2023明治安田生命J2リーグは11月12日に第42節までの全日程が終了した。町田ゼルビアが初優勝と初昇格を、最終節でジュビロ磐田が1年でのJ1リーグ復帰を決める中、大混戦のプレーオフ圏(3位~6位)を巡る争いも決着した。

11月25日より行われるJ1昇格プレーオフに進んだのは、3位東京ヴェルディ、4位清水エスパルス、5位モンテディオ山形、6位ジェフユナイテッド市原・千葉の4チーム。まさかの「オリジナル10(1992年Jリーグ発足時の10クラブ)」3クラブを含む。

今2023シーズンは入れ替え戦なしでプレーオフ優勝チームがJ1への昇格となるため、例年以上の激戦が予想される。ここでは、そんな残りたった1つの椅子を争う4クラブの展望を見ていく。

【J2リーグ2023】プレーオフ進出4クラブ最後の戦いへ!昇格を掴むのは?

東京ヴェルディ(J2最終順位:3位)

J2第39節で千葉に劇的な逆転勝利(3-2)、第40節は磐田との死闘(1-1)、第41節には1人少なくなりながらもMF中原輝の美しいフリーキックで勝利(対栃木SC1-0)と、リーグ最終盤で脅威の勝負強さを見せた東京ヴェルディ。最終第42節も勝利で終えた(対大宮アルディージャ2-0)が、残念ながら2位磐田に得失点差で叶わずプレーオフに回っている。

今2023シーズンの東京Vは、序盤から変わらず好調を維持。

リーグ最少失点(31)と堅守を誇り連敗はわずかに1度。終盤は10戦無敗のまま終えている。FW佐藤凌我(アビスパ福岡)ら複数の主力を失いながらも、冬夏の新戦力が早々にチームに順応。FW染野唯月やMF中原輝ら期限付きで獲得した選手の活躍もあり、J1昇格への挑戦権を得た。

11月26日のプレーオフ準決勝で当たる千葉とは、第39節で対戦したばかり。終盤怒涛の連続ゴールで東京Vが白星を掴んだが、一時は完全に流れを渡してしまったゲームでもあった。

もちろん、稀に見る逆転劇を許した千葉は雪辱に燃えているに違いない。

勝ち進んだ先のプレーオフ決勝でも、今季2連敗した相手清水か、1勝1敗の相手山形のいずれかが待つ。3位で終えたことで、準決勝は引き分けでも次に進める東京V。まだまだ道のりは険しいが、今季見せ続けた堅守と安定したゲーム運びで今度こそJ1昇格を掴みたい。

【J2リーグ2023】プレーオフ進出4クラブ最後の戦いへ!昇格を掴むのは?

清水エスパルス(J2最終順位:4位)

2023シーズン開幕から7戦未勝利という危機を乗り越え、第41節終了時点では自動昇格圏の2位につけていた清水エスパルス。最終第42節の水戸ホーリーホック戦の勝利でJ1復帰を決めるはずだったが、結果はまさかのドロー(1-1)。その手に掴みかけた自動昇格はこぼれ落ち、同じく静岡県を本拠地とする磐田にその座を明け渡すこととなった。

だが、悔やんでいる暇はない。厳しいプレーオフをあと2戦勝ち抜かなければ、今度こそ1年でのJ1復帰の道は断たれてしまう。初戦の山形との今季戦績は1勝1敗。アウェイの地では1-2(第19節)と敗れたが、ホームで3-0(第34節)と返り討ちにしている。ホームの利を活かし、勝利時と同じく前半から勝負を決めに行きたいところだが、最終節でプレーオフ進出を決めた山形の勢いに飲まれないかが気がかりだ。

プレーオフ決勝に進めば相手は東京Vと千葉の勝者となるが、東京Vにはシーズンダブルを果たしている一方、千葉には1分1敗と勝てていない清水。

一見すると東京Vとの対戦が望ましく見えるが、最終盤粘りの勝利を重ねて自動昇格圏に迫った東京の勢いもまた怖さがある。

なにより、シーズン終盤の経緯を考慮すれば、清水が4チーム中最も不本意なプレーオフ進出となったと言えるだけに精神面も大きな不安要素。とはいえ、悪夢のようなシーズン序盤から抜け出してきた自信もあるはず。チームを立て直しここまで漕ぎつけた秋葉忠宏監督の元、今一度奮い立つことができるか。最後の試練に臨む。

【J2リーグ2023】プレーオフ進出4クラブ最後の戦いへ!昇格を掴むのは?

モンテディオ山形(J2最終順位:5位)

J2最終第42節で、昨年の天皇杯覇者ヴァンフォーレ甲府を2-1で下してプレーオフ進出を決めたモンテディオ山形。2年連続のプレーオフ進出となるだけに、懸ける思いは4クラブの中でも高いと言えよう。

思えば2023シーズンは、2連勝と快調な滑り出しをしたのも束の間、第3節の磐田戦(1-2)以降まさかの8連敗。途中5連敗の時点で昨年プレーオフ進出に導いたピーター・クラモフスキー監督の解任もあり、先行きが不安視される序盤戦を過ごした。しかし終盤今季3度目の5連勝もあり、終わってみれば5位と、昨年(6位)以上の順位で着地できている。

11月25日のプレーオフ初戦で当たる清水とは今季1勝1敗。決勝で対戦する可能性のある東京Vにも1勝1敗で、同じく千葉には2勝と、戦績の上では決して不利ではない。清水との前回対戦は前半のうちに3失点を喫して差を見せつけられている(第34節0-3)が、プレーオフ進出を決めた流れからいけば、この清水戦に勝利すればその勢いはますます止められないものとなるだろう。

まずはアウェイの地で雪辱を果たせるか。山形は最終順位から勝利が絶対条件となるだけに、試合序盤から最終節の勢いそのままに突き進みたいものだ。

【J2リーグ2023】プレーオフ進出4クラブ最後の戦いへ!昇格を掴むのは?

ジェフユナイテッド市原・千葉(J2最終順位:6位)

自動昇格圏までは届かなかったが、6年ぶりとなるプレーオフ進出を果たしたジェフユナイテッド市原・千葉。2023シーズン終盤には7連勝を記録するなど、急激に調子を上向かせて久々にJ1復帰のチャンスを得た。開幕直後の8戦未勝利がありながらもたどり着いた舞台。その戦いに注目が集まるのは間違いないが、気がかりなのはその失速感だ。

連勝がストップしたリーグ最終盤には、第39節の東京V戦(2-3)、最終第42節のV・ファーレン長崎戦(1-3)と上位勢との直接対決に競り負けてきた。特にプレーオフ初戦相手である東京Vには、2点先行してから終盤に連続ゴールを許しての逆転負けを喫し、相手に自信と勢いを与えてしまう結果となっている。東京Vとは互いに長くJ2で苦しむクラブ同士。千葉は前回対戦の雪辱を果たしてJ1復帰の道を繋ぎたい。

プレーオフ決勝で対戦する可能性のある清水には今季負けはないが、山形には2連敗中。勝ち上がったとて相手によっては苦戦が予想される。また、最終順位6位から、いずれの対戦カードでも勝利が必要な千葉。4クラブで唯一最終節を黒星で終えていることもあり、この約2週間でどこまで立て直しが図れたかがカギになる。

【J2リーグ2023】プレーオフ進出4クラブ最後の戦いへ!昇格を掴むのは?

勢いでは東京Vと山形が優勢か

以上のJ1昇格プレーオフ進出4クラブの状況から、リーグ戦最後まで勝利で自動昇格圏に肉薄した東京Vと、劇的な勝利でプレーオフ進出を決めた山形が、その勢いから優勢と見ることができる。

一方、清水は最終節で自動昇格圏を取りこぼした落胆から、千葉は逆転負けを喫した悪い流れから、それぞれどれだけ立て直しを図れたかが勝負の分かれ目となるだろう。

J屈指の名門3クラブと2年連続進出となったプレーオフに懸ける山形。いずれのクラブが勝ち上がるにせよ、今季のJ2がいかに激しかったのかを象徴する2試合になることは間違いない。