ドラフト会議に見る「26歳」という年齢。サッカー界で見る「遅咲き」Jリーガーたち
ドラフト会議に見る「26歳」という年齢。サッカー界で見る「遅咲き」Jリーガーたち

10月24日(木)16時50分より、プロ野球のドラフト会議が行われる。

今回のドラフト会議でははじめてプロ野球(NPB)の2軍に参戦したくふうハヤテベンチャーズ静岡、オイシックス新潟アルビレックスBCの2チームからドラフト会議にかかるメンバーが出るか注目されている。

オイシックス、くふうハヤテの注目選手

オイシックス新潟アルビレックスBCでは2000年生まれの外野手・知念大成が要注目。沖縄電力を退社し、プロ野球入りに賭け今年オイシックスに加入した外野手だ。打率.323、本塁打4、打点39、盗塁12の好成績を残しイースタン・リーグの首位打者を獲得した。

23歳の知念にはプロ複数球団から調査書が届いているといい、ドラフト指名の確率は高そうに見える。

だが、同じく2軍でタイトルホルダーを獲得したもののまだ調査書が届いていない選手がいる。くふうハヤテの増田将馬外野手だ。

ジェイプロジェクト、四国ILplus・徳島を経て、今季くふうハヤテへ加入すると主に1番打者として活躍。シーズンの半ばに調子を落とし打率を下げたものの夏場以降は復調し、打率.297、本塁打0、打点26、盗塁31をあげウェスタン・リーグの盗塁王に輝いた。徳島時代も盗塁王の経験があり俊足巧打の外野手だ。

兄は読売ジャイアンツの増田大輝。兄弟そろってのNPB入りが注目されている。

26歳という年齢が高いハードルに

だが、気にされているのは年齢だ。増田は26歳、プロ野球では多くが高校卒業時点か大学卒業時点、大卒社会人でも24歳でドラフト入りするのが通常だ。近年は、25歳以上の社会人を即戦力として獲得することはあるが、それは投手に限ってのことで野手ではほとんどいないのが実情だ。

くふうハヤテは今季プロ野球の2軍で戦った。対戦相手はプロ野球の1軍経験者も多く、タイトルホルダーでもある増田は間違いなく実力はあるだろう。だが、このようにプロ野球の世界では1軍・2軍の間に大きな壁があり年齢は大きなハードルになっている。

このニュースを見た時に、サッカー界の「下剋上」が果たせる構造に改めて感心した。下部リーグや地域リーグを含めたピラミッド構造のリーグがあるからこそ何歳からでもJ1へ成り上がれることができる。

26歳でJ2、J3で活躍する選手がいればJ1でも見てみたいと考えるのはサッカー界では当たり前のことだからだ。では、26歳を超えてはじめてJ1にチャレンジした選手たちはどんな顔ぶれだっただろうか?少し見てみよう。

遅咲きのゴールゲッター藤本憲明

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J1で遅咲きの選手といえば、FW藤本憲明(鹿児島ユナイテッド)だろうか。近畿大学を経て、JFLの佐川印刷SCへ加入。当時はアマチュア選手で練習を午前だけで午後は仕事をしていたという。

その後、鹿児島ユナイテッド、大分トリニータと渡り歩き得点を量産。2016、2017シーズンにJ3得点王に輝いている。

大分で、2019年にチームの昇格とともに初めてJ1へ初挑戦となった。

29歳で初めてJ1にたどり着き、21試合8ゴールを夏までにあげるとシーズン途中でヴィッセル神戸へ移籍。移籍後は怪我にも苦しんだが、天皇杯決勝の鹿島戦でゴールを決めるなどチームの初タイトル獲得に貢献した。

ストライカーはゴールというわかりやすい指標があるだけに年齢が上になっても個人昇格がしやすい。

他にもFW鈴木孝司は、2014年にJ3得点王、2019年に30歳にしてセレッソ大阪でJ1初出場・初得点しているが、そのわずか半年前には合同トライアウトへ出場していた。

半年前に契約満了でチームを探していた選手が、その夏にはJ1へ引き抜かれる。サッカー界は結果1つで道を切り開いていける。

遅咲きのセンターバック千田海人

ドラフト会議に見る「26歳」という年齢。サッカー界で見る「遅咲き」Jリーガーたち
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勿論それ以外のポジションでもチャンスはある。今季、遅咲きで注目を浴びたのは同じく29歳でJ1初挑戦となった東京ヴェルディのDF千田海人だ。

神奈川大学から2017年にJ3・ブラウブリッツ秋田へ加入するとヘディング、対人戦の強い武闘派センターバックとして頭角を現した。その秋田とともに2021年にJ2、2023年からは東京ヴェルディへ移り、今季チームとともに昇格を果たした。第9節の川崎フロンターレ戦でJ1初出場を果たしている。

実は他にも面白い選手がいる。

35歳でJ1初得点、津田琢磨

ドラフト会議に見る「26歳」という年齢。サッカー界で見る「遅咲き」Jリーガーたち
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帝京大学から2003年にヴァンフォーレ甲府へ加入した津田琢磨は、途中愛媛FCへの移籍を挟むものの、2017年までヴァンフォーレ甲府でプレーした。

2004年にルーキーながら出場機会を得ると、25歳で迎えた2006年シーズンにはJ1初挑戦。これはチームのJ1昇格に伴ったものだが、自身はJ1で戦った2シーズンで11試合0ゴールとあまり出場機会を得ることはできなかった。

その後、ヴァンフォーレ甲府はJ2、J1を行き来しながら津田も在籍を続けた。2014シーズンまでの数年間は怪我が相次ぐ。そのため、出場機会に恵まれているとはいいがたかったが、2015シーズンに27試合、2016シーズンに25試合2ゴールと35歳近くになりJ1で躍動した。

2016年にヴァンフォーレ甲府は土屋征夫(当時41歳)、山本英臣(当時35歳)、津田琢磨(当時35歳)の3バックを組むことがあり合計で111歳のDFラインとしてちょっとした話題にもなった。

津田は、その2016シーズンにJ1初得点をあげている。35歳6カ月での初得点は日本人の最年長得点記録2位、あのラモス瑠偉に次ぐ記録だ。しかもDFでだ。

サッカー界では、2部以下でも活躍していた場合に年齢が多少上でも1部リーグへ“個人昇格”することは珍しくない。それは、昇格・降格があるからでもあり、結果が出なければ1部リーグでプレーしてきた選手が2部以下へ移ることも当たり前だからだ。

もちろん、海外では30歳を超えて1部リーグに初挑戦をした、30歳を超えて初めて得点王に輝いたケースはシンデレラストーリーとして語られている。

7部や8部のリーグからスタートして、プレミアリーグでプレーしたというような例は少なくない。近年でいえばジェイミー・ヴァーディ、古くいえばダリオ・ヒュブナーやマーティン・マックスなどがその代表例だろうか。

このようにある程度年齢に関係なく、いつでもチャンスがやってくるのがサッカー界の良いところであり、また結果を残せないとすぐに転がり落ちてしまう厳しさもまた内包している。

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