PPEはコスプレ業界にプロを確立したとも言われるが、社長のよきゅーんさんは、所属するタレント達はあくまでも “家族”だという。「(PPEがやっているのは)私たちとファンによる農民一揆なんです」。笑顔でそう語るよきゅーんさんに、えなことの出会いから、コスプレイヤーへの愛情、これから目指す先を聞いた。(3回連載の3回目)
※インタビュー<1>所属事務所社長が語る、えなことの出会い「契約書を確認せずに判子を押そうとして…」はこちらから。
※インタビュー<2>芸能界とコスプレ界「頑張れば売れるということを教えたい」はこちらから。
【写真】自身もアイドル、タレントとしても活躍、よきゅーんの撮り下ろしカット【10点】
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――よきゅーんさんとしてはコスプレ全体を盛り上げていきたいという気持ちはありますか?
よきゅーん コスプレイヤーの地位向上を目指すぞ!という気持ちはモチロンあります。ただオタク業界、コスプレ業界は、それを仕事にしている人から個人と一枚岩ではないので、中には「広めないで! そっとしておいて」という人もいるんです。最終的には全体が盛り上がれればいいなとは思っていますが、今は私の事務所の子たちを守り立てていきたい、という気持ちの方が強いですね。
――とはいえ、PPEの業界で果たす役目は日に日に大きくなって来ていると思います。
よきゅーん 今ではコスプレイヤーを一タレントとして見てもらえることが増えましたね。ただ、私たちはオタクの方々に支えられてここまでこれたので、いつまでもその気持ちを忘れたくないから、みんな肩書を「コスプレイヤー」と名乗っているわけです。オタク文化に私たちは生かしてもらっているんですよ。
――そこまで謙遜されなくてもいいと思いますが。
よきゅーん いえいえ、私たちコスプレイヤーは漫画、アニメ、ゲーム……いろんな文化があって初めて成り立つ存在なので、その謙虚な気持ちは忘れてはいけないんです。驕った時が最後、足をすくわれますよ。それに、このままでは、ハロプロさんや、48グループさん、坂道さんのように10年以上続くものにできないと思うんです。作品があり続ける限りコスプレ文化は消えませんが、コスプレイヤーが売り上げを伸ばせる時期がどこまで続くのかはわからない。そのことをいつも頭に入れて、今は喜ぶ時間以上に次への道を作るための考える時間が必用だなと思っています。
――だいぶシビアなものの捉え方ですね。
よきゅーん はい。一寸先は闇ですから。また、オタク文化への理解があまりない企業さんもよくいらっしゃるんですよね。時折、コミケに参入したい企業さんがとても多いという話を聞くんです。
――いっちょかみほどオタクが嫌うものはないかもしれません。
よきゅーん そうそう! 私もいっちょかみが苦手なんです。なので私たちは義理と人情を絶対に忘れたくない、人と人とで繋がっていたいんですよ。それはうちのタレントはモチロン、雑誌編集者さん、案件をくださる企業さんもそうです。タレントの商品価値としては売れることが大切ですし、会社が大きくなり信頼度も上ればより、より多くの方のお役に立てるんじゃないかなとは思っています。ただ売れる・売れないだけを重視するのではなく、より面白いものを作っていきたいと、考えてくださる方が好きですね。私、ずっとこの仕事を続ける上で大切にしているのは、「一つひとつのお仕事を楽しむこと」。この“楽しむ”ことをやっていくことが絶対に成功に繋がると思っていて。「これはアツイ!」「これは面白い!!」と思って臨んだものって外の方にもその熱が伝わって同じ気持ちになってもらえると思うんです。
――楽しんでいる人のところには自然と人が集まってくる、というのは仕事の世界でもそうだと思います。
よきゅーん ですよね。たとえば私は未だに営業のかけかたがわからないため、基本お仕事は声かけしていただいてと言う流れなのですが、『少年チャンピオン』さんには「えなこをどうしても出したい!」と、営業したことがありまして。なぜかというと私たち、『弱虫ペダル』や『バキ』……と『週チャン』の漫画が好きすぎて、私たちも『週チャン』の売り上げに私たちも貢献したかったからなんですよ。
――完全なオタク目線ですね(笑)。
よきゅーん いかに『弱虫ペダル』が私の心の癒しになっているか、なぜ私たちがこの雑誌にかけているのか、と編集部にプレゼンしまして(笑)。私たちの仕事への原動力は「この好きな漫画が載っている雑誌に出たい!」という、オタクの妄想を実現させたいという気持ちだけです(笑)。
――「この媒体に載れば知名度が上がる」という意識とは全く遠い原動力ですね。
よきゅーん そうした「有名にしていくぞ!」という野望は二の次、三の次、それ以下で。最初にえなこを載せていただいた『ヤンジャン』さんも、『キングダム』や『東京喰種』といった錚々たる作品ばかりを掲載されていて。編集者さんが一目でえなこを気に入ってくださったのですが、ここでも担当さんとは「キングダムのここのシーンは本当に素晴らしくて!」というお話をしたりしています(笑)。弊社は飲み会みたいな事はないけど、このオタクトークで編集部の方とは大体仲良くなれるからとても健全です(笑)。
――ネット文化の発達により、様々なメディアの形が表れていますが、PPEが雑誌文化……特に漫画誌へ力を注いでいる理由は?
よきゅーん 私たちコスプレイヤー、もっというと私の事業は「版権コスプレ」がなければここまで生きてこれませんでした。
――そういえば、今年は久々によきゅーんさんも『週刊プレイボーイ』(集英社)さんで、PPEの一員としてコスプレ姿を見せていました。
よきゅーん いやぁ~、もう仕事でしかコスプレができていません(笑)。これは編集者さんから「出た方が面白いですよ」って言われて、それなら……と決めたのですが、ある種戦略的にやろうと思ったんです。私が出て「なんだ!?」となる方が面白いし、唯一無二じゃないですか。他社さんがやれないことをやれば、業界的に話題になるし、ファンの方も面白がってくれるんですよ。やはり社長が出るのは珍しいからか、中刷り広告に「社長もいるよ!」って書いてありました(笑)。
――確かに社長自らグラビア参加はキャッチーですね(笑)。
よきゅーん そういうキャッチーさを面白がって頂き貢献できるのなら、私もなんでもやれますよ。こういうのをファンも面白がってくれるだろうって。私、ファンも含めて会社だと思っていて。
――オタクとPPEによる天下統一への道のりが始まりますね。
よきゅーん 一体何が天下なのかはわかりませんが(笑)。ただコスプレイヤーのブームを生み出せたこと、ちゃんとした数字を残せたことは、日本の長い芸能の歴史の中での一日分ぐらいにはなったんじゃないかなと思っているんです。芸能の歴史にもうあと何本か爪跡は残してやろうと燃えています。