今季も第30節までを終え、残り4試合となった2023明治安田生命J1リーグ。ヴィッセル神戸と横浜F・マリノスによる首位争いとともに大きな注目を集めているのが残留争いだ。
ここでは、最終盤の残留争いに巻き込まれている3クラブの現状と、今後の対戦カードについてまとめた。

3チームに絞られた残留争い
第30節終了時点で最下位(18位)の横浜FCは、現在勝ち点26。残り4試合をすべて勝った場合、最大勝ち点は38となるが横浜FCのひとつ上にいる17位湘南ベルマーレとの直接対決が残っているため、現在勝ち点37で11位のアルビレックス新潟まではJ1残留が確定したと言える。現実的に考えると横浜FCと湘南は、いずれも直接対決を除いたカードで全勝するとは考えにくく、また、その他の下位チームもこれからの試合で多少は勝ち点を積むと考えられる。
残り試合数を上回る勝ち点差をひっくり返すのは極めて難しいため、横浜FCからみて勝ち点差7の15位京都サンガ以上のチームは安全圏ということになる。つまり、残留争いは事実上現時点での下位3クラブに絞られたといえる。該当するのは18位横浜FC(勝ち点26)、17位湘南ベルマーレ(勝ち点27)、そして16位の柏レイソル(勝ち点29)だ。

守備が安定しつつある横浜FC(18位)
第30節でFC東京に1-0で勝利した横浜FC。最下位脱出とはならなかったものの直近6試合の成績は2勝2分2敗と五分で、チーム状態はやや上向きつつあるといっていい。相手を無失点に抑えたFC東京との試合終了後、決勝点を挙げたMF井上潮音が「(守備時に相手を)引き込むところと相手の特徴を考え、相手に合わせて自分たちが前から行くところは、本当にここ数試合で良くなっている」とコメントしており、一定の自信を感じさせた。MFユーリ・ララとFWカプリーニ、FWマルセロ・ヒアンのブラジル人トリオがフィットしたこともポジティブな要素だ。
残す対戦相手は、現時点14位の北海道コンサドーレ札幌、12位サガン鳥栖、17位湘南ベルマーレ、6位鹿島アントラーズ。

4戦3勝と勢いに乗る湘南ベルマーレ(17位)
第29節のセレッソ大阪戦(2-0)、第30節の京都サンガ戦(1-0)に2連勝した湘南ベルマーレ。第28節の川崎フロンターレ戦は0-2で惜しくも敗れたが、第27節の札幌戦(1-0)を含めて4戦3勝となっている。勝利のキーマンとなっているのがFW大橋祐紀だ。開幕戦からハットトリックを記録しつつ、負傷離脱によって一時試合から遠ざかっていたストライカーが、直近9戦6得点と量産体制に入っている。また、夏の移籍市場で鹿島から加わったDFキム・ミンテの存在も大きい。3バックの中央に陣取り、守備の安定とともに攻撃の起点にもなっている。
残す対戦相手は、首位の神戸、4位名古屋グランパス、18位横浜FC、10位FC東京と、やや上位陣との対戦を多く残しており、攻守に噛み合い始めた現在のチームが、上位にも通用するのかが見どころだ。横浜FCとの勝ち点差は1だが、得失点差が9あり優位な状態にあるのは間違いない。第33節に迎える横浜FCとの直接対決(6ポイントゲーム)を含めたすべての相手に走り勝ち、勝ち点0を1に、1を3にするような試合を続けられるかが、残留への鍵となりそうだ。

カウンターに勝機ありの柏レイソル(16位)
直近のリーグ戦10試合は4勝3分3敗と安定して勝ち点を重ねてきた柏レイソル。5月の監督交代からしばらくは黒星が多かったものの、井原正巳監督らしい守備の安定感が備わってきた印象だ。
残す対戦相手は、9位の川崎、6位鹿島、12位鳥栖、そして4位の名古屋だ。対戦相手の平均順位は下位3チームの中でもっとも高く厳しい状況。ただ、浦和に敗れた直近の第30節(0-2)は、U-22日本代表の米国遠征から帰国直後だった細谷がスタメン出場できなかったこともあり、次節からはその実力を遺憾なく発揮してくれるはずだ。また、J1リーグ最終節後の12月9日には川崎との天皇杯決勝を控えており、柏としては残留を決めた勢いのままタイトルに挑戦し、シーズンを締めくくりたいことだろう。

油断できない最終盤
降格だけは免れようという必死さもあり、勝ち点差3という僅差にひしめく3クラブのチーム状態は上向き傾向。J1生き残りを懸けた戦いは、このまま最終節までもつれ込みそうだ。
ブラジル人トリオがチームに馴染み、残りの対戦カードにも比較的恵まれている横浜FCが見事な逆転劇をみせられるか、FW大橋やDFキム・ミンテらが活躍をみせ、直近4戦3勝と最も勢いに乗っている湘南が踏みとどまるのか、またはFW細谷とMFマテウスという個を有し、勝ち点で優位に立っている柏が逃げ切るのか。熾烈な残留争いの行方から、まだまだ目が離せない。