現地発! スペイン人記者「久保建英コラム」

 久保建英の2025-26シーズンが終了した。スペイン紙『ムンド・デポルティボ』でレアル・ソシエダの番記者を務めるウナイ・バルベルデ・リコン氏に、久保の怪我からの復帰後のコンディションおよびワールドカップへの期待、来季の去就について言及してもらった。

久保建英はワールドカップで活躍できるのか? スペイン人記者が...の画像はこちら >>

【日本代表で活躍できるか】

 久保建英は今、ボールを愛する者すべての夢である、サッカー界最大の祭典ワールドカップへの挑戦を目前に控えている。

 日本人は、日々の生活のなかでも最善の形で母国を代表しようとする気質を持ち、勤勉で規律正しい。ヨーロッパでは日本人に対してそういった国民というイメージが定着しているが、久保もまさにそうだ。24歳ですでに代表チームのベテランである彼は、国際的レベルを備えた国民的アイコンとして、同胞に誇りを感じさせる責任があることを誰よりも感じているはずだ。

 前回のカタール大会に出場した経験から、今大会にはさらに成熟した状態で臨める。今大会を通じて再びサッカーへの喜びとコンディションを取り戻せれば、母国に大きな喜びをもたらすことのできる存在となるだろう。

 出場枠が48カ国に拡大された今大会は、強豪国との対戦を免れた幸運な国がいくつもあったが、日本はそうはならず、オランダ、チュニジア、スウェーデンと非常に力が拮抗したグループFに組み込まれた。

 グループリーグ突破は容易ではないだろうが、日本は調子がよければどの相手にも勝てるだけのタレントを十分に備えている。最近の代表戦を見る限り、久保はラ・レアルで右ウイングを定位置としている役割と異なる、中央寄りの2シャドーの一角でプレーしている。

 このポジションでのパフォーマンスがどうなるか注目されるが、グループリーグで対戦する3チームの特徴を分析した場合、久保が必要とするスペースを最も得られるのは、攻撃的なサッカーを展開するオランダ戦だろう。強豪であることは間違いないが、彼の個性が最も生きるのはおそらくこの一戦になりそうだ。

 そのために久保は何よりもまず、本来の実力を取り戻す必要がある。怪我で大幅に調子を落とし、疑問符がついたまま終えた今季の印象を払拭するためにも、技術的な洗練さや判断力、相手を翻弄するすばらしい閃きを回復させなければ、代表チームに輝きをもたらすことはできない。

【久保らしさが失われている】

 久保はペッレグリーノ・マタラッツォ監督が就任した年明け後順調にスタートしたが、バルセロナ戦で全治3カ月の重傷を負い、復帰後は以前のようなプレーを見せられず、監督にとって頼りになる存在ではなくなってしまった。

 国王杯決勝にはかろうじて間に合ったが、ベンチスタートでPKも蹴らなかった。シーズン終盤は何の結果も残せず、最後の10試合のうち4試合に先発したがフル出場は1試合のみ。3試合はいずれも60分以内に交代させられた。

 問題はフィジカル面ではなく、パフォーマンスの低下によるものだ。スピード、ドリブル、プレス、フィニッシュワーク、パス、機動力、そしてサイドや静止した状態でボールを受ける能力など、あらゆるものを欠いていた。要するに、我々がよく知るあの"久保らしさ"が完全に失われていたのだ。

 シーズン最後の4試合は衝撃的だった。先発したベティス、ジローナとの2試合では最初の戦術変更のための交代要員となり、バレンシア、エスパニョールとの最後の2試合では、ゴンサロ・ゲデスやアンデル・バレネチェアの怪我、もうひとりのウイングであるウェズレイは買い取りオプションを行使しないため起用しないという決定があったにもかかわらず、久保の出番はなかった。

 さらに、8試合連続で出場機会がなく、マタラッツォ監督指揮下では控え以下の扱いだったアルセン・ザハリャンまでがウイングとして起用されたのだ。

 だが、これは様々な解釈ができる。マタラッツォ監督が久保をワールドカップに向けて温存した可能性が高そうだが、Bチームのジョブ・オチエングのように、来季の居場所を争う他のタイプの選手を試したかっただけかもしれない。

 あるいは、久保の残留が疑問視されていることで、新たなウイング獲得のために投資する決断を下した可能性があり、来季も確実に戦力となるパブロ・マリンやルカ・スチッチを久保のポジションで起用した可能性もあるだろう。

 現在、ラ・レアルには不確定要素がいくつもある。ここでは久保のケースを例に挙げたが、ブライス・メンデスやアレックス・レミーロなど、久保と同じかそれ以上に去就の見えない状況に置かれている選手が他にもいる。

【移籍の難しさ】

 こうした状況から今夏の移籍市場は複雑になるだろう。久保の契約解除金は6000万ユーロ(約111億円)に設定されており、契約は2029年まで残るが、2025年アジアカップ以降のパフォーマンスは、ラ・レアルが契約解除金を満額請求するほど、もしくは他のクラブが莫大な移籍金を提示して獲得に動くほど十分なものではない。

 さらにラ・レアルは久保を売却した場合、キャピタルゲイン(購入価格と売却価格の差による収益)の50%をレアル・マドリードに払う必要がある。この条項があるため、ラ・レアルは2022年夏にわずか650万ユーロ(約12億250万円)の移籍金で、久保をレアル・マドリードから獲得できたのだ。

 つまり、久保を欲するクラブが契約解除金を支払った場合、ラ・レアルの手元に残るのは約3300万ユーロ(約61億500万円)となる。一方、現在の久保の市場価値により近い3000万ユーロ(約55億5000万円)のオファーを受け入れた場合、ラ・レアルが手にできるのはわずか1800万ユーロ(約33億3000万円)程度だ。

 来季の獲得候補はすでに名前が挙がり始めており、トゥールーズのスピードを武器とする21歳のブラジル人ウイングのエメルソンが浮上している。ゲデスに似たタイプで、マタラッツォ監督が求める選手像に合致している。

 こうした状況から今後の展開を予想するのは非常に難しい。ひとつのサイクルが終わりを迎え、久保はワールドカップ後にラ・レアルでのキャリアに幕を下ろす可能性もあるだろう。

久保はピッチ内外で大きなインパクトを与えてきた選手であり、自身の意向や注目度、ワールドカップでのパフォーマンスなど、あらゆる要素が考慮されることになる。

 残留を望むのか、それとも移籍金を出してくれるクラブが現れた場合に退団を検討するのか......。さまざまな事態が想定できるが、何よりもまずはワールドカップに集中しなければならない。

髙橋智行●翻訳(translation by Tomoyuki Takahashi)

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