【写真】笑顔でインタビューにこたえる坂井真紀と映画場面カット【12点】
前編<坂井真紀が語る高橋伴明監督の撮影現場>は【こちら】から。
――映画『痛くない死に方』で父親の臨終に直面した、坂井さん演じる智美が、主人公の担当の在宅医・河田(柄本佑さん)を「私が殺したんですか」と責めたてる場面。彼女の叫びは、作中のどんなセリフよりズシリと来ました。
坂井 あのシーンは、最初に佑くん側を撮ってから、次に私を、という順番だったんですけど、私自身は佑くんを撮っている時点で感情があふれてしまって、切り替わったときには涙がぜんぶ流れ出ちゃってて。そこから「これはどうなんだろう」と自分で考えた結果、ああいうお芝居になりました。監督はそこでは何もおっしゃらなかったけど、見せるべきはおそらく感情のMAXではないのかなって。
智美がお父さんと過ごしてきた時間を考えれば、その死を前にしたときにはどこか達観やあきらめもあるだろうし、でもやっぱりあきらめられない部分も当然ある。泣き疲れたあとのむなしさと怒り。
――日本だけでなく、世界中がコロナ禍に見舞われている今、ほとんどの人が“生と死”をいつにも増して身近に感じていると思います。坂井さんもやはり死生観みたいなことは考えますか?
坂井 そりゃあ、考えますよぉ。ただ、これまでは「家族に迷惑をかけて死ぬのはイヤだなぁ」ってところがいちばんだったのですが、先日、お知り合いのおばあさまが「みんなそう言うけど、でもいいのよ。迷惑はかけて。家族なんだから。」っておっしゃっているのを聞いて、なんだか気持ちにがラクになって。
赤ちゃんは手がかかります。誕生した大事な命を家族で力をあわせて育てます。その奇跡のような大事な命は、育てるのも大変なのだから、死ぬときだって大変で当たり前なのかなって。それぞれの家族の事情もあるでしょうし、いざ実際に介護するとなったときの大変さは、もちろん言葉で言うのとは全然違う。
でも、「死へ向かう」ってことがもっと温かいものになるように、そうやってみんなが“覚悟”みたいなものをきちんともてる世のなかになれたらいいな、と思います。
――ちなみに、そのあたりの心境の変化というのはいつ頃からお感じでしたか?
坂井 やっぱり子どもができた、というのはすごく大きいですよね。
すべてにおいて今、目の前にあることが絶対未来にも繋がっていくわけだし、子どもは未来そのもの。私自身に何ができるかはわからないけど、こうして子どもを育てる機会をいただいた以上は、「社会に役立てる」って言ったら大げさかもしれないけど、チャンスをもらえたってことに対して、日々、喜びを感じながら生きたいな、とは思います。
――劇中には、死を前にして事前に文書で意思表示をしておく「リビングウィル」といったワードも出てきます。こんなことを聞くのも何ですが、坂井さんだったらどのような選択を?
坂井 どうだろうなぁ。もし、もうちょっと子どものために生きなければと思ったら、「病気と闘うぞ」って気持ちになりますし、十分生きさせてもらったなぁって思えていたら、そのときは「延命治療は要らないです」って選択になるんじゃないかな、と。
子どもとはまだそこまでリアルな話はしてませんが、こうして生まれてきたことの尊さや命の大切さについては、一緒に話すようにしています。喧嘩をしたりしたときも早く仲直りを心がけますし(笑)、特に学校へ送り出す時は絶対に笑顔でいたいですよね。(取材・文/鈴木長月)
▽さかい まき
1970年5月17日生まれ、東京都出身。映画『痛くない死に方』、『はるヲうるひと』(2021年6月全国公開)、『燃えよ剣』(2021年10月公開)などに出演。
▽映画『痛くない死に方』
2021年2月20日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
出演・柄本佑 坂井真紀 余貴美子 大谷直子 宇崎竜童 奥田瑛二
監督・脚本:高橋伴明
あらすじ
在宅医療に従事する河田仁(柄本佑)は、日々仕事に追われる毎日で、家庭崩壊の危機に陥っている。そんな時、末期の肺がん患者である大貫敏夫(下元史朗)に出会う。
(c)「痛くない死に方」製作委員会