毎日のように公演をやっていたし、私がHKT48に入ってから、こんなに長くあいだが空くことがなかったので、最初はやっぱり胸が苦しくなりました」
 

2年前に開催された「第3回AKB48グループ・ドラフト会議」において、渡部愛加里は3チームから1位指名を受け、抽選の結果、HKT48・チームHに加入。昨年、リリースされた『意志』では早くも初選抜入りを果たし、新曲の『3-2』でも連続の選抜入り。さぁ、これから……というところでコロナショックが襲いかかってきた。
 
そのときの絶望感はこの連載でも多くのメンバーが語ってきてくれたが、渡部愛加里はすぐに気持ちを切り替えることができた、という。


「たしかに不安でしたけど、逆に考えたら、時間に余裕ができたわけじゃないですか? 私、なにかをやろうと思っても、いつも三日坊主で終わってしまうので、この時間を利用して、いままで苦手だった『ひとつのことを継続すること』をやってみようって」 
 
彼女がチャレンジしたのは、毎日の筋トレだった。

「あんまり体力も筋力もないほうだったので、いままでもやらなくちゃいけないなって思っていたし、何度かやろうと思ったんですけど、やっぱり忙しいときには続けることができなかったんですよ。
 
でも、毎日、おうちにいなくちゃいけないって状況になったので、これは自分のためにたくさん時間を使えるチャンスだなって。動画を見ながらやるんですけど、最初はほんの数分間の動画でも大変でした(苦笑)。でも、ゆっくりと自分のペースで進めることができるので、いまではちゃんとできるようになりました! 公演でのパフォーマンスでその成果を見せることができたらいいですね」
 

あくまでも劇場公演やコンサートが再開される日を見越しての努力。彼女が家で筋トレをはじめた時点では、これからの予定はまったくの白紙だったのだが、あくまでも前向きに毎日を送ってきた、という。

「基本、ポジティブなんですよ、私。ポジティブに考えたら、自粛期間もある意味、自分のためになった有意義な期間だったのかなって思います」
 
大人たちが、というか、もう世界中がどうしていいのかわからずにあたふたしていた時期があったことを思えば、なんとも冷静すぎる考え方! しかし、たしかに焦っても状況が変わるわけではないし、渡部愛加里の言動はじつに正しいスタンスである。
 
昨年4月、横浜スタジアムでの指原莉乃卒業コンサートを前に話を聞いたら「小5のとき、私がはじめて48グループのコンサートに行ったのが、横浜スタジアムでのたかみな(高橋みなみ)さんの卒業コンサートだったんです。そこで『私の目指すところはここだ!』って(48グループに入る)気持ちが固まりました。まさか、その会場のステージに立つことができるなんて! なんか運命を感じてしまいます」と満面の笑顔で語ってくれた。

「客席から見ているよりも、さらに大きな会場だなって感じました。
ただ、さっしーさんはまだステージにいるし、あの日はまだ卒業してしまうっていう実感はなかったんですよ。それはしばらく続きましたね。お仕事をしていく中で『あっ、今日もさっしーさんがいない』と気づくことが何度も何度もあって、やっと現実のものとして受け入れられました」
 

まさにそんなタイミングで開催されたのが昨年のTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)だった。初日、野外ステージのSMILE GARDENでHKT48のパフォーマンスを見ていたら、普段、HKT48を取材していない記者たちから「今、センターでみくりん(田中美久)と一緒に歌っているのは誰?」と聞かれた。
 
1曲目の『早送りカレンダー』では田中美久と渡部愛加里がセンターを務めていた。「顔も名前も知らないけど、めちゃくちゃステージ映えするし、いいパフォーマンスをするなぁ、と思って」と言われたので、すぐに彼女について説明をした。
 
やはりドラフト1位で指名される子は、独特のオーラを放っているのだろう。アイドルになる前から、ドラフトという場で際立って目立っていたから1位指名を受けるわけで、それは当然のことでもある。
 
ステージで輝いてさえいれば、こうやってファンだけでなく関係者にも「見つかる」チャンスがいくらでもあるのだが、コロナ禍はステージごと奪っていった。そのステージが新劇場という、最高の形で帰ってくる。きっと、これから劇場の主役になるのは若い世代だ。HKT48は11月26日に9周年を迎えるが、まだ高校生のメンバーは6年後の15周年のステージにも立っている可能性が高い。
そう考えると若いメンバー層が厚く、充実しているHKT48の未来は非常に明るい。

「HKT48って、みんな仲良くて明るいイメージがあると思うんですけど、本当にそうなんですよ! 先輩方も本当に優しいので、私たちも自分を出しやすいというか“素”を出しやすいんですよね。だから、HKT48って“自分らしくいられるグループ”だなって、すごく思います。
 
グループ全体の雰囲気っていうのは、メンバーが変わっても、きっと変わらないと思うんですよ。だから、いまのグループの良さをこれからは私たちがちゃんと引き継いでいかくなちゃいけないなって。新劇場でもがんばります!」
 
昨年の横浜スタジアムで「運命」を感じた、という渡部愛加里だが、新劇場のオープン日が1期生の生配信によってアナウンスされた10月18日は、なんと彼女の16歳の誕生日当日だった。一生忘れることがないであろう日付が新劇場の歴史に刻まれた渡部愛加里が申し子として、まっさらなステージで躍動する日が週明け、ついにやってくる。来年の10周年に向けて、そして15周年、20周年に向けての新しい歴史がはじまる――。

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