2021シーズンのJリーグはこれから終盤戦に突入する。ここからの試合は1試合にかかる重みがいつも以上にのしかかる負けられない戦いばかりだ。スタメンのみならず控え選手、スタッフ含めた総力戦で制したチームが上に行くことだろう。しかし、そうした緊張感が高まる終盤戦を前にチーム状況が下降気味のクラブがいくつか存在していることも事実だ。
ここでは終盤戦突入を前に「黄色信号」が点灯しているJリーグクラブをご紹介したい。

ガンバ大阪
昨2020シーズンはJ1リーグ2位で終了し、さらなるステップアップを目指して今シーズンに臨んだガンバ大阪。しかし開幕前に膨らんだ期待はすぐに裏切られることになった。優勝レースからは早々に脱落、低調なパフォーマンスを好転させることができないまま宮本恒靖前監督が契約解除され、何ともあっけない幕引きとなってしまった。後任として松波正信監督に再建を託すも「元通り」に戻ったとは言えない。就任してまもなく4ヶ月が経とうとしているが、前任者の体制から何も前進しておらず「つまらない内容」に不快感を示す人間も多いはずだ。
特に開幕当初から課題として挙げられていた「攻撃のロジック」を未だに見出だせていないことは終盤戦を迎えるにあたり由々しき事態であると考える。ここまでリーグ戦で記録されたゴール数は28試合で21ゴール(9月12日現在)。これはJ1クラブでは徳島ヴォルティス、大分トリニータに続いて少ないゴール数である。昨シーズンサンフレッチェ広島でリーグ戦15ゴールをマークしたレアンドロ・ペレイラや宇佐美貴史など豪華攻撃陣を擁しているにも関わらず得点数が伸び悩んでいる極めて異常な状態だ。
上記のデータは第27節終了時点の「1試合あたりの総スプリント数と走行距離」を示したデータである。ここからも分かるようにガンバ大阪はJ1クラブで最も「走らない集団」になっていることが分かる。全体的なコンディション不良なのか、ただ走っていないのか。試合にかける積極性をまずは培って欲しいと願うばかりだ。アグレッシブさが伝わる髙尾瑠やウェリントン・シウバを数試合の間負傷で欠いていたことは不運だが、それでもリスクを追ってゴールを奪う姿勢をファンは見たいと思っているに違いない。攻撃時に2バックにまでしてでもゴールを狙いに行くチームもいるのだからまだまだ前線へのベクトルを強めたい。

アルビレックス新潟
今シーズンこそJ1昇格を成し遂げたいアルビレックス新潟。開幕からの立ち上がりは本間至恩や高木善朗のクリエイティブなボール展開がハマり最高の滑り出しでJ2首位をキープしていたが、夏頃から低空飛行が続いている。オリンピック中断明けからの成績は1勝3分2敗と勝ちきれない試合が続き、9月12日現在3位に位置している。昇格するための基準である2位との勝ち点が「10」とまだ追いつけるチャンスが十分にある位置だが、ヴァンフォーレ甲府、V・ファーレン長崎、ジュビロ磐田など一筋縄ではいかない相手との試合が残されておりJ1昇格までいばらの道が続いている。
前述したガンバ大阪と同様、アタッキングサードでの展開に課題があると考える。ガンバ大阪ほど深刻な状況ではないが、どこか読まれやすい攻撃になり単調な展開により相手も守りやすくなっている印象だ。決定力に関しても懸念があり、プランBのようなもう1つの武器が欲しいところ。とはいえ今シーズンはJ2屈指のゴール数を誇るアルビレックス、終盤戦の戦いに向けて準備をしてくることに期待したい。

川崎フロンターレ
完璧なゲーム展開で昨シーズンは早い段階から独走状態に入りそのままJ1優勝。今シーズンも勢いそのまま連覇を目標にここまで戦ってきたが、これまでのような完成度の高いサッカーに浮き沈みが見え始めている。もちろんその背景には相次ぐ負傷者やチームの主力だった三笘薫、田中碧の海外移籍などがあるので致し方ない見方も強い。YBCルヴァンカップ準々決勝第2戦の浦和レッズ戦(3-3)では思うようなベストメンバーを構成できなかったと考える。また、ファイナルサードへのくさびのパスを積極席に入れていたこれまでとは異なり、攻撃において消極的な姿勢を懸念している。ボールを回すこと1つ取っても少し複雑に考え過ぎている印象だ。ただJリーグを熟知している鬼木達監督であれば確実に調整してくるに違いない。ここからの巻き返しに期待したい。
ルヴァンカップには敗戦(準々決勝集計4-4、アウェイゴールで浦和の勝利)したものの、川崎フロンターレにはまだリーグ戦、天皇杯、そしてAFCチャンピオンズリーグが残されており、他のJリーグクラブを比較しても試合数が多く、ここからはコンディション調整との戦いも強いられている。9月12日時点で暫定ではあるものの、2位に位置する横浜F・マリノスとの勝ち点差は1ポイントであり警戒が必要だ。
30 – 川崎はアウェイ福岡戦で敗れ、J1での30試合連続無敗記録(22勝8分)がストップ。最後に敗戦した場所も九州だった(アウェイ大分戦:0-1)。難所。
— OptaJiro (@OptaJiro) August 25, 2021
また、今シーズンリーグ戦開幕から26試合目にして川崎フロンターレは初めて敗戦を喫した。昨シーズンから続いたリーグ戦無敗記録が30試合でストップすることになったが、黒星がついた場所がいずれも「九州でのアウェイ戦」とのこと。不吉にも11月7日に川崎フロンターレはサガン鳥栖とのアウェイ戦を控えている。時期的にもこの試合は今シーズンを占う重要な1戦になるかもしれない。
Jリーグは秋からがおもしろい。毎シーズン最終節に近づくに連れて私たちの想像を絶するような試合が待ち受けている。ここからの負けられない戦いを見逃してはならない。