2024明治安田J2リーグは第33節までが終了し、あと5試合を残すのみとなった。大詰めを迎えたリーグでトップを走るのは、昨シーズン最終節およびプレーオフ決勝と重要な試合で勝ちきれず昇格を逃した清水エスパルス
勝ち点1差でそれを追うのは、昨年唯一の降格枠に入ってしまい1年でのJ1復帰を目指す横浜FCという展開になっている。

また、もはや毎年恒例とも言えるプレーオフ圏争いの混戦ぶりは今季も同様に熾烈なものとなっており、シーズンが最終局面を迎えている現在でも先の読めない戦いが続いている。とはいえ、残り試合数と勝ち点差、直近の戦績などを考慮してどこかに区切りをつけるとすれば、勝ち点50に乗せている8位いわきFCまでが進出を争うラインと言えそうだ。

ここでは、ラスト5試合となったJ2リーグにおいて今後の昇格争いがどうなっていくのか展望する。

【J2リーグ2024】残り5試合!激戦続く昇格争いの展望

昇格まで秒読みの上位2クラブ

残りの対戦カード

  • 清水エスパルス:水戸、山形、栃木、いわき、熊本
  • 横浜FC:鹿児島、仙台、岡山、栃木、山口
第33節で国立競技場での直接対決が実現した首位清水エスパルスと2位横浜FC。勝てば勝ち点差が4へと広がり優勝へ大きな1歩となる清水と首位奪還を狙う横浜FCとの注目の1戦は、決着がつかず勝ち点1を分け合う結果となった。

勝ち点3を手にできなかった両クラブだが、早ければ次節にも揃って昇格が決まるところまで来た。横浜FCは、プレーオフへと回ることになる3位V・ファーレン長崎との勝ち点差が11。次節を勝利で終え、長崎が引き分け以下であれば昇格が決定する。また清水については、長崎が敗れれば引き分けでも自動昇格圏以上が確定することになっている。

もちろん、逆転可能な現状では油断禁物なことに変わりはない。特に清水は昨季の最終節で自動昇格圏から陥落するという悔しさを味わっただけに、二度と同じ轍は踏みたくないだろう。しかし、圧倒的に有利な状況であることも事実。
つまり、この上位2クラブが残りの5試合で目指すものは今季のJ2王者へとシフトしつつあると言えよう。

首位清水は残りの5試合のうち3試合が今季無類の強さを誇るホームゲーム。ここまで本拠地で無敗を続けていることは、最終節に近くなるほどチームに活力を与えるに違いない。今季の戦績を見ても、残りのカードでは4勝1敗と不安は少ない。ただし、横浜FCが全勝する可能性がある以上、1試合たりとも落とせない状況が続く。また、得失点差で離されていることから勝ち点で並ばれるのも命取りだ。

まずは後顧の憂いを断つためにもいち早く昇格を決め、さらに勢いをつけたいところ。奇しくも昇格決定の可能性がある次節の相手は、昨年清水の昇格を阻んだ水戸ホーリーホック。さらに試合会場も敵地と因縁深いものを感じる。昨季の悔しさとの決別、そして昇格と優勝への大きな足掛かりとすべく、次節が最も意味を持つ試合になりそうだ。

一方の横浜FCは、残り5つの対戦カードにおける今季の戦績が2勝1分2敗と清水に比べやや不安要素がある。とはいえ、勝ち点3を得られなかった3試合はいずれもシーズン序盤のチームがまだ不安定な時期のもの。
なにより、第15節から続く無敗は今なお継続中であり、チーム状態は明らかに前回対戦時とは別物となっている。清水との勝ち点差も、天王山を引き分けで終えたことで最小の「1」を保ったまま。得失点差が9と離れて優勢であることもあり、清水の取りこぼしがあれば勝ち点が並んだ時点で順位をひっくり返せる。

それでも不安があるとすれば、残りの対戦相手とその置かれている状況か。9位レノファ山口こそ直近の連敗でプレーオフ圏争いから脱落しつつあるものの、現時点では5チームがいずれもプレーオフ進出や残留が懸かっている相手。対戦時の状況によっては、これまで以上に決死の覚悟で挑んでくる可能性もあり、苦戦を強いられることは十分考えられる。

現在の順位や残りの対戦カードを見ると、優勝争いは清水が優勢だろう。しかし、難しい相手との対戦が懸念になるとはいえ、今季リーグ最少失点を誇る横浜FCは確実に勝ち点を稼いでくる可能性が高い。残り5試合、相手の勝敗に関わらずどれだけ目の前の相手から白星を挙げられるか。昇格決定と優勝のためには、両クラブともこれまで以上に勝負強さが求められる。

【J2リーグ2024】残り5試合!激戦続く昇格争いの展望

無風地帯?の3位

残りの対戦カード

  • V・ファーレン長崎:大分、秋田、鹿児島、千葉、愛媛
9月29日の第33節でファジアーノ岡山との上位直接対決に敗れた3位V・ファーレン長崎。それでもまだ4位岡山とは勝ち点差5と開きがあり、さらにプレーオフ圏外の7位モンテディオ山形との勝ち点差は9となっている。残り試合数を考えればプレーオフ進出については安全圏にいると言えよう。
一方で、自動昇格圏の2位横浜FCとの差も11と離れていることから、転落の可能性も少ないが浮上の望みも薄い状況に置かれている。

ここからの5試合はわずかに残る自動昇格へ向けて全勝を目指しながら、たとえ叶わずともプレーオフで有利となれるよう3位を死守したい。その上で残りの対戦カードを見ると、残留のかかる大分トリニータや鹿児島ユナイテッド、プレーオフのかかるジェフユナイテッド千葉と難しいゲームが予想される相手も残っている。しかし、残るカードでの今季の戦績は3勝2分と負けがなく、3位の確保に懸念は少なそうだ。

そんな状況で迎える次節の対戦相手は大分。直近2試合では首位を走っていた横浜FCに引き分け、プレーオフに迫る勢いのあった藤枝MYFCから白星を得ており、残留に向けてチームの士気が高い相手だ。前節敗れているだけに、ここで踏みとどまれるかは最終順位を考えたとき重要な意味を持つ。さらに、上位2チームの昇格決定や大分の残留争いでの優位性維持など、長崎のみならずリーグ全体に大きな影響を与える重要な1戦となるだろう。連敗を避け、最後まで順位を守るためにも大分戦が分岐点になりそうだ。

【J2リーグ2024】残り5試合!激戦続く昇格争いの展望

勝ち点差5以内で大混戦の5クラブ

残りの対戦カード

  • ファジアーノ岡山:甲府、いわき、横浜、藤枝、鹿児島
  • ベガルタ仙台:秋田、横浜、愛媛、熊本、大分
  • ジェフユナイテッド千葉:群馬、甲府、藤枝、長崎、山形
  • モンテディオ山形:山口、清水、熊本、水戸、千葉
  • いわきFC:藤枝、岡山、水戸、清水、群馬
上位3チームが自動昇格、プレーオフ進出という最終的な立ち位置を確定しつつある一方、4位以下は大混戦となっている。そのなかで、勝ち点差5以内にいるファジアーノ岡山、ベガルタ仙台、ジェフユナイテッド千葉、モンテディオ山形、いわきFCといった5チームをメインに、最後まで3つのプレーオフ進出の椅子を争う可能性が極めて高い。

残りの対戦カードを見る限りでは、上位との対戦が1つのみの仙台がやや有利と言えるが大きな差はなく、いずれも上位、中位、下位とほぼ偏りなく対戦が組まれている。
次に残りのカードにおける今季の戦績では、仙台が1勝3分1敗とやや劣るがやはり目立つほどの差はないと言えよう。そうなると、抽象的ではあるが重視すべきは勢いか。昨季のプレーオフ圏争いを見ても、最終節でプレーオフ進出を決めた山形が残り5試合で5連勝。6位となった千葉も第31節から7連勝を果たしている。

そうした視点で見ると、後半戦に入り大きく勝ち点を伸ばし勢いづいているのは山形。直近4連勝で挙げたゴールは12と圧倒的な強さで上位を猛追している。次点では千葉が挙げられ、第28節から3連勝。第31節で敗れたものの、引きずることなく直近また2連勝を果たしており、ラストスパートは十分かかっている。一方で、いわきはやや遅れをとっている。直近5試合は2勝1分2敗とまずまずだが、仙台、長崎との上位対決では無得点で敗れており、残る岡山戦と清水戦に不安がある。

また、勝ち点が近いこの5チームの争いでは得失点差も明暗を分ける要素となり得る。現時点では千葉がプラス21ともっとも高く、エースFW小森飛絢が終盤恐ろしいほどの勢いでゴールを量産していることもあり、さらなる積み上げが予想される。
次に多いのは岡山だ。得点力は上位勢の中で見劣りするもののリーグで2番目に少ない失点数が得失点差の優位を生んでいる。

複数の要素を見ていくと、5チームで危うく見えるのは現在5位につける仙台か。勝ち点では優位に立っているものの、残りのカードにおける今季の戦績や得失点差での不安が大きく、陥落の可能性は十分考えられる。また、いわきも勢いに欠け、今季上位勢との直接対決で敗れているゲームが多いことから逆転は難しいと言わざるを得ない。

一方で、堅守を誇る岡山と爆発的な攻撃力を持つ千葉は勝ち点を積み上げる可能性が高い。岡山については、夏以降失速も見られる3位長崎を捉えることも十分に見込めるだろう。そして、なにより不気味な存在が山形。2年連続でプレーオフ進出を果たしており、いずれも最終節でひっくり返している。さらに言えば今季最終節の相手はライバルである千葉。またもドラマを演出することを想像してしまう。勝ち点差の少ない5チームのなかでわずかな差はあるものの、まだまだ荒れる可能性が大いにあるプレーオフ圏争い。
今季も最後まで目が離せない。
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